北極海の深海の海底で、陥没穴が開いている。
科学者らは、陥没穴は気候変動ではなく、長期的な気候サイクルの結果だと考えている。
しかし、気候危機が北極圏を変え続けるなか、沖合の海底永久凍土の変化も理解することが重要だと、科学者らは述べている。
北極海の深海で、何か異変が起きている。北極海の海底で陥没穴が開いており、中には街区ほどの大きさのものもある。
2022年3月に米国科学アカデミー紀要で発表されたこの発見は、カナダのボーフォート海の高解像度の海底地形調査に基づいている。
「北極圏の景観全体で大きな変化が起きていることは分かっていましたが、沖合でも変化が起きていると確認できる技術を展開できたのは今回が初めてです」と、研究の共同責任者であるモントレー湾水族館研究所(MBARI)の地質学者、チャーリー・ポール氏はプレスリリースで述べた。
科学者らは、海面より上にある北極圏の永久凍土が気候危機によって融解し、インフラに損害を与え、先住民コミュニティに被害を及ぼす陸上の陥没穴を生じさせていることを観測している。例えば、永久凍土の融解に伴う地盤の不安定化が、2020年にロシアの河川で起きた大規模な石油流出の一因となった可能性がある。しかし、北極圏の永久凍土がすべて地上にあるわけではない。その一部は、約1万2000年前の最終氷期末に、氷河の融解と海面上昇によって水没した。
これまで、この永久凍土を直接観測することはできなかった。しかし、ソナーと自律型の地図作成ロボットを組み合わせることで、ボーフォート海の海底にある永久凍土がどのような状態なのかを科学者らが把握できるようになった。
2010年に最初の調査を始めた際、研究者らは沖合約110マイルの地点に起伏の激しい区域を発見した。そこは更新世の永久凍土のかつての端に当たると、ライブ・サイエンスは報じた。この凹凸の原因を解明するため、研究者らは2013年と2017年にロボットを使い、2019年にはソナーでその区域を調査した。その間に、海底に新たなクレーターが出現したことが分かった。最大のものは長さ738フィート、幅312フィート、深さ92フィートだった。MBARIによると、6階建ての建物がある街区ほどの大きさだ。
シベリアの永久凍土を研究するエフゲニー・チュヴィリン氏は、この研究には参加していないが、変化の速さに驚いたと述べた。
「永久凍土の劣化はゆっくりと進む過程です。通常は年に数センチという話をします。今回起きているのは単なる劣化を超えた、質的な変化でもあります。ですから、これを目の当たりにするのは予想外だと言えるでしょう」とチュヴィリン氏はCNNに語った。「こうした過程が起こりうるという仮説は文献で提唱されていましたが、直接観測されたのは今回が初めてです。」
地上の永久凍土の融解とは異なり、研究者らは、こうした陥没穴が人間の活動による気候変動によって生じたとは考えていない。むしろ、最終氷期に始まった長期的な過程の一部だと考えている。
「ゆっくりと流れる地下水系が運ぶ熱が、海底永久凍土の劣化を促しています。その結果、一部の地域では大きな陥没穴ができ、別の地域ではピンゴと呼ばれる氷に覆われた丘が形成されます」とポール氏はCNNに語った。
しかしポール氏は、人間の活動によって北極圏全体が急速に変化していると指摘した。
「発見した海底陥没穴は、氷期と間氷期を繰り返す長期的な気候サイクルの結果ですが、北極圏は地球上のどの地域よりも速く温暖化していることが分かっています」とポール氏はプレスリリースで述べた。「気候変動が北極圏を変え続けるなか、沖合の海底永久凍土の変化も理解することが重要です。」




