森林破壊によって最も大きな被害を受けるのは誰か?

森林破壊によって最も大きな被害を受けるのは誰か?
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森林破壊をめぐる議論では従来、地域経済にもたらす利益と、炭素排出量で測られるより広範な生態学的負荷とのトレードオフが比較検討されてきた(Alix-Garcia et al., 2013; Foster & Rosenzweig, 2003)。その結果、この枠組みのもと、国連の傘下でREDD+(森林減少・劣化による排出削減)として知られる、数十億ドル規模の複数のプログラムが創設された。考え方は単純だ。伐採や森林の農地転換による経済的利益を放棄する見返りとして、森林を保全する国々(とりわけ貧しい国々)は、森林破壊に伴う炭素排出の削減から恩恵を受ける豊かな国々から支払いを受ける。

根底にある原則は、森林破壊に関連する排出の影響は本質的に地球規模である、というものだ。

それとは反対に、私の 研究 は、健康への外部性(とりわけマラリア罹患率の上昇)によって、森林破壊の影響は地域レベルで大幅に大きくなることを示している。インドネシアでは、森林破壊による地域の健康コストは、地球規模の炭素外部性を桁違いに上回ることが分かった。したがって、外部の政府よりも地域の制度のほうが、森林保全に強い動機を持つ可能性がある。さらに、マラリアに伴う生産性、罹患率、死亡率、出生率へのコスト(Lucas 2013、 Lucas 2010)を踏まえると、環境保全には二重の便益がある可能性があるが、現在の政策策定では見過ごされている。
地域の外部性が重要であることを示す事例として、インドネシアは二つの理由から理想的だ。2001年から2008年の間に、インドネシアでは森林被覆が480万ヘクタール失われた。これはおよそバーモント州とニューハンプシャー州を合わせた面積に相当する。また、世界保健機関は、インドネシアの人口の44%、およそ1億3,000万人がマラリアのリスクにさらされていると推定している。

森林破壊とマラリアの生態学

理論上、森林破壊は少なくとも三つの経路を通じてマラリアに影響しうる(Pattanayak & Pfaff, 2009)。

  1. 森林破壊後の土地利用の変化、すなわち都市化、建設、農業生産は、マラリア罹患率の上昇と関連づけられている。

  2. 森林破壊には人々の移住が伴い、移住者が感染症の潜在的な宿主となることがある。

  3. 森林破壊は生物多様性を低下させることで、熱帯性マラリアの疾病生態を変化させる。とりわけ、ハマダラカの幼虫(マラリアを媒介する蚊)を捕食する種が減少し、水たまりの形成が増えて、ハマダラカの繁殖が促される。

最初の二つのメカニズムは社会経済的なもので、三つ目は生態学的なものだ。私の統計分析は、森林破壊とマラリアを結びつける純粋に生態学的なメカニズムが存在することを示している。二つの社会経済的メカニズムには、有意な影響が見られない。この区別は、メカニズムが政策上の含意に直接影響するため重要だ。たとえば、根底にあるメカニズムが森林破壊後の土地利用変化を通じたものなら、政策としては森林破壊という行為ではなく、農業拡大や都市化による健康コストを内部化することが処方される。

衛星データを用いたパネルデータ分析

森林破壊に関する空間的に細分化された郡レベルの衛星データ(Burgess et al., 2012)と、行政上の村レベルのデータを組み合わせ、森林破壊がマラリア罹患率に及ぼす因果効果を推定する。インドネシアの森林破壊の60~80%は違法であるため、公式記録は信頼できない可能性が高く、衛星データを用いることが重要だ。マラリアデータは、Budan Pusat Statistik(BPS)が2~3年ごとに収集する村落国勢調査の行政データセット(Podes)から得た。このデータセットは、インドネシア国内の66,000の村すべてを対象としている。村長は三つの質問に回答する形で疾病データを報告する。流行はあったか。あった場合、感染者は何人で、死亡者は何人か。いずれの年も、平均して村の19%が流行の発生を報告し、流行1回あたりの感染者数はおよそ14~15人だった。回想に基づくデータでは測定誤差が懸念されることが多いが、この研究への影響は無視できるほど小さい。従属変数の測定誤差は係数の標準誤差を大きくするだけであり、主要な結果の統計的有意性を、せいぜい過小評価するにとどまるためだ。

基本仕様には郡固定効果と島・年固定効果を含め、郡レベルの時間不変の異質性を調整するとともに、各島の時間とともに変化する異質性を柔軟に考慮している。行政上の村レベルのデータセットが豊富なため、医療施設の有無と利用の可否、貧困指標、都市からの距離、衛生設備、住居の状態、人口統計、物理的・地理的特性など、多数の村レベルの交絡変数を調整できる。

一連の頑健性検証とプラセボ検証によって、パネルデータ分析の主要な結果が裏付けられた。したがって、森林破壊がマラリア流行を増加させるという強い効果は、森林破壊と健康の両方に相関しうる、欠落変数や交絡変数によるものではないとみられる。

森林破壊はマラリアを大幅に増加させる

分析から、特に重要な結果が三つ明らかになった。

  1. 森林破壊はマラリア罹患率を大幅に上昇させる。具体的には、基準推定値によると、標本内の郡レベルでの平均的な森林破壊(1,000ヘクタール)によって、その郡内の各村でマラリア流行が発生する確率は0.364パーセントポイント、すなわちおよそ2%上昇する。その後の推定では、2001年から2008年のインドネシアの森林破壊によって、マラリア感染者がほぼ100万人増加した。

  2. この効果は、生物多様性保全を目的とする森林では、伐採や土地利用(農業または住宅建設への転換)を目的に指定された森林の10倍に達する。この結果は、根底にあるメカニズムが森林破壊への生態学的反応であるという推論を裏付ける。

  3. この効果はマラリアに特有であり、森林破壊が下痢、はしか、呼吸器感染症などに明確な影響を及ぼすことはない。これらの疾病の生態は、マラリアとは著しく異なる。

地域の保全と生態系サービスへの支払いに対する含意

この研究の含意は、インドネシアで現在進行中または今後実施される政策手段だけでなく、アマゾン川流域やコンゴ川流域の国々など、類似した森林基盤を持つ国々にも影響しうる。

第一に、インドネシアは最近、森林破壊の削減を目的とする、類例のない生態系サービスへの支払いプログラム「Rainforest Standard」を立ち上げた。この研究は、森林破壊を回避することによる地域の健康上の便益を、政策立案者がより適切に内部化する助けとなりうる。関連する炭素負荷だけに注目することで、森林破壊のコストを過小評価している可能性が高い。

第二に、この研究は当然の疑問を投げかける。なぜ地域社会や地域の制度は、森林破壊によるこうした地域のコストを内部化しないのか。したがって、 Burgess et al. (2012)と同様に、本稿は、森林破壊を回避することで得られるこうした大きな地域の便益を、地域の制度がどのように取り込めるかについて、さらなる研究を促す。

最後に、この研究は、マラリア感染に伴う罹患と生産性への外部性を考慮することで、環境と経済のトレードオフに関する従来の通念を捉え直す助けとなる。環境保全には健康面と経済面の二重の便益があるようだが、現在の費用便益分析では見過ごされている。

この記事は当初、 世界銀行のDevelopment Impact Blog に掲載された。著者:Teevrat Gargは、コーネル大学Charles H. Dyson School of Applied Economics and Managementに在籍する環境・開発経済学の博士課程候補生。  画像:2013年1月22日、アテネ南部のヴァルキザ郊外にある薪販売業者の敷地で、薪の山が見える。REUTERS/Yorgos Karahalis。

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