研究者らの報告によると、アジアの夏季モンスーンによる降雨量は過去80年間にわたって減少しており、この減少は過去448年間で前例がない。
モンスーンの近年80年間の減少は、第二次世界大戦後、中国や北半球のほかの地域で工業化が急速に進むなか、粒子状物質の排出が増加した時期と重なっている。
アジアの夏季モンスーンは、短期間の猛烈な雨が降る数か月間に大陸の降雨量の大半をもたらし、世界人口のほぼ半数に影響を及ぼす。ここ数十年、夏季の降雨量は減少しており、インドからシベリアまで、水の利用可能性、生態系、農業に影響が及んでいる。
研究チームによると、モンスーンは1940年代以降弱まり続けており、その結果、地域的な干ばつが起きている。
年輪の記録
モンスーンの強さや年間降水量に関する機器観測・観察記録は、さかのぼれる期間が約100年に限られる。研究者らは、樹木の年輪に蓄積された降水量の自然記録を用いて、アジアの夏季モンスーンを1566年までさかのぼって復元した。

「年ごとの明確な分解能があり、年輪の成長と降雨量が非常によく相関する地域から、約450年分の年輪データを収集できました」と、共著者であるスティーブン・リービット氏は述べる。同氏はアリゾナ大学年輪研究所の副所長で、年輪年代学の教授を務める。
この地域の年輪年代系列を調べた先行研究はあるものの、新たな研究は「対象期間の長さと使用した樹木の数という点で、それらを上回っています」と同氏は言う。

モンスーンが何十年にもわたって弱まった要因を探るため、研究チームは地球規模の気候コンピューターモデルを用いた。モデルによると、大気中の粒子状物質が増えるにつれて(20世紀初頭から中頃以降に起きている現象)、モンスーンによる降水量は減少する。
雨の多い年には樹木の年輪が厚くなる傾向があり、研究者は個々の層の厚さと密度を測定して降水量の記録を得ることができる。
「降水量の研究に年輪を用いる主な利点の一つは、年ごとの分解能と正確な年代特定です」とリービット氏は言う。
新たな研究では、中国中北部の黄土高原西部で研究者らが収集した10系列の年輪年代データを組み合わせ、過去448年間の降水量の傾向を追跡した。
降雨量の大幅な減少
年輪から、この地域では448年間に深刻な干ばつが何度も起きたことが示された。年輪が示す干ばつの時期は、中国の歴史記録にあるイナゴの大発生と一致していた。イナゴの大発生は干ばつの年に起きる傾向がある。
この研究では、降雨量が減少する80年間の傾向は、過去450年間で前例がないことが分かった。1566年から1940年代までは、降水量が断続的に減少する期間はより短かった。
科学者らは、太陽活動の変動、火山噴火、人為起源のエアロゾルなど、複数の要因がアジア夏季モンスーンの強さに影響すると考えている。
研究者らは気候コンピューターモデルを用い、霞の原因となる大気汚染物質、すなわち硫酸塩エアロゾルが、過去80年間におけるアジア夏季モンスーンの減少の主因である可能性が高いことを示した。
マサチューセッツ州にあるウッズホール海洋研究所の古気候学者リビウ・ジョサン氏は、世界の降水量の大部分をもたらす地球規模のモンスーンシステムについて、その過去と未来をより深く理解しようとする取り組みにおいて、この研究は重要なデータとなると述べる。同氏は今回の研究には参加していない。
「地域ごとの変動が非常に大きいため、モンスーンのモデル化や予測は非常に難しいことで知られています」と同氏は言う。
「未来についてさらに知るには、過去をより深く理解する必要があります」とジョサン氏は言う。「地域全体を対象とするこの種の研究が増えれば、アジア夏季モンスーンが大陸全体で総観的にどのように機能するのかを、より深く理解する助けになります。」
この論文はGeophysical Review Lettersに掲載されている。
ほかの共著者の所属先は、中国科学院地球環境研究所、青島海洋科学技術国家実験室、ジョージア工科大学、中国の西安交通大学、オーストラリア・ビクトリア州アスペンデールのCSIRO海洋大気研究所、スイス・ビルメンスドルフのスイス連邦森林・雪・景観研究所、ケンブリッジ大学、陝西省気象台、ヨーテボリ大学である。
この研究は、中国国家自然科学基金委員会と中国科学院の資金提供を受けた。




