10年前、ロッテルダムの老朽化した都心部のゾマーホフクヴァルティール地区は再開発の対象とされていましたが、世界的な経済危機の影響でその計画は棚上げになりました。
しかし現在、「ZoHo(ゾーホー)」地区には若い起業家が集まり、花が咲き誇る雨庭があり、そしてこのオランダの港湾都市の他の中心部の地区と同様に、緑を重視する新たな機運が生まれています。
デザイン会社スタジオ・バス・サラを含む企業が協力し、この地区にある老朽化したオフィスビルを改修して、自社の仕事場としました。
さらに道路の向かい側では、地域住民と協力して、コンクリートの駐車場を、草地のような植物、樹木、ベンチのある公共の庭園に生まれ変わらせました。
この空間は、見た目の美しさや、地域住民が集まる場所を提供するという役割にとどまりません。雨を吸収するスポンジとして機能する庭園によって、周辺地域の洪水の防止にも役立っています。
「大雨になると道路が冠水して、緊急車両が入れなくなるという問題があります」と、デザイナーのバス・サラは語りました。
同社のスタジオは、ユニークなアイデアを考案しました。それは、この地区の愛称「ZoHo」の文字を形どった、背の高い黒い木製の文字の中に貯水システムを収めるというものです。
文字は公園の一端に置かれ、上空で蛇行する全長2km の使われなくなった鉄道高架橋から雨水を集めます。
雨天が近づいたときや庭が乾燥しているときには、文字の下の角にあるパイプがアプリで開かれ、水が勢いよく流れ出します。
ZoHo雨庭は、ロッテルダム各地で増えつつあるプロジェクトの一例です。ロッテルダムの約80%は海面より低い土地にあり、これらのプロジェクトは、気候変動による極端な気象から住民をより安全に守りながら、地域の結びつきを強めることを目指しています。

ウォータースクエア
北へ数分歩いたところにある「水の広場」ベンテムプレインは、2013年に完成し、同様の目標を掲げています。
市内に9つあるこの種の広場の第1号であり、学生、教会、ジム、オフィス、ユースシアターなど、周辺に住み、利用する人々と共同で設計されました。
中央部では、広い階段を下るとサッカーゴールとバスケットボールのリングがある一段低いスポーツエリアがあり、上段にはスケートボードエリア、小さな庭園、さらには洗礼式用の屋外ブロンズ製の洗礼盤もあります。
ロッテルダムの最高レジリエンス責任者であるアルノー・モレナール氏は、こうした広場は大雨による雨水の流出を集めることができ、余分な水の貯留や洪水の防止にとどまらない多くの役割を担っていると述べました。
「下水管を大きくする代わりに、より快適で、より良く、より魅力的な地区につながるように公共空間を再設計することに投資するという選択をしました」と、同氏はトムソン・ロイター財団に語りました。
これらの広場は、このオランダの都市が気候変動の影響に対するレジリエンスを構築するために採ってきた革新的な取り組みについて知りたいと関心を寄せる、80を超える海外の政府関係者団体を惹きつける役割も果たしてきました。
例えばインドのスーラト市は現在、独自のウォータースクエアの建設に取り組んでいます。
ベンテムプレイン広場を手がけた設計事務所「デ・ウルバニステン」の共同創設者で都市デザイナーのダーク・ファン・ペイペ氏は、この広場は「素晴らしい公共空間」であることに加え、最大8,500個分の浴槽に相当する雨水を下水道から遠ざけ、再利用できるようにする役割も果たしていると述べました。
周辺の建物の屋根から流れる水は、2つの小さな貯水池に流れ込み、その後地中に浸透して地下水位を補います。
ファン・ペイペ氏は、夏の雨が貯水池の表面にたまり始めた際には、中央の大きな貯水池にはポンプも備えられており、近くの運河へ水を移送できると述べました。

空中の農園
一方、市の中央駅から少し離れたオフィスビルの屋上では、地元の人々が市内で屈指の眺望を誇るおしゃれなビストロで昼食をとっています。
地上20メートル(65フィート)以上にあるダクアッカー都市農園では、ハーブ、野菜、果樹の間に野草が伸び伸びと育ち、鮮やかな色彩で陰鬱な都市の景観を明るくしています。
ひげを生やした共同創設者のエミール・ファン・リンスム氏は、最初の1年は土壌の層(基質と呼ばれます)に植物の栄養分が少なすぎたため、散々な結果だったと語りました。
しかし、基質を調整しハイテクな散水システムを導入した後、この1,000平方メートルの農園は、近隣のレストランに食用花を届ける小さなビジネスを確立しました。ファン・リンスム氏はこれを、ベジタリアン向けの「キャビア」と呼んでいます。
また、ミミズ養殖槽から蜂蜜や液体堆肥も生産しています。
農園に水を供給する「スマートフロー制御」システムは、気象予報技術と連携しており、12時間後に雨が降ることを把握すると、貯めていた水を下の土壌に放出して、さらに雨水を受け入れる空きを作ります。
ファン・リンスム氏は、アプリを通じて自宅からこのシステムを監視できます。
「これは大好評です」と同氏は語り、このシステムを製造するドイツの企業が、ここ数か月で18台を販売したことにも触れました。
ロッテルダム市の持続可能性部門で市の屋上開発プロジェクトを担当するポール・ファン・ローズマーレン氏は、緑化屋根には、建物内の3~6℃の冷却効果など、さまざまなメリットがあると述べました。
樹木や植物は、地球温暖化を招く排出物も吸収し、気候変動の抑制に役立ちます。

テクノロジーによる追跡
ロッテルダムには18.5平方キロメートルの平らな屋根があり、市は2030年までにそのうち1平方キロメートルを有効活用することを目標に掲げています。具体的には、植物や樹木で緑化し、太陽光パネルを設置し、レクリエーションや住宅としても利用する計画です。
進捗を監視するため、市は技術系スタートアップのソボルトと協力しています。同社は、航空写真、衛星画像、人工知能ベースの技術を用いて、緑化屋根の表面積をより正確に分析できます。
この技術を用いて、市は、これまでに数えていた25万平方メートルではなく、すでに36万平方メートルの緑化屋根があることを発見しました。
同じ技術は屋根に設置された太陽光パネルの検出にも利用でき、ロッテルダムでは現在16万8,000平方メートルに達しています。
ロッテルダムの緑化屋根を含む2016年の都市計画を支援した世界的ネットワーク「100のレジリエント・シティ」の会長、マイケル・バーコウィッツ氏は、気候変動と社会的不平等の両方に取り組むプロジェクトこそが前進の道だと述べました。
「壊滅的な気候変動を防ぐには、数兆ドルもの支出が必要です」と、バーコウィッツ氏は同市で開かれた会議の合間に語りました。
「それを実現しようとするなら、公平性(の改善)にもつながるようにしなければ、本当にもったいない機会を逃すことになります」




