世界の沿岸都市が水没の危機に。各地で始まる反撃の取り組み

A driver pulls his broken down vehicle in knee deep water caused by heavy rainfall in Dhaka, 2010.
Sea-level rises are inevitable – and cities must prepare.Image: Reuters
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警告の兆候は、ますます無視できなくなっている。海面上昇は現実に起きており、数千人を移住させ、数百万エーカーの土地を破壊し、数十億ドルの損失をもたらしている。将来の世界の気温について予測が分かれているため、海面がどれほどの速さで、どこまで上昇するかを科学者は正確には把握できていない。しかし、影響の主な内容については、見解が一致している。沿岸地域の水没や浸水、地表水や地下水への海水の浸入、浸食の進行、そして圧倒的に深刻な社会的・経済的な影響である。こうした影響は広範囲に及び、時間とともに加速すると、科学者たちは強く指摘している。

気温上昇、海面上昇

控えめな科学的コンセンサスによれば、世界の気温が1.5°C上昇すると、2100年までに世界の海面は1.7~3.2フィート上昇する。各国が協力して世界の気温上昇を2°C未満に抑えられたとしても、2050年までに少なくとも570都市と約8億人が、海面上昇や高潮にさらされる。危険にさらされるのは人々や不動産だけではない。道路、鉄道、港湾、海底インターネットケーブル、農地、下水道や飲料水のパイプラインと貯水池、さらには大量輸送システムも危機に瀕している。沿岸の都市や国の一部が文字どおり消滅する一方、その他の地域は適応する必要がある。しかも迅速に。

相当数の沿岸都市は、海面上昇への十分な備えがまだできていない。これは危険な状況だ。世界経済フォーラムの『グローバルリスク報告書2019』が示すように、沿岸地域の約90%が程度の差こそあれ影響を受ける。一部の都市では、海面上昇が世界平均を最大30%上回る。さらに、海水が入り込むのと同時に、広がり続ける都市そのものも沈下している。都市の成長に伴う重量に加え、住民が地下水をくみ上げていることが原因だ。人口960万人のジャカルタの一部地域では、10年足らずで地盤が2.5メートル沈下した。同時に、過去30年間で海面は10フィート上昇している。

海面上昇はすべての沿岸都市に影響を及ぼすが、被害の大きさは都市によって大きく異なる。特に深刻な影響を受けるのはアジアの都市だ。2050年までに海面上昇の影響を受ける人々のうち、5人に4人近くが東アジアまたは東南アジアに暮らすことになる。米国の都市も、特に東海岸やメキシコ湾岸では同様に脆弱だ。米国の沿岸都市90以上では、すでに慢性的な浸水が起きており、その数は2030年までに倍増すると予測されている。一方、欧州の全都市の約4分の3が海面上昇の影響を受ける見込みで、特にオランダ、スペイン、イタリアで深刻だ。アフリカも非常に大きな脅威にさらされている。沿岸都市の急速な都市化と、貧困層が沿岸の非正規居住地に密集していることが要因だ。これからの数十年は、消滅する都市と気候難民の増加が特徴となるだろう。

いわゆる「デルタ都市」は、すでに海面上昇の影響を最も強く受けている。ダッカ、広州、ホーチミン市、香港、マニラ、メルボルン、マイアミ、ニューオーリンズ、ニューヨーク、ロッテルダム、東京、ベネチアなどのデルタ地帯には、3億4,000万人以上が暮らす。数世紀で状況は大きく変わるものだ。過去数千年にわたり、南北アメリカ、欧州、アジアの48の主要な沿岸デルタは、海へのアクセスと肥沃な農地に恵まれ、都市が繁栄する理想的な場所となってきた。ナイル川、インダス川、ガンジス川、ブラマプトラ川、長江が大文明の発祥地となったのもそのためだ。しかし、沿岸での暮らしは負担になりつつある。海面上昇による損害額は、年間数兆ドルに達する可能性がある。

海面上昇への解決策を探る

海面上昇という課題に本腰を入れて取り組む都市が増えている。多くの都市にとって、文字どおり選択の余地はない。排出削減によって炭素排出量を抑えるとともに、国や都市は主に3つの方法で対策を進めている。第一に、防潮堤、高潮防護施設、排水ポンプ、放水路などの土木工事で水の侵入を防ぐ。第二に、土地の回復やマングローブ林・湿地の再生を含む環境面の対策を取り入れ、洪水の浸水に対処する。第三に、都市設計やレジリエンスの構築、ほかの選択肢をすべて尽くした後の移転など、人々を中心に据えた措置を講じる。

