世界経済フォーラム年次総会2017の「グローバル安全保障の展望」セッションをご覧ください こちら。
この1年は、コンセンサスに基づく予想を覆す劇的な政治的結果で記憶されるでしょう。英国のEU離脱、ドナルド・トランプの予想外の選挙勝利、続く難民危機、地政学的緊張の高まり、そしてテロの脅威が続いたことは、いずれも2016年に大きな足跡を残しました。
世界経済フォーラムが、認識されているリスクを「2017年グローバルリスク報告書」で検討するなか、こうした傾向のいくつかは、私たちの未来にとって差し迫った懸念として、非常に明確に浮かび上がっています。
今年の年次調査では、約750人の専門家が30のグローバルリスクと、それらを増幅させたり、相互の結びつきを変化させたりする可能性のある13の根本的な潮流を評価しました。
異常気象が最も起こりやすい脅威
発生可能性の観点で最も差し迫ったリスクは、回答者が懸念する環境問題と地政学的問題が中心となっています。
今年は異常気象がリストの首位となり、自然災害が3位、人為的な環境災害もそれに続きます。異常気象、気候変動、水危機など、相互につながる環境関連リスクのまとまりは、『グローバルリスク報告書』の過去7回にわたり、常に上位のグローバルリスクに挙げられてきました。
発生可能性が2番目に高いリスクは、大規模な非自発的移住の影響です。このリスクは近年、特にシリア内戦を背景に大きな懸念となっています。
テロ攻撃は4位に続き、国家間紛争(戦争)や国家統治の失敗といった、ほかの地政学的緊張もトップ10入りしました。
テクノロジー関連の脅威は中位に位置し、データ詐欺・窃盗が5位、サイバー攻撃が6位です。
大量破壊兵器が再びリスクに
影響が最も大きいリスクを評価するよう求めたところ、大量破壊兵器をめぐる地政学的懸念が首位となりました。
これは驚くことではありません。2016年には、多くの国が国際安全保障を支えるために設けられた仕組みから距離を置きました。たとえば、4か国が国際刑事裁判所から脱退しました。またこの1年、大国同士が互いに、世界の安全保障の均衡を損ない、国内政治に干渉していると非難し合いました。この不安定な状況を受け、地域大国も小国も、新たな通常兵器やサイバー兵器、さらには核兵器の保有を検討するようになりました。
影響の大きさでは異常気象が2位と評価され、水危機、自然災害、気候変動が残る上位5つの懸念を占めています。
非自発的移住と食料危機も、影響が大きいと考えられる社会的リスク要因に加わっています。テロ攻撃や国家間紛争などの地政学的脅威もトップ10に入っています。
経済的リスク要因
トップ10に入った経済リスクは、失業の影響だけです。これは、景気回復の弱さと急速な技術変化を背景に、二極化と格差が拡大していることを反映しています。以前の報告書でも指摘されていた傾向ですが、この1年で深刻化し、社会不安やポピュリズムの台頭など、ほかの多くの傾向とも関連しています。
失業が企業にとって最大のリスクに
失業または不完全雇用の影響は、ますます広範囲に及んでいます。『グローバルリスク報告書』が特定した、企業にとって第1位のリスクとなりました。
エネルギー価格の大幅な上昇または下落は、エネルギーへの依存度が高い産業や消費者にさらなる経済的圧力をもたらすおそれがあり、企業にとって2番目に重要なリスクと評価されました。
財政危機の可能性への懸念は3位でした。過剰な債務負担が債務危機や流動性危機を引き起こすおそれがあることを反映しています。

国家統治の失敗は、世界の企業にとって4番目に大きなリスクと評価されました。法の支配の欠如、汚職、政治的行き詰まりなどにより、地政学的に重要な国が自ら統治できなくなる状況が含まれます。中南米の回答者は、自地域の企業にとって最大のリスクにこれを挙げました。しかし、遠くの例を探すまでもなく、スペインでは、選挙でどの政党も過半数を獲得できなかった際、暫定政権が政権運営を担わなければなりませんでした。
企業にとっての上位5つのリスクを締めくくるのは、深刻な社会不安への懸念です。調査では、失業と組み合わさることで、グローバルリスク間の結びつきが最も強くなることが示されました。
新たな世界の均衡を見いだす
こうした社会経済的課題に取り組むうえで、最も差し迫って必要なのは、世界経済を力強い成長軌道に戻すことです。しかし報告書は、成長を促すだけでは「持てる者」と「持たざる者」の深い社会的亀裂は癒えないとし、市場資本主義の幅広い改革を求めています。同時に、世界経済フォーラムは、経済格差だけでなく、社会人口学的・文化的変化によっても分断された各国のコミュニティを再建する必要性を強調しています。
より広範な世界のリスク情勢について、報告書は、地政学的緊張、環境上の脅威、社会的リスクといった主要な懸念の多くは、国ごとに対処できないと結論づけています。強力な国際協力と対応が必要です。しかしこの1年、世界各国は協力を強化するどころか、外向きの姿勢から、はるかに内向きの姿勢へと転じました。そのため、国際協力の仕組みを守り、強化することが2017年の重要課題となります。
世界が直面する最も差し迫ったリスクへの対処法は、世界経済フォーラム年次総会2017で議論されます。同総会は1月17~20日に、「応答力と責任あるリーダーシップ」をテーマに開催されます。



