バンコクからブエノスアイレスまで、世界12都市の極端な暑さへの取り組み

As the world becomes warmer, a new report finds that extreme heat will create productivity losses of $84 billion annually by 2050 across 12 global cities.
As the world becomes warmer, a new report finds that extreme heat will create productivity losses of $84 billion annually by 2050 across 12 global cities.Image: Unsplash/luciandachman
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  • 世界の気温上昇に伴い、新たな報告書は、極端な暑さによって2050年までに12のグローバル都市で年間840億ドルの生産性損失が生じると指摘しています。

  • 世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書2023」によると、極端な気象現象は、今後2年間に世界が直面する二番目に大きなリスクとして位置付けられています。

  • チーフ・ヒート・オフィサーは一般的になりつつあり、各都市は、さまざまな政策や構造的変革を通じて、極端な暑さといった課題に取り組んでいます。

世界には、もともと暑い地域がありました。しかし、気候変動がもたらす暑さは、北半球にまで広がり、観測史上最高記録を更新する気温を生み出し、都市での生活や仕事に影響を及ぼすことで、近年深刻な脅威として浮上しています。

実際、世界経済フォーラムの「グローバルリスク報告書2023」は、このリスクを強調し、極端な気象現象が、わずか2年という短期間のうちに、世界が直面する二番目に大きな脅威となると指摘しています。

現在、新たな報告書「Hot Cities, Chilled Economies: Impacts of Extreme Heat on Global Cities」が、アドリエンヌ・アーシュ・ロックフェラー財団レジリエンス・センターによって発表されました。同報告書は、12のグローバル都市における極端な暑さが社会、経済、健康に及ぼす影響に焦点を当て、その対策となる政策の一部を示しています。

世界各地で記録的な熱波

7月だけでも、米国では350の日最高気温記録が更新されました。一方、欧州では前例のない熱波に見舞われ、スペインとポルトガルで2,700人の命が失われました。欧州の山火事は、すでに深刻な干ばつの状況を悪化させました。パキスタンの猛暑は壊滅的な洪水を引き起こし、中国南部の気温上昇は、さまざまな分野に混乱をもたらし、都市を居住不能な状態にしました。

極端な気温により、生産性の低下を通じて、2050年までに12のグローバル都市で年間840億ドルの損失が生じる見込みです。Image: アドリエンヌ・アーシュ・ロックフェラー財団レジリエンス・センター

この現象は都市部、特に世界の南半球の都市に、驚くほど深刻な打撃を与えています。報告書によると、2050年までに約970の都市で夏季の平均最高気温が35℃に達する可能性があり、16億人の都市住民が影響を受けるとされています。

また報告書は、この現象が都市型ヒートアイランドにより、社会的に疎外されたコミュニティに不均衡な影響を与えていることも指摘しており、米国のネイティブアメリカンや黒人住民は、暑さに関連した高い死亡率に苦しんでおり、既存の不平等を浮き彫りにしています。

農業の不作や山火事により都市への人口流入が急増しており、米国の都市人口は83%にまで増加しました。2050年には11%に達すると予測されており、直ちに行動を起こす必要性が一層高まっています。

アドリエンヌ・アーシュ・ロックフェラー財団は、世界経済フォーラムのパートナーとして、「ヒートアクション・プラットフォーム」を推進しています。このプラットフォームでは、都市の行政担当者や金融機関が、都市、町、地域における極端な暑さによる人的・経済的コストの削減に関する指針を見つけることができます。

報告書のその他の主な調査結果は、以下のとおりです。

  • 暑さは労働生産性を低下させ、作業の中断、動作の鈍化、ミス、意思決定の質の低下を招きます。平年では、これらによる損失は12都市で合計440億ドルに上り、排出量削減の取り組みがなければ、この額は2050年までに840億ドルに増加すると見込まれています。

  • アジアやアフリカの中低所得都市が特に深刻な影響を受けており、冷房技術へのアクセスが限られていることで、損失がさらに拡大しています。

  • 暑さはジェンダー格差を悪化させ、産業分野における女性の割合やデータの不足により、女性が不均衡な影響を受けています。

  • 気候変動に起因する暑さという深刻化する課題の中で、脆弱な人々を守り、住民の幸福を確保するためには、迅速かつ包括的な気候変動への適応策と緩和策が不可欠です。

12のグローバル都市は極端な暑さにどう対処しているか

極端な暑さが12のグローバル都市にどのような影響を与えているか、そして各都市がどのように対処しているかは、以下のとおりです。

ギリシャ、アテネ

アテネは、上昇する気温から住民を守るため、暑さ対策を強化しています。アテネ中心部では、暑さに関連した生産量の損失が、現在の約1億ドルから、2050年には2倍の2億3,000万ドルに増加する可能性があります。建設業や製造業の労働者は、冷房の普及が限られていることや労働集約的な業務の特性から、不均衡な影響を受けています。

