歴史的なパリ協定により、気候変動に配慮した投資市場は、すでに加速している動きにさらに弾みがつきました。2015年も再生可能エネルギーに約3,500億ドルが投資され、記録を更新しました。これは石炭火力・ガス火力発電への投資額の2倍を超えます。最も有望な投資先はどこでしょうか。また、民間資金を呼び込むために各国政府に求められることは何でしょうか。
こうした問いに答えるため、世界銀行グループの一員であり、開発途上国の民間セクターに重点を置く世界最大の開発機関であるIFCは、インフラや気候に配慮したソリューションへの大規模な投資が見込まれる21の新興国市場経済が、パリで表明した国別の気候変動対策の約束を分析しました。
これらの国々が太陽光・風力エネルギーの拡大、環境配慮型建築の増加、よりクリーンな交通手段の整備、廃棄物対策の実施という目標を達成すれば、今から2030年までに23兆ドルの投資機会があります。大きな可能性を示す2つの分野を見てみましょう。
再生可能エネルギー市場は、今後さらに拡大する見通しです。138カ国が気候計画でこの分野を優先しています。IFCがペノノメ風力発電所の資金調達を支援しているパナマなどでは、収益性の高い投資機会が増えると期待されます。同発電所は出力215メガワットで、中央アメリカ最大となる予定です。パリ協定後、各国政府が再生可能エネルギー目標の実施に取り組むにつれ、ペノノメのような投資案件がさらに増えるでしょう。

エネルギー効率への投資も拡大する機会となっています。110カ国がパリでの約束において、コージェネレーション、高効率機器、環境配慮型建築への投資を目標に掲げています。
今後さらに広がると見込まれるエネルギー効率投資の一例が、IFCの中国ユーティリティー・エネルギー効率化プログラムです。このプログラムは、中国の銀行にリスク分担の仕組みと助言サービスを提供し、エネルギー効率への投資の実施を支援しました。地球環境ファシリティの支援を受け、2006年に中国の2行と始まったこのプログラムは、国内の最貧地域を含む各地で、現地銀行を通じて110億元(20億ドル)の融資を促すまでに成長しました。こうした投資により、温室効果ガス排出量を2,200万トン以上削減できました。中国で都市化がさらに進むなか、2020年までに新たな環境配慮型建築への投資が2.1兆ドルに達すると私たちは見積もっています。他の国々でも同様の投資が可能です。
民間セクターによる気候ソリューションへの投資見通しは明るいものです。しかし、この潜在力を引き出し、場合によっては新たな市場を創出するには、適切な政策や措置を整えるための政府の継続的な取り組みも必要です。気候分野で民間投資を呼び込もうとする国々にとって、重要な優先課題は3つあります。
第一に、気候目標を、支援的な政策や予算を伴う長期的なクリーン成長戦略へと転換することです。そのためには、約束を国家開発戦略に組み込み、炭素価格付けなど、明確で一貫性のある政策を確立する必要があります。
政府は、非効率な生産・消費補助金を廃止し、税制・財政政策を整合させることで、エネルギーや農業などの主要分野の政策に気候への配慮を組み込むべきです。各国は、リバースオークションや競争入札など、革新的な支援策を活用できます。IFCと世界銀行グループ全体が支援の用意を整えています。
その一例が、政府に大規模太陽光発電の競争入札による調達のひな型を提供する、世界銀行グループの「スケーリング・ソーラー」プログラムです。民間のエネルギー開発事業者は、新興市場であっても、予測可能な仕様や法的文書を信頼して事業に取り組めます。標準化は迅速さと効率性をもたらします。ザンビアで行われた同プログラム初の競争入札には、エネルギー大手数十社が参加し、アフリカ史上最も低い太陽光発電価格が実現しました。
第二に、環境配慮型政策だけでは民間投資を呼び込むには不十分です。各国は競争を促進し、投資や資本の流れを促す必要もあります。効果的で透明性の高い企業課税、規制、財産権の法的執行、官民連携の枠組み、積極的な投資政策はいずれも、投資家の信頼構築に役立ちます。
ヨルダンでは、政府が再生可能エネルギー法を、固定価格買取制度、標準契約による20年間の電力購入契約、税率を引き下げた10年間の法人所得税免除で補完し、エネルギー部門の変革を進めています。また、買い手の支払義務を担保するソブリン保証も提供しました。こうした政策、手続き、インセンティブの組み合わせにより、この地域で民間主導の最大規模となる太陽光発電事業が実現しました。IFCが6,900万ドルを投資した、出力117メガワット、総額2億9,000万ドルのタフィラ風力発電所です。これに続き、電力購入契約を締結した合計出力190メガワットの太陽光発電事業12件が進められています。
第三に、限られた公的資金を呼び水として活用することです。市場ベースの商業的な解決策がない場合、IFCは開発パートナーから提供された少額の譲許的資金を自らの資金と組み合わせ、民間セクターの商業資金を動員して、開発効果と実証効果が高いと見込まれるプロジェクトに融資します。その多くは先例のないプロジェクトです。IFCは、規律ある的を絞った戦略的なブレンデッド・ファイナンスを実施するため、一連の原則を適用しています。これには、譲許性を必要最小限に抑えることや、商業的な実績を確立できるまでの期間に限って支援することが含まれます。
こうした投資の多くは、気候に配慮した投資市場の創出に成功しています。市場が確立すれば、時間の経過とともに資金の組み合わせは不要になります。注目すべき例として、タイで2011年に初期の太陽光発電所の一部が稼働するのを後押しした、400万ドルの譲許的融資があります。またメキシコでは、1,500万ドルの譲許的融資によって、同国初期の民間資金による風力発電所の一つが完成にこぎつけ、投資家に市場の実現可能性を示しました。
23兆ドルの気候投資機会は、一朝一夕には実現しません。政府、企業、開発金融機関のリーダーシップと、焦点を絞った対話が必要です。しかし、官民が協力して取り組めば、収益性の高い新市場と雇用機会を創出しながら、地球温暖化を摂氏2度未満に抑えることを目指せます。




