在来種の森林再生への投資は、企業が気候・生物多様性目標を達成しながら、変化する規制の枠組みに適応する助けとなります。
地域主導の森林再生プロジェクトは長期的には費用対効果が高い一方、計画策定、認証取得、関係者との連携に先行投資が必要です。
パリ協定第6.4条の採択と新たなサステナビリティ報告基準により、カーボンオフセット事業の信頼性が高まるでしょう。
企業が事業運営における自然の重要な役割をますます認識するなか、生物多様性に富む森林事業への投資は、気候・生物多様性目標に取り組むための実践的かつ効果的な解決策となります。
森林再生の取り組みは、差し迫った持続可能性目標に貢献するだけでなく、企業が変化する規制環境に積極的に適応する助けにもなります。
最近開催された2つの気候関連締約国会議、すなわち2024年の国連生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)と国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(COP29)を経て、企業はこうした規制の変化がもたらす課題を強く認識しています。
10月のCOP16には民間部門から過去最多の参加者が集まりました。企業・金融機関のリーダーが3,000人を超えて参加し、バリューチェーンにおける自然の役割への民間部門の認識が高まっていることを示しました。企業は、バイオエコノミーに関連するリスクへの対応と機会の獲得に強い意欲を示しています。
新たな規制もこの変化を後押ししています。欧州連合(EU)の企業サステナビリティ報告指令(CSRD)と、欧州サステナビリティ報告基準(ESRS)を含む関連枠組みは、企業に対し、生物多様性と自然に関する考慮事項を事業運営に組み込むよう求めています。自然関連財務情報開示タスクフォース(TNFD)のガイダンスは、企業が自然への依存を理解し、リスクを管理し、資金を自然にプラスの効果をもたらす解決策へ振り向けることを通じて、こうした取り組みを支援することを目指しています。
しかし、多くの企業は、気候目標の報告要件に加えて新たな報告・開示枠組みも実施しなければならず、負担を感じています。
そのため、多くの企業は気候関連目標と自然関連目標を別々に扱うのではなく、より密接に結び付けようとしています。環境面・社会面で大きな相乗効果をもたらす在来種の森林再生なら、1つのプロジェクトや取り組みで複数の目標を実践的かつ経済的に達成できます。
気候面の便益は森林再生がもたらす効果の始まりにすぎない
在来種の森林再生は、最も有力な炭素隔離・除去手段の一つとして、すでに広く認知されています。森林生態系は年間約76億トンの炭素を吸収しており、熱帯地域の「優先地域」で劣化した森林のわずか5%を再生するだけでも、さらに1億1,300万トンを隔離できる可能性があります。
直接空気回収による炭素除去量は、現在、年間わずか1万トンです。複数の樹種からなる森林は、単一樹種の植林地よりも多くの炭素を隔離するという点で、科学的な合意が得られています。
生物多様性に富む森林は、干ばつ、異常気象、外来種といった脅威に対しても、単一樹種の森林より高い回復力を持ちます。森林再生プロジェクトがもたらす生物多様性、生態系、社会面の便益に加え、大きな炭素除去の可能性があることから、幅広いサステナビリティへの取り組みを掲げる企業にとって、森林再生は明確な選択肢となります。
生物多様性を測定する指標や基準は現在も策定中であり、どれが市場を主導することになるのかはまだ明らかではありません。規制や基準が進化するなかでも、確かなことが一つあります。要件は一段と厳格になり、目標はより野心的になっていくということです。
先を見据える資金提供者は、高い信頼性を備えた炭素・生物多様性要件を満たすプロジェクトを選び、今後登場する基準や認証にも対応することで、自社の気候・自然・コンプライアンス目標を達成するうえで有利な立場に立てるでしょう。
気候変動対策への揺るぎない取り組みを示し、誠実さとリーダーシップに対する評価を確かなものにする機会にもなります。
地球本来の生物多様性に富む森林を再生することは、企業の気候・生物多様性目標と、住み続けられる地球を守るために必要な世界全体の目標を達成するための、明快な道筋です。
初期段階の資金が成否を左右する
しかし、この取り組みを示すには、プロジェクトの重要な初期段階に資金を提供する意思が必要です。地域主導の森林再生プロジェクトは長期的には非常に費用対効果が高いものの、設計、地域社会との連携、認証取得、植樹には先行投資が求められます。
十分な資金がなければ、プロジェクトチームは着手できないか、手順を省かざるを得ず、気候や地域社会にとってのプロジェクトの価値が損なわれます。
気候・生物多様性目標の達成に取り組む企業がこの資金調達のボトルネックに対処する方法は2つあります。生物多様性に重点を置くカーボンプロジェクト開発事業者や資金提供機関と提携し、長期的な炭素クレジット購入者(「オフテイカー」)となるか、プロジェクト開発の初期段階に資金を提供することです。
すでにこの方法を取り入れている企業の気候変動対策リーダーは多くいますが、地球規模で森林を再生するには、企業によるより多く、より大規模なコミットメントと、新たな革新的資金調達の仕組みが急務です。
森林再生の推進者は、COP29でパリ協定第6.4条が採択され、国連主導の一元的な炭素クレジット制度の創設が促されることで、炭素市場の信頼性が高まり、最終的に森林再生の取り組みが拡大することを期待しています。
その実現には、新たな制度の監督機関が、カーボンオフセット事業における信頼性、品質、生態学的健全性を促進する明確なルールを定めることが不可欠です。質が高く、生物多様性に富むプロジェクトへの需要は、市場を正しい方向へ導く助けとなります。
自然を支える行動を起こす
COP16とCOP29の成果を検討し、今後の道筋を考える参加者は、各国が気候変動対策のために拠出を約束した3,000億ドルは、必要額1兆3,000億ドルの一部にすぎず、その多くを気候変動の影響で最も脆弱な立場に置かれている地域社会が必要としていることを常に念頭に置く必要があります。
民間部門はこの資金不足の解消に貢献でき、それによって、健全で公平な気候の未来を支えるリーダーシップを発揮できます。
地球本来の生物多様性に富む森林を再生することは、企業の気候・生物多様性目標と、住み続けられる地球を守るために必要な世界全体の目標を達成するための、明快な道筋です。
質の高いプロジェクトには、コミットメントとパートナーシップが欠かせません。森林再生がもたらす広範な便益は、信頼性が高く大きなインパクトをもたらす取り組みを通じて、気候と自然の目標に同時に取り組む企業の活動を効率化します。



