サステナビリティの財務的価値をめぐる議論は終わったのか?

People walk out of a building with greenery: A new report finds leaders can translate sustainability into a competitive edge
A new report finds environmental and social sustainability is associated with measurable financial performance gains.Image: Unsplash/Andrew Wang
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  • 640件の研究を包括的にレビューした結果、サステナビリティは収益性、企業価値、生産性など、財務パフォーマンスを大幅に向上させ得ることが分かった。

  • サステナビリティが利益をもたらすのは、適切に取り組んだ場合に限られる。実質的なインパクトを生み、環境・社会面の考慮事項を事業に組み込むことが必要だ。

  • 体系的なアプローチによって、政治・経済環境が不安定な状況でも、リーダーはサステナビリティを競争優位性へと転換できる。

企業のサステナビリティへの取り組みが複雑さを増し、厳しい目にさらされるなか、環境・社会面のサステナビリティについて説得力あるビジネス上の根拠を示すことが、かつてないほど急務となっている。経済の不安定さ、政治的な反発、投資家の高まる期待を受け、リーダーはサステナビリティを中核的な事業戦略のどこに位置付けるべきか、より厳しい問いを突き付けられている。

新たな研究『Project ROI: Determining the Competitive and Financial Advantages of Corporate Responsibility and Sustainability 2025』は、明快でエビデンスに基づく主張を示している。サステナビリティは、適切に実行すれば財務パフォーマンスを押し上げる。

この研究は、10年前に実施された当初の分析を更新し、学術界やシンクタンクによる主要な研究640件の知見を総合している。主に、過去10年間に従来型のビジネス分野の主要学術誌で発表された研究を対象としている。

この研究は、株価、売上成長、収益性、コスト、生産性など、中核的な事業指標に対するサステナビリティの影響を評価する。重要なのは、相関関係だけでなく、サステナビリティ施策がより優れた財務成果に因果的に寄与するかどうか、またどのように寄与するかも検証している点だ。

リーダー企業と後れを取る企業を分ける3つのステップ

主な調査結果は注目に値する。環境・社会面のサステナビリティは、測定可能な財務パフォーマンスの向上と関連しており、その幅は最大で次のとおりだ。

  • 財務評価額が36%上昇。

  • 収益性が21%向上。

  • 企業・消費者間(B2C)市場と企業間(B2B)市場で売上が20%増加。

  • 株価が6%上昇。

  • 生産性が21%向上。

  • 従業員離職率が57%低下。

ただし、こうした成果が得られるのは、サステナビリティを戦略的な事業能力として設計し、管理した場合に限られる。Project ROIによると、成果を上げている企業は一貫して、3つの中核的なステップを踏んでいる。

1. サステナビリティを直感的に納得できるものにする

サステナビリティから財務的価値を引き出す企業は、説得力のあるビジネスの物語から始める。懐疑的な見方は依然として広く、批判する人々はしばしば、サステナビリティを優位性の源泉ではなく、コストや規制上の負担として捉える。多くの経営幹部や投資家にとって、この主張はいまだ直感的に思える。

Project ROIは、それと同じくらい直感的な反論の筋道を示している。その核心にあるのは信頼だ。あなたなら、どちらの企業と取引したいだろうか。人々、地域社会、環境への影響に責任を負う企業か、それともそうでない企業か。

この研究によると、サステナビリティは顧客、投資家、従業員、質の高いサプライヤーとの信頼関係を築き、好感度を高めるのに役立つ。

重要なのは、この研究が、サステナビリティに関する意思決定は分析と同じくらい感情にも左右されると明らかにした点だ。リーダーは異なる視点からサステナビリティを捉える。これらは6つの「サステナビリティの類型」として説明され、短期的な利益からブランド、評判、リスク、イノベーションまで幅広い。

こうした類型を理解することは極めて重要だ。たとえば、ブランドや評判を重視するリーダーは、サステナビリティを顧客の信頼や製品の品質に結び付けるストーリーに、より強く反応する。パタゴニアはそのことを一貫して示してきた。

