運輸部門は世界の二酸化炭素排出量の20%を占めていますが、気候変動への取り組みにおいて見過ごされがちです。
気候に配慮した交通手段は先進国に集中する傾向があり、低・中所得国では排出量が増加しています。
世界銀行は、地球温暖化の影響を軽減するため、関係者が協力して環境に配慮した交通システムを推進するよう呼びかけています。
運輸部門で緊急かつ明確な行動を起こさなければ、地球温暖化を抑えるシナリオは実現できません。気候変動対策の全体像の中で見過ごされがちな部門ですが、そうあるべきではありません。現在、運輸部門は世界の温室効果ガス(GHG)排出量の20%を占めており、その排出量は急速に増加しています。交通は、あらゆる場所のすべての人に影響を及ぼします。
朗報は、交通に起因する排出量を抑えるための手段がすでに存在することです。公共交通の充実、アクティブ・モビリティ、ゼロエミッション車、グリーン燃料など、一部の手段は多くの国で導入されています。電気自動車の世界販売台数は倍増し、2020年から2021年にかけて660万台に達し、世界の自動車市場の約9%を占めました。
環境に配慮した交通は先進国に集中
しかし、残念なことに、気候に配慮した交通手段は依然として先進国に偏っています。開発途上国や新興国では、移行が目に見える形で進んでいません。
同時に、低・中所得国の運輸部門からのGHG排出量は、2000年以降に倍増を超え、モータリゼーションの進展と移動需要の急増に伴い、今後も急速に増え続ける可能性が高い状況です。

このままでは、交通関連の二酸化炭素排出量が爆発的に増加し、気候変動対策の取り組みに壊滅的な影響を及ぼすおそれがあります。
この傾向を転換し、より多くの開発途上国に運輸部門の脱炭素化戦略を広げなければ、「グリーン・ディバイド」が生じるリスクもあります。つまり、高所得国はよりクリーンで環境に優しく、現代的な燃料や交通手段への移行の恩恵を受ける一方、低所得国は過去に取り残されるという二層化した世界です。

環境に配慮した交通の格差を食い止めるために必要な行動
環境に配慮した交通をめぐる格差の拡大を防ぐ方法の一つは、高所得国から輸出される古い自動車の廃棄場所として、開発途上国を利用するのをやめることです。
2015年から2018年にかけて、中古車1,100万台が高所得国から開発途上国へ輸出されましたが、老朽化したこれらの車の排出基準や安全基準を規制している開発途上国は、わずか28カ国です。
その結果、アフリカ諸国に輸出される中古車の大半は製造から16~20年が経過し、走行距離計は12万5,000マイルを超えています。これは、交通安全や大気汚染に深刻なリスクをもたらします。
抜本的な変化がなければ、今後15~20年で低・中所得国の保有車両台数は倍増すると見込まれており、その大半を中古のガソリン車が占めるため、この問題はさらに悪化するでしょう。
より良い交通システムを整備する利点
もう一つの解決策は、開発途上国の都市が、質の低いシステムを後から改修しようとするのではなく、当初から効率的で安全かつ包摂的な交通システムを整備することです。
世界銀行は、開発途上国の運輸部門の脱炭素化に向けた継続的かつ拡大中の取り組みの一環として、こうした課題を含むさまざまな課題について、支援対象国と積極的に取り組んでいます。
例えばエジプトでは、政府と協力して老朽化したタクシー4万5,000台を回収、廃車、リサイクルし、タクシー移動の安全性を高めるとともに、排出量を4年間で二酸化炭素換算31万トン削減しました。このように車両群を更新すれば、ガソリン車を前提としたシステムへの長期的な依存を回避でき、数十年にわたる便益をもたらします。
また、リマ、アビジャン、ダカール、マニラなど多様な都市で、世界銀行は地方自治体と協力し、バス高速輸送システム(BRT)路線の整備を進めています。適切な環境であれば、渋滞を引き起こす自家用車を、よりクリーンな公共バスに置き換える優れた解決策となります。
環境に配慮した交通をより包摂的で利用しやすく
