バングラデシュ北部、遠隔地にあるナトール県の水上学校に通う9歳の生徒、アンナ・アクテルさんは、ボートを教室にした学校がなければ、毎年のモンスーンによる洪水の間、教育を受け損ねていたかもしれないと話す。
同じことはクシ・カトゥンさんにも当てはまる。彼女もこの水上学校に通い、無料で授業と教材を受けている。
「このような学校がなければ、彼女はぬかるんだ道を2キロ歩くか、モンスーンの時期にボートで通わなければならず、勉強を諦めていたかもしれません」と、父親でパンガシア村の農家、ナジル・ウディンさんは話した。
バングラデシュ北部のこの地域では、数百人の生徒が水上学校で学んでいる。これは、頻繁な洪水によって暮らしが困難になる子どもたちが教育を受けられるようにする取り組みだ。
「生徒が学校へ行くのではなく、学校が生徒のもとへ行くのです」と、同国初の水上学校制度を導入した非営利団体、 Shidhulai Swanirvar Sangsthaの創設者、モハメド・レズワン氏は語った。
同団体はまた、農家に浮き畑での野菜栽培やアヒル・魚の養殖を指導し、農業資材も無償で提供している。
水上学校は、バングラデシュのような開発途上国が、異常気象や深刻化する気候変動の影響に対して教育のレジリエンスを高めるのに役立つ取り組みの一つだ。
災害リスクを軽減するための 新たな行動計画 を採択するため3月14~18日に日本で会合を開く各国政府は、危機の前・最中・後に教育をより適切に守る方法を求める見通しだ。
バスから教室へ
建築家のレズワン氏はナトール県で生まれ育った。家族のボートのおかげで雨季にも学校を休まずに済み、多くの友人とは違って幸運だった。
「学校に通う年齢のころから、この問題を解決する方法があるはずだと思っていました」とレズワン氏は、ナトールの事務所から電話でトムソン・ロイター財団に語った。
大学在学中、子どもたちが学校に行けないのなら、教室のほうが子どもたちのもとへ行けばよいのではないかと思い至った。
レズワン氏は1998年、貯金と奨学金から得た500ドルを元手にShidhulai Swanirvar Sangsthaを設立し、水上学校の構想は2002年に始動した。
ボートはまずスクールバスとして、川沿いの複数の停留地点で子どもたちを乗せる。停泊すると授業が始まる。
レズワン氏の団体は現在、木造ボートを22隻保有し、それぞれ30人の生徒を収容できる。ボートには教室と図書室があり、船上の太陽光パネルで稼働するインターネット接続パソコンも備わっている。
レズワン氏によると、バングラデシュの農村部の多くは毎年洪水に見舞われ、学校は休校を余儀なくされる。例えば2007年には、約150万人の生徒が洪水の影響を受けたと推定されたという。
同国の人口1億6000万人のうち、およそ3分の2が農村部に暮らす。通常の雨季には国土の5分の1超が水没し、洪水が深刻な年には最大で3分の2が浸水することもある。
レズワン氏によると、気候変動の影響が目に見えるようになるなか、洪水や暴風雨など異常気象による災害が、低地の同国をますます襲っている。気候変動に関する政府間パネルは、今後数年で海面上昇が沿岸地域の状況を悪化させる可能性があると予測している。
広がるアイデア
水上学校は2平方キロメートルの地域をカバーし、そうでなければ学校から遠ざかっていたかもしれない地元の子どもたちに初等教育を提供している。
Shidhulai Swanirvar Sangsthaは現在、村の成人を対象に、子どもと女性の権利、栄養、健康、衛生についても指導している。また、気候変動の影響に適応できるよう、「浮き畑」で野菜を育てながらアヒルや魚を養殖する方法も教えている。
カンボジア、ナイジェリア、フィリピン、ベトナム、ザンビアなど、洪水に見舞われやすい他の国々も、レズワン氏のモデルに倣って水上学校を導入した。
ナトールの水上学校で教師を務めるナズマ・カトゥンさんは、約2キロ離れた最寄りの公立小学校には、季節的な洪水の間、自分の地域の生徒たちは通えなかったと話した。
「水上学校は多くの恩恵をもたらしました」と彼女は語った。「生徒たちは楽に通学でき、親の近くにいられます。この地域では識字率が上がっています」と付け加えた。
彼女の娘も水上学校に通い、現在は近くの学校で中等教育を受けている。カトゥンさんの人生も、より良い方向に変わった。
「結婚してからは、主婦として家にいました」と彼女は語った。「今は大学院で学びながら、この学校で教えています。」
この記事は、 トムソン・ロイター財団 trust.orgとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味しません。
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著者:シフル・イスラムは、バングラデシュのダッカを拠点に、トムソン・ロイター財団のフリーランス記者として気候変動問題について執筆している。
画像:生徒たちが水上学校の教室となるボートに乗り込む。教育を子どもたちのもとへ届けている。Shidhulai Swanirvar Sangstha/トムソン・ロイター財団。

