米国では2022年夏に多くの異常気象が発生した。
モンタナ州では記録的な洪水が起き、カリフォルニア州では記録破りの熱波が襲い、南西部では山火事が広がった。
最新の研究によると、こうした災害は気候変動によって規模と強度を増している。
温室効果ガス排出を抑えるための真剣な取り組みがなければ、この夏の出来事が「新たな異常」になる可能性があると、専門家は指摘する。
2022年の夏は、モンタナ州で起きた歴史的な洪水で幕を開けた。大雨と雪解けが引き起こしたこの洪水は道路を寸断し、イエローストーン国立公園の広い範囲で避難を余儀なくした。
夏の終わりには、カリフォルニア州と西部の大部分を記録破りの熱波が襲い、電力網は限界に追い込まれ、停電が発生した。その後、熱帯暴風雨が南カリフォルニアで降雨記録を更新した。台風が洪水をもたらしたアラスカ沿岸部に続き、ハリケーンがプエルトリコを襲い、30インチを超える雨を降らせた。
その間、カリフォルニア州、アリゾナ州、ニューメキシコ州では、米国南西部の大干ばつを背景に山火事が猛威を振るった。この干ばつは、少なくとも過去1,200年間にこの地域が経験したどの干ばつよりも深刻だ。ニューメキシコ州アルバカーキ近郊では、リオグランデ川が干上がり、40年ぶりの事態となった。全米各地では長引く熱波が続き、気温記録を更新した。
同じ時期の7月から8月にかけての5週間に、「1,000年に一度」とされる豪雨が5回発生した。場所は、セントルイス、ケンタッキー州東部、イリノイ州南部、カリフォルニア州のデスバレー、そしてダラスで、壊滅的な、時には死者を出す鉄砲水が発生した。極端な豪雨は、ミシシッピ州、バージニア州、ウェストバージニア州でも深刻な洪水を引き起こした。
気候災害に見舞われているのは米国だけではない。
パキスタンでは、記録的なモンスーンの雨で国土の3分の1以上が浸水し、1,500人を超える人々が亡くなった。インドと中国では、長引く熱波と干ばつで河川が干上がり、電力網が混乱し、数十億人の食料安全保障が脅かされた。
欧州では、熱波が記録的な気温をもたらし、英国などで記録を更新した。その結果、大陸の多くの地域で深刻な干ばつや山火事が発生した。南アフリカでは、豪雨による洪水や土砂崩れで400人以上が亡くなった。暦の上では夏が終わったかもしれないが、気候災害はこれからも続くに違いない。
これは単なる異常な夏ではない。こうした極端な現象は、年を追うごとに頻度と強度を増している。
気候変動が災害を激化させている
国連気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の最新の国際的な気候評価は、極端な高温や降水の現象について、頻度と強度の双方が大幅に増しており、干ばつや洪水がさらに増えていると報告した。
科学誌Natureに掲載された最近の研究によると、極端な洪水や干ばつは、気候リスクへの対応能力が向上しているにもかかわらず、命を奪う危険性と経済的損失を増している。気候変動によって激化したこうした極端現象が、リスク管理策で想定された水準をしばしば上回るためだ。
定義上、極端現象はまれにしか起きない。100年に一度の洪水が任意の年に発生する確率は1%だ。こうした現象の頻度と強度が増しているなら、それは気候の状態が変化している明確な兆候である。
「地球温暖化」という言葉は、誤解を招くことがある。人間が大気中に熱を閉じ込める温室効果ガスを増やせば、世界のあらゆる場所が少しずつ暖かくなるだけだと思わせるからだ。この言葉では、気温上昇がより激しい世界をもたらし、気候災害をさらに極端化させることが伝わらない。まさにこの夏に見られたとおりだ。
気候モデルはこうしたリスクを予測していた
こうした現象の多くはよく理解されており、気候モデルでも一貫して再現されている。
気候が温暖化すると、気温分布が変化して極端な現象が増える。極端な気温の変化幅は、平均気温の変化幅より大きいことが多い。例えば、世界全体では、年平均気温が1℃上昇すると、年間最高気温は1.2℃から1.9℃(華氏2.1度から3.4度)上昇する。
さらに、地球温暖化は大気の鉛直構造と赤道から極にかけての温度勾配を変え、大気や海洋の動きにも変化をもたらす。赤道と極の温度差が、地球規模の風を生み出す原動力だ。極域は赤道よりはるかに速いペースで温暖化しているため、温度差が縮小し、地球規模の風が弱まる。その結果、ジェット気流の蛇行が強まる。
こうした変化の一部は、持続的な高気圧や大気のブロッキングなどを生み、より頻繁で強力な熱波が起きやすい状況をつくる。ヒートドームはその一例で、6月には南部平原と南部を、9月には西部を覆った。
初期の温暖化は、正のフィードバックによってさらに増幅されることがある。例えば、温暖化で雪解けが進むと、その下の暗い土壌が露出する。土壌は雪より多くの熱を吸収するため、温暖化がさらに進む。
大気の温暖化は、強力な温室効果ガスである水蒸気を大気が蓄えられる量も増やす。そのため、空気中の水蒸気が増えると、温暖化がさらに進む。気温が高いと土壌は乾燥しやすく、土壌水分が減ると地表の熱容量が低下して、地表はより暖まりやすくなる。
こうした正のフィードバックは初期の温暖化をさらに強め、極端な高温を増やす。熱波の頻度が増し、長引くと、過剰な蒸発が起きる。地域によって降水量も減少するため、干ばつがさらに深刻化し、山火事も増える。
気温が高くなると、大気が水分を蓄えられる量が増える。その割合は、気温が1℃上がるごとに約7%だ。
湿度が高まると、より激しい豪雨が発生する。さらに、嵐は潜熱をエネルギー源とする。潜熱とは、水蒸気が液体の水に凝結する際に放出される大量のエネルギーだ。大気中の水分量が増えると、嵐の中で潜熱が強まり、嵐の勢力が増す。極端に激しい、あるいは長く続く豪雨は、洪水や地滑りを増やし、社会と経済に壊滅的な影響をもたらす。
個々の異常現象を気候変動に直接結び付けるのは難しい。それでも、温暖化する世界で、まれなはずの現象が頻繁に起きるようになれば、気候の状態が変化していることを無視するのは難しい。
新たな異常
極端な気候現象が増えるなか、この夏は近い将来を垣間見せたのかもしれない。
とはいえ、これを新たな「正常」と呼ぶのは誤解を招く。新たな安定状態に達したかのような印象を与えるが、実際はまったく違う。
温室効果ガス排出を抑えるための真剣な取り組みがなければ、極端な現象が増える傾向は続く。状況は悪化し続け、数年後、あるいは数十年後にはこの夏が当たり前になり、やがては、懐かしさとともに振り返る「過ごしやすい夏」のように、穏やかに思えるようになるだろう。







