新たな報告書は、気候目標の達成に必要なシステム全体の変革に向けた進捗を測定し、大幅な遅れがあることを明らかにしている。
発電におけるガス利用の増加、鉄鋼生産による排出量の増加、マングローブの破壊が続いていることは、最も深刻な問題の一部である。
世界資源研究所は、2030年の排出削減目標を達成するために取り組むべき7つの主要分野を特定している。
地球温暖化を1.5°Cに抑える重要性は広く認識されている。しかし、必要とされるシステム全体の変革が、到底十分な速さで進んでいないことも明らかだ。
2030年に向けた多くの目標は達成されず、排出量は増え続ける見込みだ。進展の兆しはあるものの、行動を大幅に加速させなければ、地球温暖化を「許容可能」な水準に抑える機会は失われる。
前向きな気候変動対策を推進する組織連合、システムズ・チェンジ・ラボによる新たな報告書は、40の変革指標を通じて進捗を検証し、どこで遅れが生じているかを明らかにしている。これらの指標は、地球温暖化を1.5°C以内に抑えるため、2030年までに世界の排出量を半減させるのに必要なシステム全体の変革を測る重要な尺度となる。
進展はあるが、速度が足りない
評価対象となった40分野のうち、6分野では進展しているものの速度が不十分で、21分野では必要なペースを大きく下回っている。5分野では後退しており、残る8分野は評価に必要なデータが不足している。
特に深刻なのは、クリーンエネルギーを優先する目標があるにもかかわらず、発電におけるガス利用が増えていることと、鉄鋼生産による排出量が増え続けていることだ。乗用車の利用も増加を続け、農業からの排出量も増えている。さらに、重要なマングローブを育む取り組み――優れた天然の炭素吸収源――も、惨憺たる失敗に終わっている。
一方で、明るい兆しもある。再生可能エネルギーによる発電の割合は、1990年の20%から2020年には29%に上昇した。バッテリー価格は大幅に下がり、新型電気自動車(EV)は化石燃料車と価格面で競争できるようになった。これに伴いEVの販売も増えており、多くの国がガソリン車とディーゼル車の新車販売を段階的に終了する期限を定めている。
報告書の著者らが指摘するように、こうした変化は自然に起きたのではない。政策担当者と産業界が協調して粘り強く取り組み、それを後押しする政策や投資を行えば何が実現できるかを示している。
気候変動対策を推進する機会の一つが、政治・ビジネスのリーダーに加えて、気候の専門家や活動家が集う年次の国連気候変動枠組条約締約国会議(COP)だ。今年のCOP27の最大の成果の一つは、気候変動の被害を受けた脆弱な国々に対し、損失と損害への支援金を提供することで合意したことだった。
報告書の作成を担った組織の一つ、世界資源研究所(WRI)の最高経営責任者、アニ・ダスグプタ氏は、ガーディアン紙に語った。「わずか1.1°Cの気温上昇がもたらす壊滅的な被害を、世界は目の当たりにしてきました。人々と地球を守るための闘いでは、気温上昇をわずかでも抑えることが重要です。気候変動との闘いには重要な進展が見られますが、どの分野でもまだ勝利していません。」
それを踏まえ、1.5°Cの上限を守るために取るべき行動として、WRIが挙げる7項目を紹介する。
1. 石炭火力発電を段階的に廃止する速度を6倍にする。これは、平均的な規模の石炭火力発電所を年間925基廃止することに相当する。パンデミック中に石炭利用が急減したことで、発電の炭素集約度は低下したが、今後は大幅に反発すると予想される。
2. 建物運用のエネルギー集約度を、商業用建物では5倍、住宅では7倍の速さで改善する。建物のエネルギー集約度は2000年代から2010年代初頭にかけて低下したが、その後この傾向は鈍化している。
3. セメント生産1トン当たりの二酸化炭素排出量を減らす速度を10倍以上にする。セメント生産は特に炭素集約度の高いプロセスだが、セメントをリサイクルするとともに、セメント自体を炭素貯蔵材として利用する技術も登場し始めている。
4. 世界で排出量が最も多い都市において、地下鉄、ライトレール、バス高速輸送システムを含む公共交通網の拡充を6倍の速さで進める。報告書によると、世界各国の政治家は、公共交通機関の整備や徒歩・自転車での移動を可能にする取り組みに、依然として十分な資金を振り向けていない。新たな開発では、手頃で資源効率の高い選択肢よりも、自動車での移動が優先されることがあまりに多い。
5. 年間の森林減少率を2.5倍の速さで低下させる。これは、スイスの全耕作地にほぼ相当する面積で森林減少を回避することに相当する。森林減少、泥炭地の劣化、マングローブの喪失を食い止めることは、短期的な炭素目標の達成と緩和策の双方に不可欠である。
6. より健康的で持続可能な食生活への移行を5倍の速さで進める。欧州、南北アメリカ、オセアニアにおいて、反芻動物の肉の1人当たり消費量を週にハンバーガー2個分相当まで減らす。政府と企業は、低炭素型の食生活への転換を促進する必要がある。
7. 化石燃料への公的資金提供を終了する速度を5倍にする。これは、補助金を平均で年間690億ドル削減することに相当する。ロックダウン規制の緩和とウクライナでの戦争により、補助金は増加した。2021年または2022年の完全なデータはまだないものの、世界のエネルギー供給の85%を占める51の主要経済国における生産・消費補助金は、2020年の水準からほぼ倍増し、2022年には6,970億ドルに達したと報告書は述べている。