2. サステナビリティを中核的な事業上の意思決定に組み込む

次に、高い業績を上げる企業は、Project ROIが「適合、コミット、管理、連携」と表現する規律あるプロセスを通じて、サステナビリティを事業に整合させる。

適合

「適合」では、サステナビリティを中核的な事業戦略と業務に整合させる。重要なサステナビリティ課題の特定が出発点となるが、先進企業はさらに踏み込み、「サステナビリティ上の緊張関係」、すなわち財務、環境、社会の優先事項間の対立を特定する。

リーダーはこうした緊張関係を活用し、対立を競争優位性へと変える「好機」を見いだす。サーキュラーエコノミーはその分かりやすい例だ。

世界経済フォーラムとそのパートナーによると、自動車メーカーが循環型サプライチェーンを採用すれば、環境への影響を大幅に低減しながら、収益性を最大1.5倍に高められる可能性がある。

すぐに好機が見つからない場合、効果的なリーダーは、利益よりも人々や地球を優先するのが妥当なとき、利益を優先すべきとき、そして一時的に先送りした課題に近い将来どう対処するかを見極める。

コミット

「コミット」では、サステナビリティ関連の営業費用(OpEx)の大部分を、明確な財務価値の提案と業績目標を備えた統合戦略に振り向ける必要がある。Project ROIは、繰り返し成果を生み出す3つの中核的な価値提案を挙げている。

サステナビリティを付加価値として提供するとは、ブランドやビジネスモデルにサステナビリティを組み込むことを意味する。サステナビリティは顧客に対するブランドの約束の一部となる。たとえば、Hewlett-Packard EnterpriseはB2Bの営業活動や顧客との関係構築にサステナビリティを取り入れており、顧客との関係強化、新規事業の入札支援、人材の獲得・定着を通じて、サステナビリティが1会計年度にほぼ5億8,500万ドルの純売上高に貢献したと推計している。

効率化、廃棄物削減、最適な資本配分を通じて、サステナビリティをコスト削減に活用する。たとえば、Apollo Global Managementによると、炭素集約度を15%削減する目標を掲げた投資先企業は、4,400万ドルを超えるコスト削減と、リスク関連コスト5,200万ドルの回避を実現した。

環境・社会課題に対処する製品やサービスを開発し、サステナビリティ関連の製品・サービスを通じて成長する。たとえば、BASFは「Accelerator」製品から241億ユーロの売上を上げた。これらは、顧客のバリューチェーンにおいてサステナビリティに大きく貢献する製品・サービスだ。

管理

「管理」では、成果を厳密に測定するとともに、サステナビリティが企業の組織文化にもたらし得る緊張関係を解消するアプローチを設計する。サステナビリティを管理するには、曖昧さに対処する必要がある。

起業家的な文化は曖昧さを受け入れることが多い一方、従来型の文化はそれに苦慮する。成功企業は、バランスの取れた管理アプローチを見いだしている。

連携

「連携」では、主要な企業関係者や市民社会のステークホルダーの期待を理解し、サステナビリティ戦略をそれに合わせる。ステークホルダーの期待が高いサステナビリティ課題について、企業は先頭に立つことを目指すべきだ。また、認知を高め、ステークホルダーの協力者を増やす必要がある。

3. 効果を測定し、学び、拡大する

Project ROIの調査結果は、成果を厳密に測定し、得られた知見を継続的な改善へとつなげる基盤となる。たとえば、複数の企業がこのデータを使って効果を予測し、サステナビリティ施策による財務ROIが20~33%に達したと報告している。

この徹底した研究が示す結論は明らかだ。サステナビリティが事業価値を生むかどうかをめぐる議論は、ほぼ決着している。今後の優先課題は実行だ。サステナビリティを意図的に活用し、利益、人々、地球に大規模な価値をもたらすことである。

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