気候危機からの脱却を加速させる「ポジティブな転換点」とは?

Concept of renewable energy storage at bright clean blue sky environment. Modern black photovoltacis, modular battery energy storage system and a wind turbine system in the background. 3d rendering: We need to accelerate the change we need to reverse adverse climate change effects through positive tipping points.
Positive tipping points ... Decarbonizing the economy starts with self-propelling exponential change, says climate scientist Tim Lenton.Image: Getty Images/iStockphoto
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  • 気候変動を突然悪化させる危険な現象、「気候の転換点」については、おそらく耳にしたことがあるでしょう。しかし、その逆を助ける「ポジティブな転換点」もあることをご存じでしょうか。

  • 英国エクセター大学の気候変動・地球システム科学教授、ティム・レントンは、これこそが気候「悲観論」に立ち向かう方法だと語ります。

  • ポッドキャストを聴くにはこちら、ポッドキャストアプリからはこのリンクまたはYouTubeをご利用ください。

「気候破局という見方は、私たちから力を奪い、恐怖だけでなく状況の複雑さによっても身動きが取れなくなります。」

ティム・レントンは、特定の技術の指数関数的な成長など、ポジティブな転換点を人類が活用すれば「窮地からの脱却を加速できる」と考える気候科学者の一人です。

英国エクセター大学教授のレントンは、温室効果ガス排出を止めるという課題がいかに大きいかを明確に認識しています。氷床の融解や永久凍土の融解など、気候変動を突然加速させかねない破局的な転換点に直面しているからです。「経済の脱炭素化を少なくとも5倍の速さで進める必要があります」と、Radio Davosのポッドキャストで語っています。

「そして今、それを実現する信頼できる唯一の方法は、自律的に進む指数関数的な変化です。私が『ポジティブな転換点』と呼んでいるものです。」

しかし、ポジティブな転換点は遠い夢物語ではないとレントンは言います。「進展が非常に遅く見えるかもしれません。しかし、指数関数的な変化の法則と、行動が倍増し、さらに倍増していくことを理解すれば、窮地から脱するために加速できる可能性は十分にあります。」

インタビューの主な内容をご紹介します。

楽観できる根拠

ティム・レントン:有害で危険な気候の転換点を回避するため、温室効果ガス排出の実質ゼロに向けた行動を加速させるポジティブな転換点を見つけ、引き起こすことが急務だと考え、取り組んできました。

気候破局という見方から離れることが欠かせません。それは私たちから力を奪い、恐怖だけでなく状況の複雑さによっても身動きが取れなくなるからです。

その代わりに、地球の美しく複雑なシステム、そして私たちの社会や経済と協力し、気候・生態系の危機の最悪の事態を避けるために、切実に必要な変化を加速できると知ることが本当に重要です。

気候変動への行動を加速させることは、極めて急務だと感じています。一方で、それが可能だとも分かっています。だからこそ、根拠のない楽観ではなく、私が「希望を持つに足る現実的な根拠」と呼ぶものを得られるのです。

大きな波及効果をもたらす転換点

ティム・レントン:電気自動車の普及という大きな転換点が起きると、生産台数が増えるほど、いわゆる規模の経済によってバッテリーがどんどん安くなります。例えば、やかんで湯を沸かすとき、いつも太陽が照っていたり、風が吹いていたりするとは限りません。だから、安価な電力貯蔵が必要です。安価なバッテリーは、その非常に重要な手段です。

この二つの転換点は互いを強め合っています。これは、分野をまたいで物事が相互に結びつき、強化し合う一例にすぎません。ここから、政策立案者は、ある分野だけに転換を促すのではなく、他の分野にも影響を及ぼすと分かったうえで政策を設計できる、という考え方が生まれます。

そこで私は、私たちが「大きな波及効果をもたらす介入点」と呼ぶ考えに至りました。経済の一部分を変えるだけでなく、経済の他の分野にも広がる変化を生み出すために介入できる点です。

[中略]「では、次に転換するのはどの分野だろう」と疑問に思うかもしれません。

グリーンアンモニアとは、空気から分離した窒素と、再生可能電力を使う電気分解という工程で水分子から分離した水素を組み合わせて製造するアンモニアです。つまり、炭素を排出しないアンモニアを生産できます。アンモニアは肥料に欠かせませんが、エネルギー運搬媒体や燃料としても可能性があり、例えば大型の外航船の燃料にもなり得ます。

[中略]これは、分野をまたぐ転換点の連鎖とも呼べるもので、すべてはグリーンアンモニアの生産を促す、私が「大きな波及効果をもたらす介入点」と呼ぶものから始まります。例えば、各国政府に対し、自国や市場で使われる肥料に一定量のグリーンアンモニアを含める義務を設けるよう促すことで実現できるでしょう。

3つの好ましい転換点が気候を安定させる可能性
3つの好ましい転換点が気候を安定させる可能性
03:25

進展を加速する

ティム・レントン:気候科学者として、化石燃料の燃焼をできるだけ早く止め、温室効果ガスのいわゆる累積排出量を抑えなければならないことは、まったく明らかです。

その取り組みの進み方が十分に速くないことも、まったく明らかです。経済の脱炭素化を少なくとも5倍の速さで進める必要があります。そして今、それを実現する信頼できる唯一の方法は、自律的に進む指数関数的な変化です。私が「ポジティブな転換点」と呼んでいるものです。

それらの転換点について、また、何がより早く引き起こすのかを研究する動機は、ほかの選択肢では気候の転換点がもたらすことになる存亡の危機を避けることです。それは私や私の子どもたち、あなたの子どもたちや孫たち、そしてこれからのすべての世代にとっての危機です。

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