また、交通の接続性を高め、通勤時間を短縮し、より多くの人が仕事や学校、病院などの重要なサービスを利用できるようにします。さらに、自転車や徒歩など、開発途上国で広く普及している、気候に配慮した他の交通手段とも結び付きます。
このような環境に配慮した交通プロジェクトは実現可能で、他地域にも展開でき、交通における許容水準を再定義する助けになると、私たちは確信しています。今の課題は、開発途上国全体でこうした変化を実現するための十分な資金を確保することです。
世界経済フォーラムは、持続可能で包摂的なモビリティシステムをどのように推進しているのでしょうか。
世界経済フォーラムのモビリティの未来を形作るプラットフォームは、航空宇宙・ドローン、自動車・新たなモビリティ、航空・旅行・観光、サプライチェーン・運輸の4業界にまたがって活動しています。モビリティの未来を安全でクリーンかつ包摂的なものにすることを目指しています。
「クリーン・スカイズ・フォー・トゥモロー連合」を通じて、100社を超える企業が協力し、世界の航空輸送における持続可能な航空燃料の割合を10%にすることを2030年までに目指しています。
フォーラムはユニセフと協力し、海運、航空、物流の大手企業とともに、COVAXが世界中の脆弱な立場にあるコミュニティに新型コロナワクチン10億回分以上を届けることを支援する憲章を策定しました。
ロード・フレイト・ゼロ・プロジェクトとP4G・ゼロへの移行連合は、ゼロエミッション貨物輸送への移行を加速する根拠、コスト、機会を示す成果につながりました。
「メディスン・フロム・ザ・スカイ」イニシアチブは、ドローンを使ったワクチンの配送や医薬品の遠隔地への配送をインドで進め、300件を超える実証実験を成功させています。
フォーラムのターゲット・トゥルー・ゼロイニシアチブは、電動飛行および水素飛行技術を活用し、ゼロエミッション航空の導入と拡大を加速しています。
フォーラムはロサンゼルス市、連邦航空局、NASAと協力し、世界各地の都市でアーバン・エア・モビリティの導入を支援する「アーバン・スカイの原則」を策定しました。
フォーラムは、軌道上の宇宙ミッション管理とデブリ軽減に、より安全で持続可能なアプローチを促し、普及させるため、宇宙持続可能性評価の策定を主導しました。
サーキュラー・カーズ・イニシアチブは、自動車のサーキュラー・エコノミーに関する政策課題の形成に取り組んでいます。欧州委員会およびゼロエミッション車移行評議会参加国の支持を受け、現在は中国の政策ロードマップの支援を要請されています。
ムービング・インディアネットワークは政策立案者と協力し、電気自動車の製造政策を推進し、ゼロエミッションの道路貨物車両の普及を促し、移行への資金を確保しています。
アーバン・モビリティ・スコアカード・イニシアチブは、フォーラムのグローバル新モビリティ連合が主導し、モビリティ事業者と都市を結び付け、持続可能な都市モビリティシステムへの移行状況を比較評価しています。
お問い合わせください。参加方法など、詳しい情報をご案内します。
世界銀行は、交通分野における世界最大の開発金融提供機関となりました。総額310億ドルの交通ポートフォリオでは、現在、プロジェクトの75%に気候面でのコベネフィットが含まれており、各国のGHG排出量の削減と気候レジリエンスの強化に直接貢献しています。
また、2021年に運輸脱炭素化グローバル基金を設立しました。気候に配慮したモビリティソリューションのイノベーションと投資の加速を目的としています。
環境に配慮した交通システムには協力が必要
交通も気候変動もなくなることはありません。この二つの世界的課題は切り離せない関係にあります。今こそ、環境に配慮した交通システムの推進に向け、より多くの関係者に私たちの取り組みに加わっていただく必要があります。
私たちが目指すのは、より多くの人々が自転車や徒歩、公共交通を利用する社会です。それは最後の手段としてでも、自家用車がないからでもなく、環境に配慮した交通が本当により安全で、効率的で、利用しやすい選択肢だからです。この実現に向けて、今すぐ一緒に取り組みましょう。