沿岸都市はゼロから始める必要がないという朗報がある。多くの都市には、豊富な知識と専門性が蓄積されている。海や水路に面する都市は何世紀にもわたり、地域ごとの海面変動や周期的な嵐に対処してきた。多くの沿岸都市は、3種類すべての対策を組み合わせ、何百年にもわたって試行錯誤してきた。しかし、過去の成功が将来の安全を必ずしも保証するわけではない。今日の都市は、以前の都市とは異なる。前例のない規模と複雑さを持つ都市も多い。さらに、海面上昇の速度は過去より速く、地域の対応能力を超えてしまう場合もある。

海を押しとどめる技術的解決策に巨額の投資を行う富裕な国や都市が増えている。防潮施設や防波堤を含む大規模インフラ計画が、少なくとも一時的に損失のリスクを軽減できるのは確かだ。しかし、コンクリートの壁やポンプシステムに頼り、高潮や高潮による増水、下流域の洪水を押し返す方法には限界がある。最も成功している都市から得られる教訓は、複数の対策を組み合わせることが不可欠だという点だ。さらに、既存の生態系が持つ防護機能を強化する環境に基づく解決策は、効果があるだけでなく、費用も抑えられる。こうした多角的な対策を先駆けてきた国の一つがオランダだ。

沿岸適応に取り組むオランダのモデル

オランダの沿岸都市は、継続する海面上昇に対処するため、3つのアプローチを組み合わせている。国土の4分の1以上が海面より低いため、先手を打つのは当然のことだ。国政府はすでに水管理の多くを地方に分権化しており、洪水対策は地域水管理委員会の責任となっている。公的機関はまた、全長3,700キロメートルに及ぶ堤防、ダム、防潮堤のネットワークなど、強固な防護施設も強化してきた。そこには有名なマースラント防潮水門も含まれる。海面下にある土地が90%を占めるロッテルダムを守るために建設されたこの水門は、横倒しにしたエッフェル塔2基分の大きさがある。

ロッテルダムのような都市は、海面上昇への対処法のモデルとなる。ロッテルダムは、水と共に生きることを学んだがゆえに、世界で最も安全なデルタ都市の一つとなった。この姿勢は、地元の商人や市の行政官が高水位を防ぐだけでなく排水を促すため、400メートルの堤を築いた13世紀にまでさかのぼる。水質改善とコレラの流行抑制を目的に、1850年代には新たな運河が造られた。1953年の壊滅的な洪水で1,800人以上が亡くなってから数十年後、マースラント防潮水門が建設された。現在、この水門は海上交通を妨げることなく、150万人の市民を洪水から守っている。

ロッテルダムの成功を支える重要な要素は、人々の意識だ。現市長のアフメド・アブタレブ氏によると、市民は「気候変動を脅威ではなく、都市をより強靭で魅力的にし、経済的にも強くする機会と捉えている」。市長の見方では、気候変動への適応は、インフラの改良、生物多様性の向上、市民が都市生活により深く関わるための好機だ。数年前、市はロッテルダムを2025年までに「気候変動に強い都市」にするための気候変動適応戦略を開始した。オランダ各地では、ロッテルダムのような都市が池やガレージ、公園、広場を一時的な貯水池に変えている。また、地域の再生と公平性の向上を進め、将来の水害に対する社会のレジリエンスを構築しようとしている。

海面上昇を緩和する中国の取り組み

中国の都市もまた、海面上昇の緩和と適応に向けて行動を起こしている。オランダと同様、中国の対策も一部は災害をきっかけに始まった。1998年、長江流域で洪水が発生し、約4,000人が亡くなった。過去10年間で市域が2倍以上に広がった北京など、多くの大都市でも洪水が増えている。現在、中国の主要654都市のうち約641都市が定期的な洪水の被害を受けており、特に沿岸部で深刻だ。中国政府は、強固な土木工事、環境対策、人々を中心とした施策を組み合わせ、数百万人の住民を移転させる対応も進めてきた。

