産業クラスターはネットゼロの実現に不可欠。その理由とは

There is increased focus on achieving net-zero emissions from industrial clusters by deploying carbon capture and hydrogen technologies
There is increased focus on achieving net-zero emissions from industrial clusters by deploying carbon capture and hydrogen technologiesImage: David Wright / Creative Commons
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  • 産業クラスターとは、製造業の各業種が物理的に同じ場所に集まった、ひとつの都市のようなものだと考えてみてください。

  • 産業クラスターは欧州の排出量の20%を占めており、他の部門が先に脱炭素化すれば、その割合は上昇する可能性がある。

  • システム全体の効率化、クリーンな電化、水素、CCUSなど、さまざまな解決策によって産業クラスターをネットゼロへ導くことができる。

クリーンエネルギーへの移行において、産業クラスターは大きな役割を担う。では、産業クラスターとは何か。そして、どのように役立つのだろうか。

産業クラスターとは、セメント、鉄鋼、化学などの産業が物理的に同じ場所に集まったものだ。欧州には、このような産業クラスターが3,000か所ある。これらは5400万人の雇用を支えている。世界の主な例としては、ハンバー(英国)、名古屋(日本)、蘇州工業園区(中国)が挙げられる。

多くの国や地域が2050年を見据えた温室効果ガス(GHG)排出実質ゼロ目標を掲げるなか、産業排出の削減への注目が高まっている。こうしたクラスターの産業は化石燃料を大量に消費し、経済全体の中でも特に削減が難しい排出源となっている。現在、産業クラスターは欧州のGHG排出量のおよそ20%(輸送を除く)を占めるが、他の部門が先に脱炭素化すれば、その割合は排出量の過半数にまで高まる可能性がある。

では、クリーンエネルギーへの移行において、産業クラスターはどのような役割を果たせるのだろうか。答えは、クラスター内の企業同士が近接していることにある。産業間でエネルギー需要が大規模に集約されることで、システム全体の効率化、電化、需要の最適化、炭素回収・利用・貯留(CCUS)の機会が生まれるだけでなく、水素の域内市場も形成される。水素は、経済の中でも排出削減が特に難しい部門の脱炭素化に最も有望な技術だ。水素の生産と消費を同じ場所で行えば、長距離インフラへの投資は不要となる。

産業クラスターをひとつの都市のように考えてみよう

こうしたクラスターには都市と共通する特徴が多く、都市になぞらえて考えることで、脱炭素化のために活用できる手段が見えてくる。都市と同じように、システム全体の効率を高めるため、効率化と需要最適化の機会を探り、可能なものは電化することが重要だ。産業クラスターの場合、これは軽工業や中圧プロセスの電化を意味する。しかし、現時点ではそれだけでは限界がある。高温・高圧プロセスや重量貨物輸送は、容易には電化できない。ほかの解決策が必要になる場合があり、そこで水素が役立つ。

現在、水素の大半は石炭や天然ガスなどの化石燃料から製造されている(グレー水素)。一方、排出量を大幅に削減、またはゼロにできる別の水素製造方法も進展している。たとえば、風力や太陽光由来の電力を使った電気分解で水を水素と酸素に分解する方法や、原子力発電で水素を製造する方法(グリーン水素)がある。また、化石燃料を使った水素製造で発生するCO2を回収、利用、または貯留する方法もある(ブルー水素)。

たとえば、洋上風力で発電した電力を、海水の電気分解によって水素に変換し、既存のガスパイプラインで輸送できる。実証プロジェクトはすでに進行中だ。Shell、Gasunie、Groningen Seaportsは、共同で再生可能水素プロジェクトに取り組み、最大10 GWの洋上風力発電を活用して、2040年までにグリーン水素を年間80万トン生産することを目指している。

水素の導入と費用対効果の高い電化の機会を組み合わせることで、欧州の産業クラスターは炭素排出ゼロの未来への道筋を描ける。水素は次の用途に利用できる。

  • 産業:電化が難しい高圧・高熱を要する産業の原料として

  • 貯蔵:風力・太陽光の発電量が需要を上回るときの貯蔵手段として

  • モビリティ:長距離の陸上輸送や海運、航空向けの燃料を製造するため

  • 熱:長期・大規模な貯蔵を通じて、熱源として天然ガスを代替するため

異なる製造プロセスを同じ場所に集めることが、ネットゼロ排出の鍵となるImage: アクセンチュア

産業クラスターは真のチームスポーツ

ハンバーはイングランド北部に位置し、欧州各地で進むクラスター脱炭素化プロジェクトのひとつが行われている。現在、ハンバーは産業排出量で英国最大のクラスターであり、年間1,200万トンを超えるCO2を排出している。

目標は、2040年までにハンバー地域を英国初のネットゼロ炭素クラスターへと変革することだ。最善の戦略は、可能なものを電化し、効率化を進め、CCUSとブルー水素の取り組みを拡大することだろう。これにより、当初はブルー水素向けに整備された水素インフラを、グリーン水素にも活用できる。ハンバーは英国最大級の洋上風力発電所であるホーンシーとドッガーバンクの2か所に近いからだ。この産業クラスターでは、産業プロセスや発電所で化石燃料の代わりにブルー水素やグリーン水素を使うことで脱炭素化を進められる。

この取り組みは、まさにチームスポーツだ。バリューチェーン全体から支援者やパートナーが集まり、Associated British Ports、British Steel、Centrica Storage Limited、Drax、Equinor、Mitsubishi Power、National Grid Ventures、SSE Thermalなどが参加している。産業クラスターは産業の集積に関わるものであるため、社会的に不利な状況にある地域に立地することが多い。産業クラスターの脱炭素化は大きな雇用を生み出すと期待されており、ブルー水素とグリーン水素によって、欧州では2050年までに最大90万人の雇用が創出される可能性がある。

統合型エネルギーシステムに向けた新たなパートナーシップ

炭素排出ゼロへと進むなか、システム全体の効率化、クリーンな電化、水素を統合型エネルギーシステムに組み合わせることが、解決策の一部となる。欧州には、水素を活用する大きな可能性がある。たとえば、2050年までに産業のエネルギー需要の80%をグリーン水素で賄う場合、推定で水素4,500万トンと、それに関連する風力・太陽光発電設備400 GW超が必要となる。

これを実現するには、産業企業がクラスターに不可欠な存在となるなかで、業界を越えた連携とエコシステムが必要だ。産業クラスターは、脱炭素化を進め、支援が行き届いていない地域に新たな雇用を生み出し、大気の質や健康の改善といった重要な便益をもたらす方法となる。ネットゼロの未来を見据え、エネルギー移行に不可欠なこの取り組みをめぐる協働を支援できることをうれしく思う。

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