熱波は人々と地球に予想外の影響を及ぼすことがある。
極端な暑さはヘイトスピーチを増やし、心不全患者のリスクを高め、低所得地域に不均衡な影響を及ぼすことが、科学者らの研究で明らかになった。
熱波によって、木々が水分を保とうとして秋が早く訪れることもある。
2022年の記録的な熱波はアジア、米州、欧州、北アフリカ、オーストラリア、太平洋諸島で何百万人もの人々に影響を及ぼしている。
また、熱波を含む異常気象は、さらに頻度と強度を増すと予測されている。大気の温暖化が気候変動を加速させているためだ。
山火事や空港の滑走路の融解は、熱波の影響として予想されるものだ。
しかし、極端な暑さは予想外の結果をもたらすこともある。
熱波とヘイトスピーチ
気温が上がると、ヘイトスピーチも増える。ドイツの科学者らは、ヘイトツイートが「顕著に増加」したことを発見した。気温が42°Cから45°Cの極端な暑さでは、Twitter上のヘイトツイートが最大22%増加した。-6°Cから-3°Cの極寒も、ヘイトツイートの12·5%増加と相関していた。
ポツダム気候影響研究所の研究者らによると、オンライン上のヘイトスピーチは「気温が対人関係の対立や社会的攻撃性を変化させる」経路となる可能性がある。
『The Lancet Planetary Health』に掲載されたこの研究では、2014年5月から2020年5月までの米国773都市から集めた40億件のツイートのデータセットが用いられた。
熱波が中国の水力発電に打撃
中国は今夏、60年間で最悪の熱波と干ばつに見舞われ、水力発電の水供給が減少した。水力発電は同国で2番目に大きな電力源だ。
カナダのニュースチャンネルCTV Newsによると、中国は石炭の採掘と輸入を増やして対応した。
記録的な熱波で中国の長江の一部が干上がり、数万人の水供給に影響した。冷房需要の急増も電力網に負荷をかけた。8月前半の2週間、中国の発電所は前年同期より15%多く石炭を燃やした。
極端な暑さはラテン系コミュニティに不均衡な影響を及ぼす
米国西海岸のカリフォルニア州で記録的な高温が続き、ラテン系コミュニティに特に大きな影響を及ぼしている。
米国のニュース番組Eyewitness Newsによると、ラテン系移民の多くは農業や園芸など屋外の仕事に従事しており、極端な暑さの影響を受けやすい。データによれば、農業労働者の熱関連死者数は、米国の一般労働者の20倍に上る。
また、ラテン系移民には既往症がある人もおり、緑地の不足などの要因から、都市の中でも特に暑くなりやすい低所得地域に暮らしている場合がある。こうした地域では、「ヒートアイランド現象」として知られる気温上昇が起きている。
英国で行われた別の調査では、白人に比べて有色人種の人々は4倍、極端な暑さに最も弱い地域に住んでいる可能性が高いことが分かった。
熱波がもたらす「偽りの秋」
記録的な熱波と干ばつにより、木々は水とエネルギーを保つため、例年より早く葉を落としている。
この「偽りの秋」は英国で2~3カ月早く訪れた。同国では今夏、 40°Cを超える記録的な気温を観測し、7月の降水量は20年間で最少となった。
自然保護団体Devon Wildlife Trustは、60カ所の自然保護区全域で偽りの秋の兆候を確認したとし、葉が早く茶色くなるのは「木がストレスを受け、水分を保とうとしている」兆候だと述べた。
植物や木々が水分を保てるよう、ベリー類も早く熟していると、英国の森林保護団体The Woodland Trustは述べている。
山火事が大気汚染を悪化させる
米国で山火事の件数と規模が拡大し、何百万人もの米国人が大気汚染にさらされていると、科学者らは述べている。
新たな研究によると、過去10年間で、米国で大気中の汚染粒子に不健康なレベルでさらされた人の数は27倍に増えた。
2020年だけでも、約2,500万人が山火事による高濃度の煙の汚染物質にさらされた日が年に少なくとも1日あったと、米国化学会が発表した研究は報告している。
研究者らは、大気汚染は高所得層と、ヒスパニック系が大半を占める人々の間で最も速く拡大していると付け加えた。
熱波が心疾患のリスクを高める
フランスでは、熱波と心不全患者の体重減少との関連が指摘されており、病状が悪化している可能性が示唆されている。
心不全患者の体重減少は、低血圧や腎不全につながるおそれがあり、命に関わる可能性もあると、欧州心臓病学会の学術誌『ESC Heart Failure』に掲載された報告書は説明している。
暑い天候では、心不全患者は健康な人より多くの水分を失うことがある。これは、体内の老廃物を排出するために服用する利尿薬、いわゆる水抜きの薬が原因だ。
2019年7月にフランスで起きた2度の熱波の期間に調査された慢性心不全患者1,420人について、この研究は気温と体重の間に「非常に強い」関連があることを明らかにした。
熱波にどう対処できるのか?
人間の活動によって排出される二酸化炭素などの温室効果ガスが地球温暖化を進め、その結果、 極端な高温の発生頻度は現在、3倍になっていると、気候科学者らは述べている。
各国は排出量の削減を約束している。これは、2015年に署名された国連のパリ協定で合意されたとおり、地球の気温上昇を2°Cを十分に下回る水準に抑え、可能であれば1.5°Cを下回る水準に抑えるためだ。
気候変動に適応するため、場所やインフラを整備する取り組みも世界各地で進んでいる。
例えば、都市では樹木や緑地を増やしている。熱波の際に涼しさを保つためだ。
オーストラリアのシドニーは2030年までにさらに500万本の木を植える計画だ。夏季に気温が40°Cに達することが多いスペインのセビリアでは、年間5,000本を植えている。Bloombergによると、セビリアは米国やアジアのハリケーンや台風のランク付けに似た方法で熱波を分類する、世界初の都市でもある。





