科学者らは、砂漠の生物クラストが乾燥気候の調節に、これまで知られていなかった役割を果たすことを発見した。
この「砂漠の生きた皮膚」には、さまざまな呼び名がある。公園や保護区域で「クリプトバイオティック土壌」を踏まないよう促す看板を見たことがあるかもしれないし、「生物クラスト」について読んだことがあるかもしれない。どちらも同じものを指す。コケ、地衣類、そして時にはシアノバクテリアがさまざまな割合で集まった群集であり、米国南西部やその他の乾燥地帯における人間と生態系の健康、そして気候にとって重要な存在だ。
研究を率いたアリゾナ大学自然資源・環境学部の博士課程学生、オースティン・ラザフォード氏によると、生物クラストには乾燥地だけでなく、人間の健康にも多くの恩恵がある。
「生物クラストは土壌を安定させて侵食を防ぎ、砂塵嵐の発生と影響を抑えます。砂塵嵐は人間の健康に関わる問題です。空気中の粒子が、喘息やその他の呼吸器疾患を抱える人々に影響を及ぼすからです」と同氏は語る。「気候変動によって、土壌表面を形づくるこうした生物の一部が失われつつあることが分かってきたいま、その喪失が将来の気候に深刻な影響を及ぼす可能性があると考える理由があります。」
新たな研究によると、乾燥・半乾燥地域の生態系では気温や降水パターンに大きな変化が予想され、それが土壌生物に影響し、地表の色を明るくして日光をより多く反射させる可能性がある。この研究は学術誌Scientific Reportsに掲載された。
この変化によって、より多くのエネルギーが大気中へ反射される。地球の陸地表面の40%以上を乾燥地が占めることを考えると、これは世界の気候を変えかねない。
「生物クラストへの気候変動の影響が、将来の気候にフィードバックする可能性があるという発見は、これまで考慮されていなかった重要な要因です」と、米国地質調査所に勤務中、このプロジェクトのデータ収集の大部分を担ったラザフォード氏は語る。「この情報は乾燥地の気候を理解するうえで重要な一歩であり、将来の全球気候モデルの開発に役立つ可能性があります。」
「アルベド」の測定
ラザフォード氏と同僚は、コロラド高原に屋外の試験区画を設け、広い区画にわたる生物クラストを、時間をかけてさまざまな温暖化・降水条件にさらした。
研究者らは生物クラストの反応を調べただけでなく、太陽から届くエネルギー量に対して、異なる生物クラスト群集が大気中へ反射するエネルギー量も測定した。この作用はアルベドと呼ばれる。
この研究は、生物クラストの被覆率、土壌水分、土壌被覆面の粗さなど、ほかの特性との関連で、小規模な範囲のアルベドを定量化した初めての研究だ。
「リモートセンシングデータを使って広大な地域を調べたこれまでの研究とは異なり、私たちは小規模な範囲に焦点を絞り、アルベドの変化に影響している可能性のある、より細かなプロセスを調べました」とラザフォード氏は説明する。
温暖化と散水の処理は生物クラスト群集に大きな影響を与え、暗色の群集を明るい色の群集へと変化させた。その結果、以前は暗い表面に吸収されていたエネルギーが大気中へ反射されるようになった。これらの要因によってアルベドは大幅に上昇した。地球の温暖化の進行を遅らせ、将来の気候に影響を及ぼす、これまで特定されていなかった作用である可能性がある。
足元に注意
生物クラストを構成するコケや地衣類が、色の明るいシアノバクテリアに置き換わることは、土壌侵食の増加、土壌肥沃度の低下、温室効果ガスである二酸化炭素の大気中からの除去量の減少につながる可能性もある。
「乾燥地では太陽からのエネルギー入力が多く、曇りの日が少ないため、アルベドのわずかな変化でも、たとえば北方林や温帯林と比べて、地球全体のエネルギーバランスにずっと大きな影響を及ぼす可能性があると言えます」とラザフォード氏は語る。
人間のさまざまな活動は、意図せず生物クラストに害を及ぼすことがある。家畜や人の足跡、車両の轍による圧縮の負荷に、生物クラストは太刀打ちできない。
「私たちの研究は、人間活動の影響が土壌の安定性や肥沃度だけでなく、地球と大気の間でエネルギーが交換される仕組みも変えうることを示しています」とラザフォード氏は語る。
出典:アリゾナ大学および米国地質調査所
原著論文 DOI:10.1038/srep44188