2018年2月、インドネシア・ジャカルタで、浸水した通りを歩いて学校へ向かう学生。Image: ロイター/Beawiharta

2014年、中国は、いわゆる「スポンジシティ」構想を開始した。この言葉は、植え付けの時期の水需要を補うため、市当局が雨水の収集を始めたハイデラバードで生まれた。ベトナムのビンでも同様に、「都市をスポンジにする」戦略を採用し、脆弱な都市部で季節性洪水の影響を和らげている。中国のスポンジシティ戦略では、都市部の土地の80%で雨水の70%を吸収または再利用できるようにする。世界で最も洪水に見舞われやすい都市の一つ、上海を含め、現在30以上の都市がこの構想に参加している。中国は今後10年で、さらに少なくとも600都市が参加すると見込んでいる。

上海当局は、適応戦略に多大な期待を寄せている。それには十分な理由がある。2050年までに、同市では洪水や降雨が世界平均を20%上回ると予測されている。すでに毎年2~3回の台風に見舞われている。上海も地盤沈下が進んでいるが、ジャカルタほど速くはない。海面上昇への脆弱性を軽減するため、上海は杭州湾に沿って延び、崇明島、横沙島、長興島を囲む、全長520キロメートルの防潮堤を建設した。ロッテルダムと同様、上海も河川の氾濫を調節する大規模な機械式水門を設置している。

東南アジアと南太平洋での「闘うか、逃げるか」

東南アジアの都市では、海面上昇を防ぐ施設の建設が急ピッチで進んでいる。例えばジャカルタはオランダの支援を受けて巨大な防潮堤を建設中で、脅威にさらされた河岸や貯水池の周辺から40万人を移転させる計画だ。しかし批判する人々は、地盤沈下の原因となっている地下水の問題に、市が十分に対処できていないと懸念している。ジャカルタと同様の課題に直面するバンコクも、全長2,600キロメートルの運河網と、地下の貯水槽に400万リットルを排水できる中央公園を整備した。

タイの国会議員の中には、首都をさらに内陸へ移す計画的撤退しか前に進む道はないと考える人もいる。シンガポールもまた、埋め立てや堤防の整備など、多様な緩和策を沿岸地域の70%で進めている。

海面上昇への対応が最も劇的に進んでいるのは、最も差し迫った危険にさらされた地域だろう。キリバス、ツバル、マーシャル諸島、モルディブなどの小島嶼国は、文字どおり地図から消えかねない。キリバスは、必要になれば11万3,000人の国民を移住させるため、隣国フィジーで5,000エーカーの土地を購入する交渉を進めている。同国のウェブサイトは、国家として存続できる可能性は低いと認めている。マーシャル諸島も同様に厳しい選択を迫られている。島を離れるか、標高を上げるかだ。同国は、土地を造成し、海面上昇に耐えられる高さの島を建設する方法を探している。また、海面上昇の象徴的な存在であるモルディブは、埋め立てや補強、新たな島の建設を進め、必要に応じて移住することを目指している。

最後に、米国の都市も海面上昇への抵抗力を高めるため、数十億ドルを活発に投じている。ニューオーリンズでは、2005年にハリケーン・カトリーナで1,600人以上が死亡し、市域の80%が水没した後、ハリケーン・高潮被害リスク軽減システムを整備した。このシステムには、巨大な防潮水門、補強した堤防、洪水防護壁の一連の施設が含まれ、市の周囲約560キロメートルにわたって広がっている。また、排水ポンプや運河への依存を減らすため、公園、湿地、その他の既存の地形を活用した生きた水循環システムも整備した。これは米国史上最大級の公共事業であり、世界で最も費用のかかった洪水制御システムだ。ボストン、ヒューストン、マイアミ、ニューヨーク市をはじめ、数十の都市も規模は異なるものの、同様の取り組みを進めている。

アジアやアフリカから欧州、南北アメリカまで、海面上昇は避けられない。緩和策を拡大しなければならない。しかし、すでに世界各地の沿岸地域社会の存続を脅かしているからこそ、適応策も欠かせない。最低限、政府、企業、市民は状況を悪化させないようにする必要がある。危険な沿岸地域や氾濫原の用途地域規制を見直し、建築を減らすことが第一歩だ。『グローバルリスク報告書』が明らかにしているように、海面上昇に脆弱な人々を移転させる戦略を先回りして策定することも同じく重要だ。国や都市の間、またその内部で負担をどう分担するかも、難しい課題の一つである。海面上昇が続く中、新たな考え方、革新的な資金調達モデル、複数の利害関係者による連携が不可欠となる。

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