大気汚染は健康にどのような影響を及ぼすのか?

大気汚染は健康にどのような影響を及ぼすのか?
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4月、発電所に炭素排出量の削減を義務付けて気候変動に対処するオバマ大統領の計画は、石炭業界からの最初の大きな法廷での異議申し立てを乗り越えた。しかし、計画が今後数か月のうちに実際に実施されれば、米国環境保護庁(EPA)はほぼ間違いなく再び法廷に立つことになる。化石燃料業界が、炭素汚染の削減を命じる連邦政府の権限をEPAが得ることを懸念するのはもっともだ。権限を与えられたEPAは、大気汚染の削減にかなり有効であることを示してきた。EPAが規制を義務付けられている6つの「基準」汚染物質については、6種類すべての排出量が大幅に減少している。たとえば、一酸化炭素汚染(自動車の排気管から出る有毒物質)は1990年以降73%減少した。大気中の鉛は同じ期間に83%減少した。粒子状物質(灰や煙を思い浮かべてほしい)は1990年以降38%減少した。さらに、1970年代の粒子状汚染の大幅な削減は、EPAの規制による直接的な効果であることが示されている(Chay et al 2003; Chay and Greenstone 2003)。

最適な汚染水準

米国の多くの地域で大気汚染が大幅に減少した今、政策上の重要な問いは、どこまで削減するのが望ましいのかということだ。経済学者は「最適な汚染水準」について語るのが好きだ。空から最後のわずかな汚染物質を取り除くには法外な費用がかかること、そしてそもそも汚染が存在するのは、本当に必要で価値のあるものを作る際の副産物だからだということは分かっている。したがって、便益が費用を正当化する汚染水準があるはずだ。問題は、有毒な一酸化炭素の最適量を見つけることにある。

汚染の便益が費用を正当化する水準を見極めるのは、なぜこれほど難しいのだろうか。便益は比較的簡単に測定できる。エネルギーのキロワット、製造されたノートパソコン、移動距離などだ。しかし費用の測定は、はるかに難しい。大気汚染が人の健康を損なうことは分かっているが、その損害はどれほど大きいのだろうか。損害を調べるために実験を行えないのは明らかだ。喫煙者や香水をつけすぎる男性のような注目すべき例外を除けば、ほとんどの人は有毒な大気汚染に自ら進んでさらされることはない。汚染の多い地域の健康状態を調べることはできるが、住民が病気になる理由は、汚染が直接の原因ではないかもしれない。そうした地域では、所得が低かったり失業率が高かったりする可能性もある。

大気汚染をめぐる自然実験

この問題を回避する方法の一つは、「自然な」汚染実験、つまり実際の実験を模した形で一般市民が無作為に汚染にさらされた状況を見つけることだ。この手法の優れた例がChen et al(2013)の論文である。中国では1950年から1980年まで、燃料用の石炭を無料で提供することで、住宅やオフィスに冬季暖房が無料で供給されていた。しかし予算上の制約により、この補助は中国をおおむね二分する淮河より北に位置する住宅に限られていた。川の両側にある類似地域を比較したChen et alは、北側では大気中の粒子状物質(煙や灰)の濃度が約55%高く、心肺疾患による死亡率の上昇のため平均余命が約5.5年短いことを見いだした。結論――粒子状物質への長期曝露は命を奪う。同様の研究では、1990年にアイルランドのダブリンで石炭販売を禁止した決定が検討された。禁止前の6年間と後の6年間を比較したClancy et al(2002)は、ダブリンの黒煙濃度が70%低下し、外傷以外による死亡が6%、呼吸器疾患による死亡が16%、心血管疾患による死亡が10%減少したことを見いだした。結論は同じだ。

こうした自然実験研究の多くは、粒子状物質の極めて大幅な削減や、死亡などの長期的な結果に焦点を当ててきた。粒子状物質の比較的小幅な削減が、病気や入院などの短期的な結果に及ぼす影響を推定するのは、はるかに難しいことが分かっている。しかし、汚染が比較的少ない環境で汚染基準を設定するには、まさにこの種の情報が必要だ。特にEUや米国で、粒子状物質が健康に及ぼす短期的影響を特定する際の大きな交絡要因の一つは、主要な汚染物質のほとんどが互いに強く相関していることだ。ある汚染物質を生み出す工場や車両は、別の汚染物質も大量に生み出す。たとえばアリゾナ州フェニックス市では、一酸化炭素汚染と粒子状物質汚染の相関係数は0.85である(Mar et al 2000)。非常に大ざっぱに言えば、一酸化炭素が増減するときの85%で、粒子状物質もまったく同じ動きをするということだ。カリフォルニア州を対象にした研究では、Neidell(2004)は二酸化窒素と粒子状物質の相関が0.7であることを見いだしている(ここでも、70%の時間、二つの汚染物質は同じ方向に動く)。

粒子状物質は、他の(しばしばより危険な)汚染物質と非常に強く相関しているため、粒子状物質に責任を帰そうとすると難題が生じることがある。実際、粒子状物質と他の汚染物質を併せて調べた多くの学術研究では、粒子状物質が健康状態に影響を及ぼさないという結果が出ている。たとえば、先述のNeidell(2004)の研究では、粒子状汚染は子どもの喘息による入院に影響しない一方、一酸化炭素は救急外来の受診に大きな影響を与えることが示されている。これは粒子状物質が特に有害ではないからなのか、それとも多重共線性の一例にすぎないのか。統計上の課題は今や、他の汚染物質と相関しない粒子状汚染のランダムな発生源を見つけることにある。意外なことに、その解決策は海抜4,091フィートの山頂にあるかもしれない。

