再生可能エネルギー証書は、企業のエネルギー利用を「グリーン化」する手段になりすぎています。
24時間365日のクリーンエネルギー、つまり昼夜を問わずクリーンエネルギーを確保する方法が、その解決策となり得ます。
その仕組みと、メリットや課題を紹介します。
COP26以降、事業の脱炭素化を求める圧力はさらに高まり、100%再生可能エネルギーを利用していると主張する企業も増えています。しかし、「グリーンウォッシング」という言葉も広まりつつあります。この文脈では、主に再生可能エネルギー証書(REC)を通じて、化石燃料で発電した電力をクリーンに見せる表示を指します。RECはクリーンエネルギー発電を支援する第一歩ではありますが、実際には利用電力の一部が化石燃料で発電されていても、企業が再生可能エネルギーを100%利用していると主張できてしまいます。グリーンウォッシングのリスクを克服するため、一部の企業は「24時間365日のクリーンエネルギー」とも呼ばれる、昼夜を問わないカーボンフリーエネルギーの利用を約束しています。
24時間365日のクリーンエネルギーとは?
24時間365日のクリーンエネルギーは、電力の需給不一致、それに伴う送電網の混雑、そして避けがたいCO2排出(特に、石炭、石油、ガスなどの化石燃料がピーク需要を賄うことで生じるもの)を解消します。電力消費量とカーボンフリーの発電量を、同じ地域・ローカルの送電網に接続する電源から、1時間単位で一致させます。その結果、24時間365日のクリーンエネルギーは、(主にRECによる)エネルギー排出量のオフセットから、時間・場所を追跡したエネルギー調達へと移行し、リアルタイムで地域に根差した効果を最大化します。24時間365日のエネルギーの基本は、再生可能エネルギーでは、どこで、いつ消費するかが本当に重要だと認識することです。そして、その課題に対処する仕組みを整えます。

企業を支援する取り組み
24時間365日のクリーンエネルギーへの移行を加速させることを目指す取り組みが複数あります。世界の100社を超える企業が、テクノロジー大手や、Statkraft、Vattenfallなどのエネルギー企業を含め、EnergyTagの取り組みに参加しています。提携を通じて、GoogleとMicrosoftは、1時間ごとのエネルギー監視と、自社のクリーンエネルギー・ポートフォリオに含まれるカーボンフリー電源との照合により、データセンターの持続可能性を高めてきました。たとえば、Googleの時間ベースのエネルギー属性証書(T-EAC)により、データセンターは1時間単位で90%カーボンフリーとなり、2020年の61%から向上しました。目標は、2030年までに24時間365日、クリーンエネルギーを100%利用することです。デモインなどの都市も同様の取り組みを進めています。機運が高まるにつれ、さらに多くの都市や企業が、昼夜を問わないクリーンエネルギー計画に加わることが期待されます。
メリット:
1. 炭素排出量を効果的に削減、またはゼロにできる電力消費に伴う炭素排出量を削減、またはなくすため、1時間ごとの電力消費量をクリーンエネルギー発電量と一致させます。これにより、エネルギー消費が最も「汚い」時間帯に対処し、排出削減を最大化します。
2. 24時間365日のクリーンエネルギーを実現する仕組みや技術の開発を促す。企業が時間単位のクリーンエネルギーを重視すれば、その実現を支える仕組み、基準、技術(リアルタイムのエネルギー監視、エネルギー貯蔵、きめ細かなクリーンエネルギーなど)が構築されます。
3. クリーンエネルギー資産へのさらなる投資を後押しする電力網において、再生可能エネルギーが脱炭素化により大きな効果をもたらす地域で、供給事業者が常に再生可能エネルギーを利用可能にするためのインセンティブを提供します。
4. 市場リスクを軽減し、ESGスコアを高める。需要と供給を1時間単位で一致させることで、企業は再生可能エネルギーの消費に関する主張が事実に基づくと示すことができ、グリーンウォッシングとの批判を受けるリスクを最小限に抑えます。ESGスコアが高まれば、投資ポートフォリオのグリーン化を求める金融市場で、より低コストの資金調達も可能になります。
想定される課題:
