フィンランドの学校では壁が取り払われつつある。ただし、教室間の物理的な仕切りだけではない。教科や年齢層の区分もなくなり、他の多くの国の子どもたちよりも、生徒が何を学ぶかについて意見を述べる機会が増えている。
建築関連のウェブサイトCityLabによると、フィンランドでは全国4,800校を対象に、意欲的な再設計が進められている。2015年には57校、2016年には44校の新設工事が始まった。ほかの学校では、オープンプランの原則に基づく改修が行われている。
CityLabは8月、次のように報じた。「これでも大半の学校には従来型のレイアウトが残るが、施設の改修時期に合わせて、段階的に置き換えるか改良することが全体的な目標だ」。過去に、より柔軟な学習空間をつくろうとした際の課題の一つは、音が うるさすぎることだったため、学校の設計では音響にも配慮されている。

フィンランド教育省の主任建築家、レイノ・タパニネン氏はCityLabに、空間が過度に騒がしくならないよう設計していると語った。「柔らかな椅子や大きなクッション、ロッキングチェア、ソファを多く置き、移動式の壁や間仕切りも設けています。その背後に身を隠して、個別に話し合うことができます」。
従来型の机と椅子は姿を消し、代わりに異なる年齢層の生徒が集まり、学びを共有する空間が設けられている。フィンランドの学校では複数学年(または学年段階)の生徒が一緒に学び、子どもたちは幼い頃から、毎週の授業で何を学ぶかについて、より多くの意見を出せる。
サウナラハティ校は、柔軟な学習空間を備えたフィンランドの学校の一つ。画像:Andreas Meichsner/Verstas Architects
現象ベースの学習
昨年、 Education Week はフィンランドの教育相、サンニ・グラハン=ラウコネン氏にインタビューし、導入が進む変革の一部を紹介した。その中には、教科を別々の「縦割り」で教える方式から「学際的」な学習への移行も含まれていた。
Education Weekによると、カリキュラムでは、いわゆる現象ベースの教育・学習(PBL)を一定期間にわたって少なくとも一度実施することが求められている。その期間中、生徒は 従来型の教科 を総合的に学ぶ。生徒はこうした期間の計画に参加し、そこから何を学んだかを評価できなければならない。
グラハン=ラウコネン氏はこう述べた。「学校は気候変動のようなテーマを選び、数学など、まったく異なる教科の視点から考察できます……こうした学びを通じて、子どもたちは気候変動のようなテーマをさまざまな視点から考える力を身につけます」。
PBLの支持者は、今日の社会で生徒が力を発揮するために必要な批判的思考力を養うのに役立つと述べている。ヘルシンキ大学で教育心理学を教えるキルスティ・ロンカ教授は、 BBCに語った。「現実の生活では、脳は学問分野ごとに分かれているわけではありません……私たちは非常に総合的に考えています。世界の問題、つまり世界的な危機や移民、経済、ポスト真実の時代について考えると、異文化が交わるこの世界に向き合うための手段を、私たちは子どもたちに十分与えてきませんでした」。
フィンランドの自由度の高い教育は、広く 成功として称賛されている。近年、国際的なPISA教育ランキングでは順位を落としているものの、数学、科学、読解力では今も欧州の大半の国を大きく上回っている。
より柔軟な学習空間や指導方法を試みるのは、今に始まったことではない。IT、教育、学校設計をめぐり20年以上にわたって活動し、各国政府に助言してきた英国の研究者、スティーブン・ヘッペル教授は、教育を21世紀にふさわしいものにするには、過去の教え方とは異なるアプローチが必要だと主張する。
ヘッペル氏は、オーストラリアのパースにあるウェズリー・カレッジで柔軟な科学学習空間の開発に携わり、その空間で学習と指導をどう進めるべきかを解説する入門書を執筆した。
同氏によると、過去の試みの一部は失敗に終わった。その理由は、「教職員がただ一緒に途方に暮れ、教員用の机や壁がなくなった今、どうすればこれまでとまったく同じことを続けられるのかと尋ねたからです。そして家具や植物、スクリーンなど、何でも使って20世紀の『閉ざされた箱』を(うまくいかないまま)再現しようとしました」。
ヘッペル氏が優先事項の上位に挙げるのは、生徒が使う空間と学ぶ内容の両方について、学ぶ側の声に耳を傾けることだ。「生徒にはよい考えがあります」と同氏は言う。「生徒たちは私たちには見えないものに気づきます。生徒が関わることで、自分たちの学びについて考え、学ぶなかで、メタ認知も促されます」。
ただし、フィンランドの成果を考える際には、ほかの要因も考慮する必要がある。BBCは、フィンランドの制度と英国など他国の制度との違いを、次のようにまとめている。
教職は高く評価され、給与も高い職業である。
学校の査察も教員の評価もない。
授業日数は短く、夏休みは10週間ある。
子どもの評価は教員が行う。全国共通の試験は、18歳まで学び続ける人を対象とするものだけだ。
1クラスの平均人数は19人。
成功の背景には、伝統的に教えることと読書が重んじられてきたことがあるとされる。

