世界で最も重要な資源は何でしょうか。石油ではありません。金でもありません。子どもたちです。著名な経済学者ジェフリー・サックスは次のように述べています。「子どもの健康、教育、技能への投資は、一国にとって最も高い経済的見返りをもたらす。」
こうした投資は早く始めるほど効果的です。UNICEFによれば、幼児期は子どもの認知面と身体面の発達に投資する上で、またとない機会の時期です。こうした投資は幅広いニーズを対象とすべきですが、私たちがしばしば見落とすニーズが一つあります。それは遊びです。
遊びが子どもにとって直感的に身につくものであることは、誰もが知っています。しかし、遊びが子どもの発達にとってどれほど不可欠であるかを理解している人は、ほとんどいません。 サム・ワン博士とサンドラ・アーモッド博士は、遊びが脳の発達をどのように促すかを研究してきた人物であり、次のように述べています。「幼稚園教育の概念を広めた19世紀のキンダーガーテン運動は、歌、ゲーム、その他の活動が、子どもが世界に入っていくための知覚、認知、社会性、感情の知識を得る手段であるという考えに基づいていた。」
成功例としてしばしば耳にするのは 中国と日本の児童・生徒です。国際学習到達度調査PISAでは、理科、読解、数学で最高水準の得点を収めています。しかし、あまり語られていないのは、2年生までの学校教育において、遊びを取り入れた体験型のアプローチをとっていることです。さらに、その後の学年になっても、中国や日本の多くの児童・生徒は、50分ごとに短い 遊び時間を与えられています。
ドイツの事例研究は、幼い子どもの将来の成功にとって遊びがいかに重要であるかを示しています。1970年代、同国の遊びを基盤とした幼稚園の多くは、「認知的達成のためのセンター」へと転換されました。 縦断的研究 では、遊びを基盤とするセンター50か所と認知的達成センター50か所を比較しました。その結果、10歳の時点で、幼稚園で遊んだ子どもたちは「読解と数学で進んでおり、学校での社会性や情緒面の適応もより良好だった。創造性、知能、口頭表現、『勤勉さ』においても優れていた」ことが分かりました。
この研究が示すように、幼児教育は、子どもが遊びの機会を得るうえで決定的に重要な時期です。UNICEFが最近発表した報告書 『富裕国における子どものウェルビーイング』 で上位5か国を占めているのが、オランダ、ノルウェー、アイスランド、フィンランド、スウェーデンであるのは偶然ではありません。これらの国はいずれも、質が高く遊びが豊富な保育と就学前教育の機会に、多額の投資を行っています。
しかし、こうした投資は報われるのでしょうか。 サイエンス・デイリーによれば、ある縦断的研究では、シカゴの幼児教育プログラムに1米ドルを投資するごとに、子どもの生涯にわたって社会に還元されると見込まれる額は、約11米ドルに上ることが明らかになりました。
世界各地の研究では、幼児期の発達への投資が犯罪率を下げ、将来の賃金獲得能力を高めることが分かっており、その結果として政府の税収も増加します。 UNICEFの報告 によれば、73か国で就学前教育の就学率を高めた場合のシミュレーションでは、投資された1ドルあたり6.4ドルから17.6ドルの将来賃金の上昇効果が見込まれるとされています。このシミュレーションが示す長期的な便益の可能性は、110億ドルから340億ドルに及びます。
世界経済は、生産性の高い労働者だけでなく、創造性の高い人材にもますます依存するようになっています。 IBMの調査 では、60か国・33業種にわたる1,500人以上のCEOを対象に調査が行われ、ますます複雑化する世界をうまく乗り切るうえで、最も重要な資質は「厳格さ、経営規律、誠実さ、さらにはビジョンよりも」創造性であることが明らかになりました。
イノベーションに関する幅広い研究において、教育者 トニー・ワグナー は、ある傾向を指摘しています。創造的な遊びに満ちた幼少期は、根強い関心につながり、それが思春期や成人期に開花して、キャリアや人生の目標に対するより深い目的意識になるというものです。遊び、情熱、目的。これらこそが若いイノベーターを突き動かす原動力なのです。
世界中で遊びの機会が失われつつあり、各国はその代償を払っています。文字通りに。社会は、補習支援、公的給付、医療、さらには収監にかかる費用を負担しています。その一方で、私たちは次世代の革新的な思想家やビジネスリーダーの育成を妨げています。そして何より痛ましいのは、子どもたちが当然享受すべき子ども時代を奪われていることです。彼らからそれを奪うことは重大な道徳的失敗であり、私たちが決して負担できないものです。
執筆者:ダレル・ハモンドは、KaBOOM!の創設者兼最高経営責任者(CEO)です。
写真:カラフルなボールのプールで遊ぶ子ども REUTERS/Sheng Li

