最近、 リリアンという女性に会う光栄に恵まれました。彼女はタンザニアのダルエスサラームで飲料品の販売を営み、12歳の娘エンジェルを育てています。彼女たちと過ごした短い時間の中で、リリアンは私がこれまで会った中でも特に意欲的で勤勉な女性の一人だと感じました。娘への愛情は彼女の人生の原動力であり、エンジェルを成功し、自立した女性に育てたいという願いもまた、彼女を突き動かしています。
リリアンだけではありません。世界中の女性は収入の90%を家族や地域社会に投資しています。それは大きな投資です。世界銀行によると、新興国の女性の収入が増えると地域社会の発展が加速し、子どもの生存率、栄養状態、教育が改善します。
女性は世界の仕事の3分の2を担っている一方で、世界の所得のうち得ているのはわずか10%です。そのため、家族は貧困の連鎖を断ち切り、子どもたちをよりよい暮らしへと導くために必要な資源を得られずにいます。
この統計が示す状況に置かれた女性は、多くの困難に直面しています。水の問題を考えてみましょう。世界保健機関によると、飲料水源のない家庭では、女性が不均衡に水くみの責任を負っています。世界全体で、女性は推計で 毎日2億時間 を、ただ水をくむためだけに費やしています。これはジェンダー格差です。こうした家庭に安全な水を届けることは、この格差を縮める簡明な方法であり、女性がより意義のある生産的な仕事に取り組めるようになります。
起業も、女性が収入を増やすための重要な手段です。残念ながら、リリアンのような世界各地の女性起業家は、事業の立ち上げや成長にあたり、現実の障壁に直面しています。その障壁は、男性が直面するものとは異なることも少なくありません。私の会社は、こうした障壁を理解し、女性起業家が乗り越えられるよう支援するため、多くの時間を費やしてきました。その取り組みが 5by20 です。2010年に始まった5by20は、2020年までにザ コカ・コーラ カンパニーのバリューチェーン全体で500万人の女性起業家の経済的自立を後押しするという、同社の世界的な取り組みです。
私たちは、いくつかの重要な教訓を得ました。
自立を支援する方法を設計する際には、女性が直面する障壁を理解することが欠かせません。調査によると、女性起業家が事業の立ち上げや発展にあたって乗り越えなければならない主な課題は3つあります。いずれも、1)ビジネススキル研修、2)事業を始め発展させるための資金、3)支援を受け、学び、新たな市場機会を見つけるために必要なメンターや仲間のネットワークへのアクセス不足に起因しています。
女性起業家が格差を縮め、成功できるよう、私たち全員に何ができるでしょうか。答えはパートナーシップにあります。企業、政府、市民社会が共通の目標を掲げながら、多様な経験と資源を持ち寄る「ゴールデン・トライアングル」のパートナーシップを結ぶと、変化が始まります。
たとえばミャンマーでは、コカ・コーラとNGOのパクトが、農村の女性たちに基礎的な金融知識とビジネススキルを教えています。 マー・リン・リン さんはプログラムに参加した当時、夫とともに石切り場で働き、1日4ドルを稼いでいました。パクトの貯蓄を軸とした自立支援プログラムで4か月間の研修を受けた後、自分のカレー店を始め、生まれて初めて収入の一部を貯蓄するようになりました。マー・リン・リンさんの子どもたちは、もう空腹のまま眠りにつくことはありません。
ケニアでは、開発途上国の人々を情報や市場につなぐNGO、テクノサーブが46年にわたって培った経験を生かしています。コカ・コーラとのパートナーシップを通じ、テクノサーブは ケニアの農家 を地元の供給業者や買い手につなぐとともに、女性向けに特別に設計した研修を通じて、農家のビジネススキルを高めています。
そこから5,000マイル離れたフィリピンでは、現地のボトラーおよび国の機関である 技術教育・技能開発庁(TESDA) と官民パートナーシップを組み、雑貨店の経営者にビジネススキル、資金、仲間のネットワークを提供しています。パートナーが持つ確かな研修経験、地域に根差した活動、商品陳列の専門知識なしには、この連携は成功しません。
タンザニアに戻ると、リリアンは受講したコースで学んだスキルを生かして事業を成長させ、娘に教育を受けさせています。エンジェルの未来がリリアンの原動力です。またリリアンは、地域の若い女性たちの自立を後押しする新たな担い手でもあります。従業員は11人で、レジ係と在庫管理という重要な2つの役割を若い女性が担っています。彼女はその従業員や、事業の運営方法を学びたいほかの若い女性たちに教えています。リリアンが築く、より力強い地域社会は、投資収益の一部として測定できないかもしれません。それでも、私たちが暮らし、働く地域社会が強くなることで、私たちの事業も強くなります。
世界には、同じ機会を必要とするリリアンのような女性が大勢います。彼女たちが必要としているのは、小切手を切ることや施しではありません。生涯にわたって活用し、ほかの人とも分かち合える生活スキルやビジネススキルを身につけるための支援です。実績がまだなくても、公正な金利で融資を受けられることも必要です。学び合い、アイデアを共有できる仲間のネットワークも必要です。機会と、それを実現するための研修や支援も必要です。
こうした支援があれば、女性は自らの可能性を解き放ち、夢を実現できます。女性が夢をかなえる力を持てば、何でも可能になります。それがジェンダー格差の解消です。
著者:ベアトリス・ペレスは、ザ コカ・コーラ カンパニーの最高サステナビリティ責任者兼副社長です。
画像:タンザニア、ザンジバル島ブウェジュ村の倉庫の前に立つ女性商人。2007年12月2日。REUTERS/Finbarr O’Reilly

