「フィジタル」インフラは、物理的要素とデジタル要素を組み合わせ、経済成長と社会の進歩を後押しするスマートなソリューションを生み出します。
スマート農業、物流管理、電子政府などの例があり、資源配分の最適化、プロセスの効率化、取引コストの削減に役立ちます。
こうしたソリューションを新興国に導入すれば、大きな経済的利益につながる可能性があり、インドなどの国がその先頭に立っています。
物理的要素とデジタル要素を融合した「フィジタル」インフラは、デジタル時代における経済成長と社会の進歩を促す重要な原動力となっています。
物理的資産とデジタル技術をシームレスに統合するフィジタル・インフラは、市民と企業双方の変化するニーズに応える包括的なアプローチを提供します。インフラの不足やデジタル格差が大きな課題となっている発展途上国では、フィジタル・ソリューションの導入が包摂的な発展を促し、進歩を確かなものにします。
世界経済フォーラムは、持続可能で包摂的なデジタル経済の実現をどのように後押ししているのでしょうか。
インドでの成功事例
インドはデジタルを優先する社会へ急速に移行しており、この変化は公共インフラにも広がっています。同国ではフィジタル・インフラの概念が浸透しつつあり、長年の課題に対する革新的な解決策をもたらしています。
インドでは、物理的な空間とデジタル技術を統合してフィジタル環境を構築することで、公共インフラが大きく変化しています。公共交通機関ではデジタル決済が利用され、スマートシティではセンサーが交通状況を監視し、政府サービスでは効率化のためにオンラインポータルが活用されています。農村部の診療所では遠隔医療を通じて都市部の病院の医師に相談できます。教育機関ではオンライン要素を取り入れたブレンド型学習が提供されています。公共の場に設置されたデジタルキオスクからは、政府のプログラムやサービスを利用できます。
インドは、包摂的で便利かつ迅速に対応する公共システムを通じて、物理世界と仮想世界の隔たりを埋め、開発上の課題を克服しています。デジタル・インディアやアドハーなどの取り組みを先頭に、さまざまな分野で物理的エコシステムとデジタル・エコシステムが目覚ましく融合してきました。スマートフォンの普及、広範なインターネット接続、政府サービスのデジタル化が、フィジタル・インフラの拡大に向けた強固な基盤となっています。
インドの進展を示す注目すべき例が、アドハーを活用した直接給付金移転(DBT)システムです。政府は、インドの生体認証IDシステムであるアドハーを活用し、補助金や福祉給付金を受給者の銀行口座へ直接届けるプロセスを効率化しました。このフィジタル・ソリューションは、給付の漏れや汚職を減らしただけでなく、統治の透明性と説明責任も高め、何百万人もの市民の力となっています。
電子市民の時代
世界各地の事例研究は、フィジタル・インフラが公共サービスの提供にもたらす変革的な影響を示しています。例えばエストニアの電子居住者(e-Residency)プログラムでは、地理的な場所を問わず、個人がオンラインで事業を設立し、運営できます。この革新的な取り組みは外国投資を呼び込んだだけでなく、起業家が世界市場に容易にアクセスできるようにし、経済成長とイノベーションを促進しています。
インドでは、統合決済インターフェース(UPI)が、即時送金のためのシームレスで相互運用可能なプラットフォームを提供し、デジタル決済に変革をもたらしました。2023年には1,176億件を超える取引が行われ、その取引額は2兆ドルを上回り、UPIは世界有数のデジタル決済システムとなりました。金融包摂の促進や、現金取引への依存低下などの効果をもたらしています。
インド国道庁(NHAI)のFasTag(ファスタグ)施策は、公共サービスとインフラ管理を最適化するため、フィジタル・インフラをうまく統合した事例です。
FasTagは、無線周波数識別(RFID)技術を基盤とする電子料金収受システムで、高速道路の料金徴収を効率化し、渋滞や通行者の移動時間を削減しました。現在、料金取引の96%超がFasTagを通じて行われており、インドの料金管理は大きく変化しました。このことは、効率性と透明性を高めるフィジタル・ソリューションの有効性を示しています。