1. 消費量の照合とトレーサビリティの複雑さ:企業は、エネルギー利用を「クリーン」にするため、再生可能エネルギー証書を調達することがあります。しかし、それによって事業に必要な電力の100%が再生可能エネルギーで賄われるとは限りません。消費パターンはしばしば、再生可能エネルギーの発電プロファイルと完全には一致せず、供給が少ない時間帯には非再生可能エネルギーを消費することになります。現在、時間単位のクリーンエネルギー消費量と需要を、リアルタイムの発電量に照合する標準化されたシステムは存在しません。
2. 複数技術を組み合わせた、ハイブリッド型のインテリジェント電力システムの拡大:24時間365日のクリーンエネルギーは、複数の技術を組み合わせた複雑な再生可能エネルギーのハイブリッドシステムに依存しています。発電資産と蓄電技術をつなぎ、需要負荷に1時間単位で常に対応させるものです。ほとんどの技術はまだ大規模展開が可能ではありませんが、人工知能(AI)やIoTの活用により、クリーンエネルギーの需給を効果的に管理する進展が見られます。
3. 24時間365日のクリーンエネルギーを取引する市場メカニズムの不足:現在、再生可能エネルギー資産は、強い風や日差しが得られる地域に集積する傾向があり、偏在しています。再生可能エネルギー資産、ひいてはクリーンエネルギーの供給は地域に根差していないため、再生可能エネルギーの電力購入契約(PPA)に頼ることになります。しかし、こうした契約では昼夜を問わずクリーンエネルギーを利用できるとは限りません。たとえば、風力発電のPPAで買い手にクリーンエネルギーを供給できるのは、時間の70%にすぎない場合があります。そのため、新たな地域への再生可能エネルギー設備の導入を促し、クリーンエネルギー供給の地域性を高める補完的な市場メカニズムが必要です。再生可能エネルギー資産を広く分散させれば、24時間365日のクリーンエネルギー供給へのアクセスと柔軟性が高まり、消費者が化石燃料を使うことを抑制できます。
テクノロジーができること
エネルギー調達と照合したカーボンフリーエネルギーの消費プロセスは、いくつかの技術的な解決策で簡素化できます。
1. 人工知能とモノのインターネット(AIoT)による監視・分析:AIoTによる監視では、資産からデータを収集し、組織のエネルギー使用状況をリアルタイムで把握できます。発電資産と連携させることで、AIは柔軟な需要、電力予測、エネルギー貯蔵などを通じ、電力消費と発電量が1時間単位で一致するよう最適化できます。これにより、組織は再生可能エネルギーの消費割合を把握し、改善すべき分野を特定できるため、エネルギー調達を最適化し、24時間365日のカーボンフリー消費を実現できます。
2. エネルギー取引プラットフォーム:24時間365日のカーボンフリーエネルギーには、時間ベースのエネルギー属性証書など、再生可能エネルギー関連の証書を的を絞って購入することが欠かせません。取引プラットフォームは、市場と上流の再生可能エネルギー資源をつなぎ、こうした証書へのアクセスを促進できます。これにより、認証済みの再生可能エネルギー資産の利用可能性が高まり、再生可能エネルギー(RE)の由来の追跡可能性が向上します。こうしたプラットフォームは、24時間365日のクリーンエネルギーを支えるために必要な取引の量、速度、多様性を支えるうえで、大きな役割を果たします。
3. エネルギー貯蔵システム:再生可能エネルギーの出力変動への対応に不可欠です。発電量がピークに達する時間帯の余剰クリーンエネルギーを貯蔵し、需要が高まる時間帯に消費者へ供給できます。エネルギー貯蔵は送電網への負荷を軽減するだけでなく、電力市場(デマンドレスポンス、アンシラリーサービスなど)への参加を可能にし、投資回収を早めます。
24時間365日のカーボンフリー電力を実現すれば、送電網の脱炭素化を加速させ、気候変動対策として排出量を削減するなど、大きなメリットが得られます。一方で、再生可能エネルギー資産の出力変動を理解して抑えることから、24時間365日のクリーンエネルギーを支える新興市場の開発まで、課題も伴います。収益力の高いテクノロジー複合企業は、世界各地の再生可能エネルギー資産を確保し、自社消費向けに昼夜を問わずクリーンエネルギーを確保できますが、すべての企業に同様の資源があるわけではありません。AIoT技術は、リアルタイムのクリーンエネルギーを追跡、検証、購入する機能を活用して、24時間365日のクリーンエネルギーのコスト削減に役立ちます。また、企業が排出量を透明かつ効果的に報告することも支援します。現在の脱炭素化の約束がパリ協定の1.5°C目標に届いていない今、世界には24時間365日のクリーンエネルギーが必要です。




