インド経済は自然に大きく依存しており、気候リスクに対して極めて脆弱です。
その結果、今世紀末までに同国の国民所得が10%以上失われ、5,000万人が再び貧困に陥る可能性があります。
世界経済フォーラムの報告書は、インドの大企業が自然を活用した気候変動対策にさらに投資すべき理由を探っています。
インド経済は自然に大きく依存しており、気候リスクに対して極めて脆弱です。GDPの3分の1は、自然に大きく依存する産業によって生み出されています。調査によると、気候危機によって同国は2100年までに国民所得の6.4%から10%超を失い、さらに5,000万人が再び貧困に陥る可能性があります。
こうした背景のもと、世界経済フォーラムがインド最大手企業を対象に実施した新たな調査は、各社が持続可能性と自然を活用した気候変動対策(NCS)に強く取り組んでいることを示しています。NCSは、陸域、淡水、沿岸、海洋の生態系を保護、保全、回復し、持続可能な形で管理することを目指します。
しかし、「インドにおける自然を活用した気候変動対策への民間投資の促進」(世界経済フォーラム、インド工業連盟、IORA Ecological Solutionsの共同執筆)は、投資規模が比較的小さいことも指摘しています。
インド経済は気候変動から深刻な影響を受ける
インド経済は世界で最も自然依存度の高い経済の一つです。GDPの約33%は、自然への依存度が高いと分類される産業で生み出されています。これには、林業、農業、漁業・養殖業、食品・飲料・たばこ、エネルギー・水道事業、建設業が含まれます。
これらの産業の多くは、海面上昇、氷河の後退、予測困難なモンスーンのパターンなど、気候変動の影響に直接さらされています。農業生産だけでも16%減少すると予測されており、2030年までにGDPが2.8%減少することに相当します。
一方、同じ産業は温室効果ガス排出の最大の要因でもあります。世界経済フォーラムの白書によると、エネルギー部門が70%弱を占め、次いで農業、林業、その他の土地利用が約6%を占めています。
インド企業は自然を活用した気候変動対策に取り組んでいる
インドは意欲的な2030年の温室効果ガス削減目標を掲げています。これには、2005年比で排出量を45%削減すること、発電容量の50%を非化石燃料由来とすること、樹木被覆を増やして炭素吸収源を5分の1拡大することが含まれます。しかし、2023年12月時点で、Climate Action Trackerはインドの目標達成に向けた取り組みを「極めて不十分」と評価しました。
世界経済フォーラムは、NCSを通じたインドの排出削減促進において、民間部門が果たし得る役割を調査しました。例えば、インドで2011年から2017年に実施された森林再生への投資の94%は、政府の介入によるものだったという調査結果を引用しています。これは、自然を活用した気候変動対策を実施するために、民間部門が政府やその他の関係者と協力する大きな機会があることを示しています。
インド最大手企業を対象とした調査に基づき、世界経済フォーラムは、民間部門の組織がこれらの目標達成に強く取り組んでいることを明らかにしました。10社中ほぼ9社(89%)が専用の持続可能性戦略を持ち、ほぼ半数がネットゼロ排出目標を掲げています。約70%が取り組みにNCSを組み込み、植林、再植林、草地・湿地・マングローブの回復、そして土壌構造の改善を目的とした農地管理に投資しています。
インドの2030年排出削減目標の達成には、自然を活用した気候変動対策への投資拡大が必要
調査対象企業の10社中8社超(86%)がNCSのビジネス上の意義を挙げ、3分の1超が排出削減を投資の動機として挙げた(39%)一方で、世界経済フォーラムは投資の大半が比較的小規模だと明らかにしました。
回答者の半数超は、自組織のNCS投資額が100万ドル未満だと答えました(57%)。さらに23%は、NCSプロジェクトに100万ドルから500万ドルを投じたと回答しました。
白書が引用する推計によると、インドは林業部門だけでも気候変動対策目標を達成するため、2030年までに年間90億ドル超を支出する必要があります。森林への公的支出は年間平均17億5,000万ドル(2012~2017年)であり、インドの気候目標達成には、民間部門やその他の関係者による一層の貢献が必要であることは明らかです。
企業のNCS投資を妨げている要因は何か?
NCS投資を増やす上での主な障壁を尋ねたところ、最も多く挙げられたのは、明確な規制枠組みの欠如、質の高いNCSプロジェクトの不足、投資収益の不確実性、資金や金銭的インセンティブへのアクセスの限界でした。
こうした障害への対処について、回答者はNCS投資を増やす要因として、次の点を挙げました。インド政府のグリーンクレジット制度に関するより明確な指針と、炭素クレジット政策です。企業の取り組みに影響するその他の要因には、劣化した土地の回復に向けた州政府との連携や、投資の仕組みの明確化がありました。さらに、長期的な持続可能性目標に沿ったプロジェクトであること、地域コミュニティと協力する機会、こうした取り組みのプラスの影響を示すことなども考慮されます。
白書は、気候危機と自然喪失への対処がインドにとって極めて重要だと結論づけ、同国で自然を活用した気候変動対策への投資拡大を促すため、官民が協力して障壁を取り除くよう呼びかけています。
インド工業連盟の副事務局長、シーマ・アローラ氏は次のように述べています。
「インドの企業が生物多様性の喪失、生態系の崩壊、天然資源の不足から生じる多面的な課題に立ち向かう準備を進めるなか、新たに生じるリスクに対処するには、自然を活用した気候変動対策への投資を拡大することが不可欠です。
「NCSへの投資がもたらす恩恵は、環境面の動機にとどまりません。NCSは気候リスクへの対処やレジリエンスの構築、企業戦略への持続可能性の組み込み、人々の幸福の支援にも役立ちます。
「行動を起こすべき時は今です。この白書は、企業が前進するための包括的な枠組みを示しています。」


