ガーナの農家は、干ばつや豪雨による洪水、害虫の被害にますます遭うようになっている。
気候変動による貧困を防ぐため、Roots of Changeの新たな保険プロジェクトは、収穫量が不足した農家に保険金を支払う。
このプロジェクトでは、衛星データで作物の損失を算定し、農家との信頼関係を築くために農地を訪問している。
改良された保険プログラムは収穫量が不足した際に保険金を支払い、干ばつや豪雨によって農家が貧困に陥るのを防ぐ。
太陽が正午に向けて傾くころ、アダム・フセイナの娘はガーナ北部ナファリング村の自宅で自転車から飛び降り、買い物から戻ったと母親に声をかけた。
フセイナは、自転車の前かごに食用油、小麦粉、青菜などが入った買い物かごを見て、農場を訪れていた農業当局者たちにほほ笑んだ。
「これで1週間は暮らせます」と、村の泥壁の住居が並ぶ中、ほつれた茅葺き屋根のそばに立つ、5人の子どもの母親で43歳の彼女は言った。
1年前は状況が大きく異なり、フセイナの家族は1日に1食しか食べられないこともあった。
ガーナで洪水と干ばつが深刻化し、果物や野菜の栽培が難しくなっている。主食であるトウモロコシやコメも被害を受けると、彼女のような家族には必須栄養素やビタミンが不足した穀物がわずかに残るだけとなる。
しかし昨年3月、フセイナは無料の作物保険プロジェクトに参加した。世界の気温上昇とともに破壊的な影響が強まっている異常気象、害虫の大量発生、作物の病害の流行によって、農家が貧困に追い込まれないようにする取り組みだ。
フセイナの6.5エーカー(2.6ヘクタール)の農地で長引く乾燥が作物の一部を駄目にしても、今では家族は健康的な食事を続けられると、彼女は話した。
社会的企業Roots of Changeが運営する試験プロジェクトに参加して以来、彼女は干ばつによる作物損失額の80%を補う、最大200ガーナ・セディ(33ドル)の保険金を2回受け取った。
保険金は少額かもしれないが、保険パッケージの一部である約600セディの低利融資と合わせることで、収入を補い、次の作付け期まで家族を支える助けになったと彼女は話した。
「作物保険のおかげで、悪天候でも、害虫や病気に作物を襲われても、収益を得られると分かっているので、新しい作物を農場に植えるのが待ちきれません。プログラムに参加する前は、わくわくすることなどありませんでした」とフセイナは語った。
英国を拠点とする慈善団体Opportunity International傘下のRoots of Changeによる大規模な取り組みの一環として、この保険プログラムは農業省が収集した農地と作物のデータを活用し、ガーナ北部の約1,360人の農家に保険を提供している。
15の保険事業者で構成されるガーナ農業保険プール(GAIP)は、加入農家が申請した保険金請求を確認するため、過去の農場収量データと実際の収穫量を比較する。
Opportunity Internationalのガーナ農業事業責任者で、農家の保険料を負担しているエベネザー・ラリーアによると、昨年の開始以来、このプロジェクトは300人を超える農家に計7,000セディ(1,120ドル)を支払った。
プログラムを通じて得た資金を地域の貯蓄制度に投じる農家もいる。そこでは人々が資金を出し合い、必要なときに個々の会員が使えるようにしている。
「作物保険は大きな変革をもたらします」とラリーアは語った。特に、人口の約半数が農業で生計を立てる国では重要だという。
より安定した農業
気候変動に伴いガーナの気温が上昇するなか、ラリーアによると、同国北部では数か月続く雨季が年に2回訪れることはなくなり、代わりに5か月間続く雨季が1回となった。この雨季には農地が水浸しになり、作物が水没することもある。
残りの期間は乾燥し、作物は水不足に陥る。
食料・農業大臣のオウス・アフリイエ・アコトは、作物保険によって農業をより安定した生計手段にでき、若者をより多く引きつけ、高齢者が中心となっている職業に若い世代を呼び込めると述べた。
「不安定な天候へのレジリエンスを高めるだけではありません。農業を金融資産にすることで、若者や女性にとって魅力的なものにすることでもあります」と、同氏はナイロビで開催された2021年アフリカ緑の革命フォーラムで語った。
ガーナ食料農業省は、トムソン・ロイター財団からのコメント要請に応じなかった。
信頼を築く
GAIPは2011年にガーナの農家に作物保険を初めて導入したが、調査によると、販売は容易ではなかった。
農村部での加入は遅れており、その主な理由は保険の仕組みに対する理解不足だという。昨年6月にBioMed Central(BMC)誌に掲載された研究がそう指摘している。
同研究によると、小規模農家の90%は作物保険を有用な手段と考えているが、加入したと答えた人は5分の1に満たなかった。
農家の半数以上が保険について十分な知識がないと回答し、約5%は保険料が高すぎると答えた。
保険会社が保険金をどのように算定するかについて、農家の信頼が欠けていることも問題だった。
初期の作物保険プログラムでは、例えば、あらかじめ定めた日数にわたって雨が降らなかった場合に保険が適用されるなど、気象指数に基づいて保険金を支払っていた。
しかし、ガーナやアフリカの一部地域では気象データの精度が低いことが知られていると、農業非営利団体アフリカ緑の革命同盟(AGRA)のインクルーシブ・ファイナンス責任者、ヘドウィグ・ジーヴェルトセンは語った。
新しいモデルでは、作物損失の算定がより正確になっている。
Roots of Changeのプログラムでは、農業省が衛星データを使って農家ごとのエーカー当たりの生産量を予測し、保険金を請求した農場を訪問して実際の収穫量と比較すると、同社会的企業の農業関係担当官イブラヒム・スレイは話した。
プログラムの担当者は保険金請求の確認のため、年間約335の農場を訪問する予定だと、Roots of Changeのガーナ担当シニア・プログラム・マネジャー、リディア・バフォー・アウアは述べた。
農場を訪問する人員を派遣するのは、気象指数に基づく保険モデルより費用がかかるが、支援者らによると、農家との交流には別の利点がある。
AGRAのジーヴェルトセンは、ガーナで保険を普及させるには、対面での関係構築が不可欠だと語った。
「農業保険の最大の課題は、農家の信頼を得ることです」と、同氏は電子メールでのインタビューで述べた。
「まず現地に出向いて保険の仕組みを説明し、次に実際の損害を確認して測定することで、信頼を得られます。」
Opportunity Internationalは、事業を拡大するかどうかを判断するため、開始から間もないこのプロジェクトの効果を現在も分析しているとラリーアは述べた。将来的には農家も保険料の一部を負担することになる。
ナファリングの農家フセイナは、ガーナで作物保険が普及することを願っていると話した。
「作物保険に入っていなかったときは、自分には何の価値もないように感じていました。でも今は、自分にも価値があると感じています」と彼女は語った。
(1ドル=6.0500ガーナ・セディ)