図1。キラウエア火山からの二酸化硫黄と粒子状汚染の衛星画像

出典:NASA。

ハワイの火山性スモッグ

米国で二酸化硫黄汚染を発生させる最大の固定発生源は、テキサス州の石炭火力発電所でもピッツバーグの製鉄所でもない。ハワイの山だ。ハワイ島にあるキラウエア火山は、時折、断続的に、EPAの指針をはるかに超える濃度の二酸化硫黄を放出する(図1)。この二酸化硫黄は、空気中の太陽光、酸素、ちり、水と反応して「ボグ」(火山性スモッグ)を生み出す。つまり、空気中に浮遊する大量の微小な粒子状物質である。言い換えれば、粒子状汚染だ。ハワイ諸島は通常、世界でも有数の良好な大気質を誇る。大規模な製造業はなく、工業的農業もごくわずかで、非常に小規模な石炭火力発電所が1つあるだけだ。また、強い貿易風が大半の汚染物質を広大な太平洋へと吹き流す。しかしキラウエア火山がガスを放出し始め、風が弱まるたびに、州内の住民140万人は、粒子状汚染の高濃度に短期間さらされる。

重要なのは、ボグ汚染への曝露が他の大気汚染物質への曝露と相関していないことだ。ハワイでは、一酸化炭素と粒子状物質の相関係数は0.0118である(アリゾナ州フェニックスを対象にした研究では0.85だったことを思い出してほしい)。最近の論文で、私たちはこの外生的な汚染変動源を用いて、ハワイ州における粒子状物質の救急外来受診と医療費への影響を推定している(Halliday et al 2015)。これを行うため、二つのデータ源を用いた。第一は州内各地の測定所で取得した大気質の測定値である。第二は心肺系の理由による救急外来の利用データである。本研究の重要な特徴は、私たちの費用データが、先行研究の多くで用いられている費用指標より正確であることだ。次に、これらのデータを地域と日付で統合し、ハワイ州の大気質と医療利用を包括的に捉えるデータベースを作成した。この統合データベースを用いて、包括的な季節パターンと地域効果を考慮しながら、救急外来の利用および請求額を粒子状物質への曝露指標に関連付ける回帰分析を行った。

では、粒子状物質は特に有害なのだろうか。粒子状汚染への短期的(すなわち日単位の)曝露が、肺関連の入院と医療費を増加させるという強い証拠が得られた。具体的には、日々の粒子状汚染が標準偏差1つ分増えると、肺関連の症状による救急外来受診の費用が2~3%増加する。しかし、心血管系の症状については強い影響は確認できなかった。また、プラセボアウトカムである骨折についても、火山性汚染の影響は見られなかった。最後に、粒子状汚染が肺関連の入院に及ぼす影響は、最も幼い年齢層に集中している(図2)。粒子状物質の影響が最も大きいのは1歳未満の子どもで、次に大きいのは2~5歳の子どもだ。短期的な粒子状汚染への曝露でさえ有害になり得るだけでなく、最も脆弱なのはごく幼い子どもたちだと思われる。

図2。患者の年齢別に見た、粒子状物質が肺関連の救急外来受診に及ぼす影響

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注:高さは、年齢階級ごとの人数で割った推定効果を示す。すべての効果は5%水準以上で統計的に有意である。

参考文献

Chay, K, C Dobkin and M Greenstone (2003)「1970年大気浄化法と成人死亡率」Journal of Risk and Uncertainty、27(3):279-300。

Chay, K and M Greenstone (2003)「大気質、乳児死亡率、1970年大気浄化法」、NBERワーキングペーパー、no. w10053。

Chen, Y, A Ebenstein, M Greenstone and H Li (2013)「中国の淮河政策から得られた、大気汚染への継続的曝露が平均余命に及ぼす影響の証拠」 Proceedings of the National Academy of Sciences、110(32):12936-12941。

Clancy, L, P Goodman, H Sinclair and D W Dockery (2002)「アイルランド・ダブリンにおける大気汚染規制が死亡率に及ぼす影響:介入研究」 The Lancet、360(9341):1210-1214。

Halliday, T J, J Lynham and Á de Paula (2015)「Vog: Using volcanic eruptions to estimate the health costs of particulates and SO2」、CEPRディスカッション・ペーパー10543。

Mar, T F, G A Norris, J Q Koenig and T V Larson (2000)「1995~1997年のフェニックスにおける大気汚染と死亡率の関連」 Environmental health perspectives、108(4):347。

Neidell, M J (2004)「大気汚染、健康、社会経済的地位:屋外大気質が小児喘息に及ぼす影響」 Journal of Health Economics、23(6):1209-1236。

この記事は、 VoxEUとの協力により掲載されています。掲載は、世界経済フォーラムが見解を支持することを意味するものではありません。

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著者:Aureo de Paulaは、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドンおよびサンパウロ経済大学の教員。Timothy Hallidayは、ハワイ大学マノア校経済学部の准教授、IZAのリサーチフェロー。John Lynhamは、ハワイ大学マノア校経済学部の准教授であり、UHEROのリサーチフェロー。

画像:2014年11月7日、北京で、送電塔から伸びる電線の向こうに見えるコージェネレーション発電所の煙突。REUTERS/Kim Kyung-Hoon。

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