教室でのモバイル端末の使用は、本当に教育の質を高めるのか?

教室でのモバイル端末の使用は、本当に教育の質を高めるのか?
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幼稚園から大学院まで、教室でモバイル端末を教材として使うことは、米国の教育現場でますます一般的になっています。Pew Research Centerの最近の調査によると、米国の教師の 58%がスマートフォンを所有しており、これは成人全体の全国平均を10ポイント上回ります。教師たちは、私物端末の持ち込みを認める方針を採用し、 すべての生徒にiPadをという取り組みを推進するなど、授業計画にもテクノロジーへの習熟を取り入れています。2013年には、米国の学校の推定 25%がBYOD方針を導入しており 、この2年間でその割合が上昇したと考えるのは妥当でしょう。

しかし、こうしたモバイル端末は実際に何をもたらすのでしょうか。この技術トレンドは、生徒の注意を引くこと以上の意味を持つのでしょうか。モバイル技術は教室での指導を向上させているのでしょうか。それとも、従来型の授業と同じことをするための、見栄えのよい手段にすぎないのでしょうか。

調査が示すモバイル技術の利点

同じPew Research Centerの調査では、Advanced PlacementおよびNational Writing Projectに参加する教師たちに、教室におけるインターネット技術の教育的影響について尋ねました。モバイル技術に関して、教師たちは次のように回答しています。

  • 教師の73%が、自らの指導に取り入れる、または生徒が課題をこなす際に使えるようにする形で、教室でモバイル技術を使用していると回答しました。

  • 英語の教師は、数学の教師よりも教室でモバイル技術を使う傾向があります。

  • 教師の47%が、生徒が学業面でもその先でも成功するにはデジタルリテラシーの授業が必要だと強く同意し、さらに44%がある程度同意しました。

2010年にはすでに、モバイルアプリは幼稚園児ほどの子どもにとって、興味を引くだけでなく教育的でもあるという報告が現れていました。PBS Kidsは米国教育省と共同で、同社の「Martha Speaks」モバイルアプリで遊んだ3~7歳の子どもたちの語彙力が 最大31%向上したことを明らかにしました。同じ頃、Abilene Christian Universityが行った調査では、iOSアプリ「Statistics 1」を使った数学の学生は、最終成績が 向上したことが分かりました。また、従来の教科書や問題集を使うより、モバイル端末で授業を終えることへの意欲も高まりました。

さらに最近、授業中と自宅でタブレットを使った小学5年生と中学2年生をそれぞれ追跡した2つの研究では、学習体験が 全般にわたって向上したことが分かりました。中学2年生の35%は、タブレットを使うと教師の授業や活動への関心が高まると答え、端末を使った生徒たちは教師の学業面での期待を上回りました。生徒の自己申告では、54%がテクノロジーを使う授業では より積極的に参加する と答え、55%が教師に、授業でより多くの教育用ゲームやシミュレーションを使ってほしいと答えています。

私の大学の学生たちは、P-12の教室で教育実習をした経験を報告し、子どもたちはモバイル端末の刺激によく反応するようだと話しています。課題に集中し、間違いをリアルタイムで直し、何よりも学ぶことにわくわくするのです。

モバイル端末がもたらす課題

利点がある一方で、モバイル端末には確かにさまざまな問題も伴います。たとえば、教室でモバイル技術を認めると、教師の権威が容易に損なわれることがあります。教室でのモバイル端末の利点としてよく挙げられるのは、複数の作業を同時に進められることです。しかし、それは授業全体の計画を損なうのでしょうか。

費用の問題もあります。学校が技術を購入し、教師が使いこなせるようにするには、当然費用がかかります。しかし、子どもたちに各自の端末を持参させる場合でさえ、問題が生じる可能性があります。私物端末の持ち込みを認める方針は、生徒間の経済的格差を際立たせることがあり、盗難の可能性も常にあります。

個人所有の電子機器では、学校所有の端末に比べて、テクノロジーの利用方針を実施するのも難しくなります。たとえば、特定の学区が所有するタブレットなら、適切なプログラムやアプリをあらかじめインストールし、学習以外の用途には使えないようにできます。しかし、生徒が自宅に持ち帰る端末に同じ規則を適用することはできません。

プライバシーの問題も考慮する必要があります。特に、個人用モバイル端末でトラッキングCookieが広く使われている現在はなおさらです。第三者に生徒の学習経路を追跡させてよいのでしょうか。また、生徒が教室の外でモバイル端末を使って何をしているかを、教師が把握すべきでしょうか。

教室でのモバイル技術:効果的な活用法

教室でモバイル技術を使うだけで、理解度が高まるとも、生徒の注意を引けるとも限りません。では、教室ではどのようなモバイル技術の使い方が最も適しているのでしょうか。

• 電子書籍リーダー。従来の教科書が抱える問題の一つは、内容だけでなく、読者に最も届きやすい形式もすぐに古くなることです。電子書籍リーダーならこの問題を解消し、リアルタイムで更新できます。新しい教科書が出る翌年度を待たず、更新内容をすぐに生徒や教師が活用できます。

• 個別対応のモバイル教材。教育用アプリやゲームには、生徒ごとにログインできるものがあります。生徒は自分のペースで取り組み、特に時間をかける必要のある分野にじっくり取り組めます。

• テキストメッセージで回答するプログラム。教師がテキストメッセージで宿題やテストの問題を生徒に送り、回答を求められるウェブサイトを使うと、より双方向的な学習が実現します。こうした技術を可能にするプログラムの多くは、回答へのフィードバックをリアルタイムで返せるため、生徒は間違いから学び、その場で全体の文脈に結び付けられます。Pew Researchによると、米国の10代は1日に 平均60件のテキストメッセージを送信しており、ほぼ誰もが使う媒体を通じて生徒に働きかける効果的な方法となります。OneVille Projectは、高校生にテキストメッセージを送る教師とその経験を追跡調査し、教師とメッセージで連絡できる生徒は、 登校や課題の期限内の完了に対する意欲が高まる ことを明らかにしました。

• クラウドを活用したシームレスな学習。クラウドに接続されたモバイル技術を使えば、電話、タブレット、コンピューターのいずれかにアクセスできる限り、生徒は教室での学習から自宅、あるいはほかの場所での学習へと簡単に移行できます。これにより時間を節約でき、生徒の整理整頓能力も向上します。

モバイル学習は、生徒の学び方に良い変化をもたらすことができ、実際にもたらしています。それは単に「かっこいい」からではありません。適切に使えば、モバイル技術は生徒の学習量を増やし、知識の理解を助ける可能性があります。

理想的な世界では、すべての生徒が学校と自宅で情報を同期できる自分専用のモバイル端末を持ち、端末は学習に集中するために使われ、生徒の学業成績は大きく伸びるでしょう。しかし、どのような学習の取り組みでも、現実の教室が絵に描いたように完璧であることはありません。

モバイル端末は万能薬ではありません。1995年、スティーブ・ジョブズは、教育が直面する問題を解決するには、 テクノロジーだけでは不十分だと有名な言葉を残しました。情報化時代において、有能で熱意ある教師の重要性はかつてないほど高まっています。モバイル技術の教育上の利点と、健全な教師との交流とのバランスを取ることが、その双方の価値を最大限に引き出す鍵です。

この記事は、 The Conversationとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Matthew Lynchは、Virginia Union UniversityのSyphax School of Education, Psychology & Interdisciplinary Studiesの学部長です。

画像:2013年8月21日、Sneekのスティーブ・ジョブズ・スクールでiPadを使う生徒たち。REUTERS/Michael Kooren。

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