絶対額での経済成長を追求するだけでは不十分であり、その結果に配慮することが重要だ。課題は、包摂的かつ持続可能な成長、すなわち2014年のダボス年次総会の枠組みを構成した二つの用語によって表される成長の種類を拡大することである。
この課題について、マクロとミクロの両レベルで考える際、私は次の四つの提言に影響を受けている。
「インパクト・エンタープライズ」、すなわち社会的または環境的な成果を、現金を生み出す事業の形で意図的かつ明示的に目指すベンチャーによって、多くのことを達成できる。多くの場合、こうしたソーシャル・ビジネスは、純粋な慈善に代わる自立的な手段である。
大企業によっても多くのことを達成できる。私は「本当に大きな影響をもたらす変化を望むなら、自ら独立する前にまず社内起業を試すべきだ」と主張する考え方に与する。大企業の内部での小さな変化が、大きな成果につながりうる。
個人のレベルでは、善行を行うことに関して、私は「 比較優位 」のアプローチを信じている。最大の効果を得るには、実際に専門性を持つことに、ボランティアの時間を充てるほうがよい。無償で行うこともできれば、社会的成果の実現を専門とする人々に引き渡せる商業的な報酬を得ることもできる。
今後、金融の成長部分は非銀行部門から生まれると予想すべきだ。資金の供給元は、民間、機関、ソブリンといった直接投資家になり、銀行は主体ではなく仲介役となっていく。
では、インパクト・ベンチャーの到達範囲をどのように拡大させるのか。
あらゆる善意には資金が必要であるため、この問いは次のように言い換えられるだろう。インパクトのある目的への資金配分を、どのようにして急速に加速させるのか。
その答えの一つは、投資銀行家を取り込むことだと私は考える。慈善事業の提供と並ぶ銀行内のニッチな部門だけでなく、主流の投資銀行家を取り込むことを意味する。
投資銀行家は、資金の供給源と使途をつなぐ案件の組成、引受け、ストラクチャリング、マッチングを専門としている。引受けに関しては、通常は調達総額の一部にすぎない金額を、社外投資家の投資残高を積み上げるきっかけとするため、自社の資本の一部を拠出する。
インパクト投資を主流化することは容易ではないと私は認識している。フォーラムの 最近の調査で明らかにされたとおり、エコシステムのいくつかの要素を整合させる必要がある。しかし、他の全員が先に行動するのを待つのではなく、世界の上位10の投資銀行のCEOに対し、次の事項を同時に約束するよう求めることで、はずみをつけてはどうだろうか。
第一に、従業員のボランティア・プログラムにおいて、ソーシャル・エンタープライズまたは投資のために、組成および販売の専門性を活用することを積極的に促すこと。
第二に、限られた数のこうした取引の引受けを目的として、一定額の資本を拠出すること。各案件について1,000万米ドルを下支えするという象徴的な約束が、離陸の勢いをもたらすはずだ。
投資銀行家はリーグテーブルを好むことは分かっている。その競争心を活用しよう。従来の起債のリーグテーブルが公表され、投資銀行間で争われているのと同じ方法で、社会的金融の年次リーグテーブルを作成しよう。
これら投資銀行によるトップダウンのメッセージと、資本を(規模の大小にかかわらず)配分するという約束は、強力なシグナルを送ることになるだろう。対外的には、初めて投資する投資家を呼び込む助けとなり、社内的には、組織の各部門のスタッフがそのメッセージを受け止めることになる。
銀行間で協調的でありながらも競争的なキャンペーンとして開始することによる便乗効果は、ソーシャル・エンタープライズの資金調達において、非常に必要とされる飛躍的な進展をもたらす推進力となる可能性が高い。
では、何を待っているのか。
著者:Lutfey Siddiqi氏は、シンガポール国立大学リスク管理研究所の非常勤教授であり、UBS投資銀行のマネージング・ディレクターを務めている。また、世界経済フォーラムの ヤング・グローバル・リーダー に選出され、世界経済フォーラムの 年次総会 (2014年ダボス会議)にも参加した。
画像:北京の橋の上を走る車両 REUTERS/Jason Lee

