ディスレクシアは人類の気候変動への適応にどう役立つのか

People with dyslexia may play a critical role in our species' collective ability to solve problems and adapt. Such abilities could be harnessed to tackle problems such as climate change
People with dyslexia may play a critical role in our species' collective ability to solve problems and adapt. Such abilities could be harnessed to tackle problems such as climate change.Image: Unsplash/Alan Rodriguez
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  • 人間の認知進化に関する新たな理論は、人類が異なるものの相補的な情報処理の方法に特化するよう進化したと提唱しています。

  • 「相補的認知」は、問題を解決し、適応し、生き延びるという人類の能力の基盤です。

  • 現代社会で支配的な文化的価値観が、気候変動など差し迫った問題を解決するための、私たちが持つ集団としての能力を十分に発揮する妨げとなっている可能性があります。

ディスレクシアに関する研究と、人間の認知進化についての新たな理論から、新たな知見が生まれています。その理論は「相補的認知」です。この最近発表された理論は、人類が異なるものの相補的な情報処理の方法に特化するよう進化したと提唱しています。こうした異なる専門性を組み合わせるための協働によって、人間の集団は相補的な要素の総和を超える働きをし、共創し、問題を解決し、適応する能力を高められると示唆しています。

最も根本的なレベルでは、この認知の専門化は、個人が既知のものを活用することと未知のものを探求することの、どちらにどれほど傾いているかを反映しています。この新たな研究は、ディスレクシアのある人々が未知のものの探求に特化していると提唱しています。こうした認知の専門性を組み合わせることは、協働すれば、人類を極めて適応力の高い存在にすることで、私たちの種としての成功を支える可能性があります。この仕組みは、数十万年にわたって変動の激しい世界に適応する中で進化したと考えられています。

スミソニアン協会のヒト起源プログラム創設者、リチャード・ポッツ教授が行った研究は、環境の大きな不安定さが私たちの祖先の進化を形づくったことを示しています。その結果、私たちは特定の生息地に適応するよう進化したのではなく、適応そのものをより得意にする特性を進化させることで、環境の変動を生き延びてきました。こうした特性によって、さまざまな生息地で生き延びることができました。

過去1,000万年間にわたる地球の気候変動を示すデータ。ホモ属と現生人類が進化した時期に起きた、最大規模の変動も含まれています。Image: リチャード・ポッツ教授、スミソニアン協会ヒト起源プログラム。Zachosほか、2001年のデータ

人間は主に文化を通じて適応します。文化には、生存に役立つ行動や発明を探求し、洗練させ、定着させることが含まれます。異なる認知の専門性は、この知識創造の過程に相補的な形で貢献します。協働によって、個人や似た者同士の集団だけでは生み出せない質の高い解決策が生まれます。その結果、私たちは相互依存するようになります。つまり、異なる能力を持つ人々が効果的に協力して適応し、問題を解決する必要があるのです。

この理論を踏まえると、今日の最も差し迫った問題の一つである気候変動について考えることができます。この極めて複雑な問題に取り組むには、相補的認知が持つ集団としての力が必要です。そのためには、ディスレクシアのある人々の周縁化を含め、私たちが適応力を十分に活用できなくしている現代社会の文化的慣行を見直す必要があります。

ディスレクシア:探求する心

教育関係者、研究者、政策立案者を含む多くの人は、ディスレクシアのある人々を発達障害があると考え、読み書きの困難をその表れと見なしています。しかし、このいわゆる障害は、文化や言語にかかわらず、世界人口のかなりの割合(約10~20%)に見られます。これほど広く見られることは、ディスレクシアのある人々は障害があるのではなく、実際には何千世代にもわたって祖先から受け継いだ、認知上の優位性を持っていることを示唆しています。

新たな研究によると、ディスレクシアのある人々の脳は探求に特化しており、つまり、既存の知識に頼るよりも、未知のものを探求する傾向があります。探求は、実験、発明、発見と結びついており、物理的な空間だけでなく、抽象的な空間や時間における新たな知識の探求も含みます。この専門性は、より詳細な情報を処理し、順序立てて既知のものを活用する能力を犠牲にする面があり、これがディスレクシアのある人々に読み書きの困難が生じる理由の説明につながります。

ディスレクシアのあるアーティストが描いた「世界を巡る航路と発見」は、認知が探求に特化した人の能力を映し出しています。Image: クリスチャナ・S・ウィリアムズ

探求能力が高いことを踏まえれば、ディスレクシアのある人々が分野を横断して働き、しばしば発見し、つなげることに意欲を燃やすのも不思議ではありません。ディスレクシアのある人々の探求への専門性は、問題の根本原因を見つけ、システムの基本的なパターンを捉え、長期的な傾向を予測し、独創性の高い戦略的または技術的な解決策を生み出す能力など、より高次の強みとして現れるようです。

こうした新たな知見から、これらの能力が気候変動への取り組みや、より持続可能な世界の実現に重要な意味を持つことが、ようやく見え始めています。

ディスレクシアのある人々は気候変動対策にどう貢献できるのか

より高次の強みに加えて、ディスレクシアのある人々には未来を思い描く力と、新たな適応方法を求める意欲があります。サステナビリティ分野で働く人々にディスレクシアのある人が多いのは、おそらくそのためです。ミッション・ポッシブル・パートナーシップの共同エグゼクティブ・ディレクター、アンソニー・ホブリーは次のように述べています。「ディスレクシアのある人々は、人類が本来備えているシステム思考の持ち主です。彼ら独自の能力が気候変動分野に導いたのだと確信しています。人類には、集団として生き延びるための戦略の一環として、大局と未来を案じるようにできている人が少数ながらいると考えています。」

優れた認知能力を持つにもかかわらず、ディスレクシアのある人々は読み書きの困難を理由に、幼い頃から文化的に周縁化され、烙印を押されることが少なくありません。その見解も真剣に受け止められないことがよくあります。こうした文化に根づいた慣行は、気候変動を含む社会の大きな問題に対して、革新的で創造的な解決策を見いだし、実行する私たちの能力を、意図せず損なっている可能性があります。

相補的認知を受け入れる

既存の制度を再設計したら、何を実現できるか想像してみてください。相補的認知を、集団がうまく協働できるようにする一般的な枠組みとして活用すれば、持続可能性の課題により迅速かつ効果的に適応し、解決できるかもしれません。

この枠組みのもとでは、人々は通常、いわゆる「適応型グループ」に集められます。つまり、認知能力が互いに大きく補完し合う人々から成るチームです。効果的に協働し、最善のアイデアや解決策を生み出すことができます。ディスレクシアに見られる探求への専門性は障害と見なされず、初日から評価され、育まれる重要な能力と捉えられます。子どもたちは、既存の知識から学ぶことに加え、探求を通じて学ぶよう促されます。つまり、自ら考え、発見し、革新することを奨励されます。

この高度に協力的な仕組みから生まれる革新的な問題解決は、世界各地で適応力があり持続可能な社会を築く能力を大きく高め、さらには加速させる可能性があります。

より良い変化

気候変動への適応に関する研究とアプローチはまったく新しい分野であり、相補的認知を新たなビジネス慣行にどう生かすのが最善か、教育にどう効果的に応用できるかなど、まだ解明すべきことが多くあります。しかし、より速く適応する必要があることは確かです。その重要な一歩は、現代社会で支配的な文化的価値観を変えることです。競争より協働を重視し、異なる考え方を受け入れることで、人類が持つ集団としての能力を生かし、持続可能な社会を築くことができます。

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