気候変動と生物多様性の損失を食い止めるには、「自然のための世界協定」が必要だ

An Iraqi Marsh Arab girl paddles her boat at the Chebayesh marsh in Dhi Qar province, Iraq April 13, 2019. Picture taken April 13, 2019. REUTERS/Thaier al-Sudani - RC11DA020970
Nature is suffering accelerating losses so great that many scientists say a sixth mass extinction is underway.Image: REUTERS/Thaier al-Sudani
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地球の豊かな生命は5億5,000万年以上をかけて進化してきました。その間、5度の大量絶滅が起こり、地球上の生命は深刻な打撃を受けました。5度目の大量絶滅は、メキシコのユカタン半島沿岸に巨大隕石が衝突したことが原因で、地球の気候を変え、恐竜を絶滅させ、生物進化の道筋を変えました。

今日、自然は損失の加速に直面しており、その規模は非常に大きく、多くの科学者が第6の大量絶滅が進行中だと述べています。過去の大量絶滅とは異なり、今回の事態は、人間の活動が自然生態系を解体・攪乱し、地球の気候を変えていることによって引き起こされています。

私の研究は、地域から地球規模に至る生態系と気候変動に焦点を当てています。保全生物学者で戦略家のエリック・ディナースタインが主導した新たな研究「自然のための世界協定」では、同僚17人と私が、第6の大量絶滅を回避し、気候変動を抑えるための道筋を同時に示しています。

急速な生物多様性の損失に歯止めをかけるため、まず地球の表面の少なくとも30%を直ちに保護し、さらに大気中から不釣り合いなほど大量の炭素を吸収できる生態系を含む20%を加える道筋を描いています。私たちは、生物多様性の損失と気候変動を、相互に結びついた解決策を要する一つの問題として捉え、対処すべきだと考えています。

Image: The Conversation

協定を結ぼう

私たちの「自然のための世界協定」は、国際的に蓄積が進む研究に基づいて陸と海をおよそ1,000の「生態地域」に区分した地図を土台としています。それぞれに固有の種と生態系の集まりがあり、気候変動の抑制において互いを補完する役割を果たします。

自然生態系は、変動の激しい株式市場における投資信託のようなものです。そこには、相互に作用する生物の網があり、自らを調整しています。たとえば熱帯林には多種多様な樹木が密集し、木材や土壌に蓄えられる炭素を最大化しています。

森林は、生物学的な反応の多様なポートフォリオを備え、共存する種同士が自ら管理しているため、自然災害や壊滅的な病害の発生にも耐えることができます。ありのままに機能できるようそっとしておけば、森林を崩壊させるのは容易ではありません。

人為的に作られた生態系は、自然の生態系の代わりにはなりません。たとえば、樹木のプランテーションは森林生態系ではなく、自然林よりはるかに少ない炭素しか蓄えない樹木の作物であり、はるかに多くの維持管理を必要とします。また、自然林に見られる複雑な生物多様性と比べれば、プランテーションはゴーストタウンのようなものです。

自然生態系のもう一つの重要な特徴は、互いにつながり、影響し合っていることです。「自然のための世界協定」の中心的存在であるサンゴ礁を考えてみましょう。サンゴ礁は炭素を蓄え、生物多様性の宝庫です。しかし、その価値はそれだけではありません。高潮から沿岸を守り、炭素の巨大な貯蔵庫であり、多くの種のすみかでもある内陸のマングローブや沿岸草原を支えています。一つの生態系が失われれば、ほかの生態系が危険にさらされる可能性は大きく高まります。つながりが重要なのです。

生物多様性を守るため、地球の広大な地域を保全するという考えは新しいものではありません。多くの著名な専門家が、生物多様性を守るために地球の表面の半分を保全区域にするという考えを支持してきました。「自然のための世界協定」は、取り組みを正しい方向に進めるために必要な保護の規模、場所、種類を明示することで、この考えを大きく前進させます。

パリ協定を土台に

私たちは、2015年のパリ協定につながった気候変動交渉と同様の計画策定プロセスで、各国政府が活用できる指針となるよう研究を設計しました。197か国が署名したパリ協定は、温室効果ガス排出削減の世界目標を定め、低所得国への資金援助のモデルを示すとともに、世界各地の地域社会や草の根の取り組みを支援しています。

しかし、パリ協定は地球上の生命の多様性を守るものではありません。それを補完する計画がなければ、進化し蓄積するまでに何百万年もかかった豊かな種の多様性を失うことになります。

実際、同僚たちと私は、生物多様性を同時に守らなければパリ協定の目標は達成できないと考えています。その理由は次のとおりです。温室効果ガスの排出を抑え、大気中からガスを除去する最も合理的で費用対効果の高い方法は、自然生態系に炭素を蓄えることです。

森林、草原、泥炭地、マングローブなど、いくつかの種類の生態系は、土地1エーカー当たりで最も多くの炭素を大気から吸収します。その生息域を保護し、広げることは、温暖化の進行を遅らせるために気候を工学的に操作するよりも、はるかに拡張性が高く、費用も抑えられます。そして、時間に余裕はありません。

費用に見合う価値

「自然のための世界協定」を実行に移すには何が必要でしょうか。陸と海の保護には費用がかかります。私たちの計画には、年間およそ1,000億米ドルの予算が必要です。大きな額に聞こえるかもしれませんが、比較すると、シリコンバレーの企業は2017年にアプリの販売だけで約600億ドルを稼ぎました。また、その費用を分担すれば、国際的に十分負担できる範囲です。しかし現在、地球の生物多様性を守るために世界社会が支出している額は、その10分の1にも満たしません。

各国には、進捗を評価・監視し、生物多様性を守る取り組みの効果を検証するための新技術も必要です。世界的な生物多様性監視システムに必要な要素の一部はすでに導入されており、たとえば森林やサンゴ礁のおおまかな位置を示す基本的な衛星があります。一方、地域規模でしか稼働していないものもあります。たとえば、動物と密猟者を検知する現地追跡システムや、航空機による生物多様性・炭素マッピング技術です。

しかし、地球規模では依然として重要な要素が欠けています。地球軌道上、高高度を飛ぶ航空機上、そして現地で対象の生態系や種を分析し、地球上の生命の状態がどう変化しているかをリアルタイムで把握する技術などです。幸い、こうした技術はすでに存在し、急速に規模を拡大して、世界初の自然監視プログラムを構築できる可能性があります。

技術は、この課題の中では取り組みやすい部分です。これほど幅広い目標に向けて人々の協力を組織することのほうが、はるかに困難です。しかし、地球の生物多様性の価値は、それを守るために必要な費用や努力をはるかに上回ると、私たちは考えています。

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