FasTagはインドの料金徴収に変革をもたらしました。2018年の導入以来、FasTag決済システムは料金所での待ち時間を大幅に短縮し、インド国民の燃料費を大きく節約しました。その額はおよそ90億ドルと推定されます。これは、2018年以降の同国の燃料輸入額(すなわち128億ドル)の約1.4倍に相当します。注目すべきことに、このコスト削減額はインドの外貨準備高のおよそ1.5%に相当します。さらに、FasTagの導入はインドの燃料輸入への依存を大幅に減らし、国際収支にもプラスの影響を与えています。
発展途上国への影響
発展途上国は、経済成長と社会の進歩を目指すうえで独自の課題に直面しています。従来型のインフラ整備は不可欠である一方、こうした国々の固有のニーズや複雑さに十分対応できないことが少なくありません。そこで、包摂的で持続可能な成長を促す強力な手段として、フィジタル・インフラが注目されています。
フィジタル・インフラがもたらす影響には、次のようなものがあります。
効率性の向上: フィジタル・ソリューションはプロセスを効率化し、手作業を減らし、データの収集と分析を改善します。例えば、エネルギー供給のスマートグリッドは資源配分を最適化して無駄を最小限に抑え、電子政府のプラットフォームはサービス提供を迅速化し、汚職を減らします。
金融包摂:公共サービスや企業にデジタル決済システムを組み込むことで、フィジタル・インフラは、これまで正式な金融システムから排除されていた社会的に取り残されたコミュニティを支援します。これにより、融資へのアクセスが可能になり、小規模起業が促進され、経済活動への参加が活発になります。
サービスへのアクセスと提供の改善:フィジタル・ソリューションは、特に遠隔地において、市民とサービスの間にある物理的な隔たりを埋めます。遠隔医療は十分な医療を受けられない地域での医療アクセスを可能にし、オンライン学習プラットフォームは地理的な制約を超えて教育機会を提供します。
イノベーションと起業家精神の促進:フィジタル・インフラは、投資を呼び込み、地域のイノベーションを促し、スタートアップの成長を支える活気あるデジタル・エコシステムを育みます。オープンデータ・プラットフォームやデジタル・アクセラレーターは、起業家を資源や機会につなげることができます。
市民のエンパワーメント:情報、コミュニケーション手段、デジタル政府サービスへのアクセスを提供することで、フィジタル・インフラは、市民が地域社会に積極的に参加し、当局に説明責任を求める力となります。これにより透明性が高まり、市民参加が促され、統治が強化されます。
フィジタル・インフラは、成長にも明確な影響をもたらします。
生産性の向上:プロセスを効率化し、資源配分を最適化することで、フィジタル・インフラは農業から製造業までさまざまな分野の生産性を高め、最終的に経済成長に貢献します。
競争力の強化:情報、技術、金融資源へのアクセスを改善することで、フィジタル・ソリューションは企業や個人が世界市場で効果的に競争できるようにし、投資を呼び込み、輸出の可能性を高めます。
雇用の創出:フィジタル・インフラの開発と導入は、データ分析からソフトウェア開発まで、さまざまな分野で新たな雇用機会を生み出し、雇用の拡大と貧困削減に貢献します。
社会開発の改善:デジタル格差を埋め、不可欠なサービスへのアクセスを提供することで、フィジタル・インフラは医療、教育、金融包摂を改善し、社会開発を促進します。最終的には、より公平な社会の実現につながります。
発展途上国がデジタル時代の複雑さに対応しようとするなか、包摂的な成長を促し、持続可能な開発を確かなものにするため、フィジタル・インフラの導入が戦略上不可欠となっています。
フィジタル・インフラは、政府、企業、市民が新たな機会を切り開き、従来の障壁を乗り越え、潜在力を最大限に発揮する力となります。各国はフィジタル・ソリューションの変革力を引き続き活用し、繁栄と進歩への道を歩み、次世代により明るい未来を築いていくことが期待されます。

