明確にしておきましょう。スキルのミスマッチは新興市場だけの問題ではありません。普遍的な問題であり、 米国 であれ 欧州連合 であれ、世界のより豊かな地域にも、新興市場にも影響を及ぼします。ある意味、包括的な労働市場統計があるため、工業化経済のほうが問題は見えやすいと言えます。途上国では、企業の経営者や失業者から聞く逸話的な証言に頼らざるを得ません。
Tupperware Brandsでは、ほぼ100か国に広がる300万人の販売員のおかげで、この問題の全体像を把握しています。私たちが注目する事実は2つあります。第一に、新興市場ではスキルのミスマッチがとりわけ深刻な問題です。第二に、そしてこれは明るい材料ですが、こうした国々でスキルの問題に取り組むと、通常より大きな成果が得られます。
スキルのミスマッチを考える際には、これは失業者だけの問題ではないと理解することが重要です。仕事に就いていても、資格が過剰であったり不足していたりすれば、働く人は不満を抱き、生産性が下がり、キャリア形成も妨げられます。問題の規模は、どこに焦点を当てても明らかです。たとえばトルコでは、全従業員のおよそ3分の1が、仕事で求められる以上の資格を持っています。また、ネパールのトレッキング産業では、多くの山岳ガイドや一部のポーターさえ大学卒業者です(そして4月の壊滅的な地震によって、この仕事の機会さえ失われた可能性があります)。
一方、仕事に就いていない人は、適切なスキルがないことで、長期失業の悪循環に陥る可能性が高くなります。
しかし、最も大きな苦しみを被るのは若者だと言えるでしょう。英国で「NEET」(就業、教育、職業訓練のいずれにも参加していない人)と呼ばれる状態に陥る年が1年増えるごとに、経済的な可能性への長期的な悪影響が大きくなります。だからこそ、工業化経済でも新興経済でも若年失業が蔓延している事実を、深刻に受け止めるべきです。
世界的なスキルのミスマッチの原因をすべて挙げるには、本が1冊か2冊必要でしょう。原因は国や文化によって異なります。しかし、根本的には、教育制度が生み出す人材と労働市場のニーズとの衝突に行き着くことが多いのです。
私の経験では、企業は2つの基本戦略を実行することで、この問題への対処を成功させることができます。
教育に投資する
一見すると矛盾しているように思えます。世界中で 2億100万人が失業している一方で、雇用主は適切なスキルを持つ従業員の不足を懸念し、「人材獲得競争」を 最大の懸念事項の一つに挙げています。これはどういうことでしょうか。
私たちや多くの企業が気づいているのは、多くの教育制度が、学生にビジネスで成功するために必要な基本的な専門スキルや対人スキルを身につけさせられていないということです。学校や大学は、明日の卒業生に昨日の産業で必要とされたスキルを教えている、と指摘する雇用主もいます。
多くの場所でそのとおりですが、これは企業のリーダーである私たちへの行動の呼びかけでもあると私は考えます。教育改革を待って傍観しているわけにはいきません。企業は学校や大学が適切なスキルの組み合わせを身につけさせられるよう支援する必要があります。大学の学位がすべてのスキル問題を解決するわけではありません。現代的で起業家精神を育む職業訓練のほうが、より実践的で市場のニーズに合ったスキルを労働者に身につけさせることもあります。
企業自身も、研修や見習い制度などを提供し、教育に投資する取り組みを強化する必要があります。熟練労働者が足りないという企業の不満を聞くと、私はこう問いかけたくなります。自社の従業員を見直し、伸びしろのある人材を探しましたか。適切な研修とスキルを提供し、その後も成功に向けて育成し、指導しましたか。
女性をより多く採用する
Tupperware Brandsの全ブランドを通じた販売員の大多数は女性です。その経験から、私は確信しています。女性を労働力に加える大きな可能性と将来性を無視する企業や国は、ただちに不利な立場に置かれます。
世界中でおよそ 5,800万人の少女が学校に通えていない 状況で、人材獲得競争にどうすれば勝てるのでしょうか。インドのような国では、多くの少女が初等教育または中等教育の後に学業を中断し、また国内最大の都市圏から第2層、第3層の都市へ移るにつれてスキルが低下していく状況が見られる中で、人々の大きな可能性をどうすれば引き出せるのでしょうか。
ここでも、企業は本腰を入れ、需要を生み出し、女性をより多く採用しなければなりません。多くの市場では、特に大手メーカーやIT、BPO、KPO企業のおかげで、こうした動きが徐々に見られます。
これはジェンダー平等だけの問題ではなく、ビジネス上の合理性にも関わることです。
私自身の経験からお話しします。Tupperware Brandsでは、女性の採用と研修によって一貫して非常に大きな成果が得られてきました。それは、 地域社会への投資の好循環を生み出す経済的な可能性を引き出すからです。女性は平均して、自分の事業により多く再投資し、家族のためにより多くのお金を使い、子どもの教育にもより多く投資するからです。
より多くの女性を労働力に加えることは、どの経済にとっても即効性のある起爆剤となります。
より良いスキルを育む3つの手段
最も需要が高いのに満たされていないスキルは、国や企業ごとに異なります。
しかし、普遍的に不足しているスキルもいくつかあり、Tupperware Brandsでは3つの手段でそれらを教えられると考えています。従業員として加わる人には、1.研修、2.コーチング、3.マイクロファイナンスを提供しています。
経済面と個人のスキルの両方における効果があまりに顕著だったため、私たちは非営利団体Global Fairness Initiativeにその測定を依頼しました。ワシントンD.C.を拠点とするこの団体は、メキシコとインドネシアで数千人に聞き取り調査を行い、どこでも同じ結果が得られました。研修とメンタリングのおかげで、販売員は自信、問題解決力、コミュニケーション能力を大きく伸ばしました。その結果、収入が大幅に増え、家庭やより広い親族の中での立場も向上しました。
これらすべてが一体となって、再投資と購買力の好循環を生み出します。
何より重要なのは、今日の労働力への投資が、これから何世代にもわたって実を結ぶことです。メキシコでは、Tupperware Brandsの販売員の50%が、子どもの教育への支出を倍増させたと報告しました。これは将来のスキルのミスマッチを防ぐことにつながります。
もちろん、この取り組みは他の企業にも有効です。
たとえば、UnileverとPriceWaterhouseCoopersです。Paul PolmanとDennis Nallyはともに、最終的に自らが率いる多様な組織でジェンダー平等を実現するため、UNWomenのHeForShe運動に企業インパクト・チャンピオンとして参加し、私とともに活動しています。
企業のリーダーである私たちは従業員の研修に投資しなければなりません。教育制度が完璧な人材を銀の盆に載せて差し出してくれると期待することはできません。また、より多くの女性を迎え入れて労働力を広げる必要があります。
何より重要なのは、研修が専門スキルにとどまらないようにすることです。自信があり、起業家精神を持ち、問題を解決できる人材が必要です。こうした基礎的なスキルを身につけてもらうことは、工業化市場でも新興市場でも、労働力のスキルを企業のニーズに合わせるうえで大きな助けとなります。
『Human Capital Report 2015』は こちらから入手できます。
以下のヒートマップを使って、レポートをご覧ください。
著者:Rick Goings、Tupperware CEO
画像:西ドイツのエッセンにある連邦労働局の職業相談所で、女性がコンピューターを使っている。REUTERS/Kirsten Neumann