主な施策には、熱波時の労働者保護(ピーク時の暑さの時間帯における休憩時間の延長、水の提供を伴う冷房付き休憩所の義務化)、脆弱な人々を対象とした啓発キャンペーン、チーフ・ヒート・オフィサーの任命などがあります。

熱波を分類し、迅速な対応を促す取り組みが進められています。歴史ある噴水の改修や、密集した都市部における冷却効果のある「ポケットパーク」の整備も進行中です。新たなヒートアイランドを防ぐため、象徴的なマルベリー(桑)の木をはじめとする街路樹の保全も重要視されています。

タイ、バンコク

バンコクは、高く、かつ上昇し続ける気温に直面しています。暑さと湿度により生産性は5%低下し、年間86億ドルの損失が生じています。対策を講じなければ、損失は2050年までに156億ドル、生産量の6%に増加する可能性があります。

こうした高い数値を受けて、地方当局は暑さに関連する経済的損失を抑制するための取り組みを強化しています。バンコク都の気候計画は、極端な暑さとその影響を対象とした、効果の大きい規制や投資の機会をもたらしています。タイの2016年の職場の暑熱基準では、いわゆる湿球黒球温度(WBGT)を用いて暑熱ストレスを管理し、特定の閾値を超える作業を制限しています。2021年の研究では、この基準を遵守することで、5人中4人の労働者が保護されることがわかりました。

「バンコク気候変動マスタープラン」では、断熱、遮熱コーティング、屋根や壁の緑化が重視されています。都市の緑化、植樹、マングローブの再植林は、暑さに強い都市づくりの取り組みを強化しています。

アルゼンチン、ブエノスアイレス

暑い日が ブエノスアイレスでは、特に恵まれない地域で危険性が高まっています。これらの地域では、周辺の農村部と比べて気温が最大15℃高くなる場合があり、現在の暑さの発生頻度は2倍になる見込みです。同市では、暑さにより年間1億1,500万ドルの生産性損失が生じており、2050年までに3倍に増加すると予想されています。

ブエノスアイレスは、高まる暑さに対して最も脆弱な住民を優先しつつ、既存の緩和策を拡大することを目指しています。「ブエノスアイレス気候行動計画」では、建築基準を通じて民間部門のレジリエンスを促進し、新築建物に日よけと換気を義務付ける戦略が示されています。

脆弱なコミュニティは、「極端な気候現象への適応」などのプログラムを通じて教育を受けています。国家気象局の暑さに関する警報は、さらにアルゼンチン国民に情報を提供しています。

同市は、樹木被覆の20%増加、生物回廊、屋上・壁面の緑化、垂直庭園に投資する予定です。住宅の屋上における太陽光発電も、さらに推進される予定です。

バングラデシュ、ダッカ

ダッカでは、猛烈な暑さと湿度がリスクをもたらしています。年間で最も暑い10日間には、気温が人体の耐性を超えています。

ダッカの労働集約型の経済と冷房能力の低さにより、現在は生産性が8%損なわれています。極端な暑さにより、2050年までには10%に上昇すると予測されており、これは調査対象都市の中で最も高い数値です。

市当局はこれまで適応策を講じてきましたが、深刻化する状況を受けて、迅速な対応が必要となっています。

  • 赤十字・赤新月の予測型資金調達の仕組みのような、拡張性のある労働者保護の取り組みは、脆弱な労働者を対象に、極端な暑さに対する幅広い社会保険を提供しています。

  • ダッカの「100万の涼しい屋根」パイロット事業では、反射塗料を使用し、学校、工業用建物、住宅を大幅に涼しくしています。低コストの適応策としては、空気の循環を促す高床式の建築や、つる植物を用いた「緑の屋根」などがあります。また、街路の日よけや、屋根を緑化した車両の導入も検討されています。

シエラレオネ、フリータウン

気温の上昇は、フリータウンにとって、社会経済的な発展や適応をめぐる課題となっています。

フリータウンでは、現在の3.5%(3,000万ドル)から、2050年までに生産量の6%超へと暑さに関連する生産性損失が増加すると予測されています。

チーフ・ヒート・オフィサーは、住宅や水の供給を改善するための開発計画など、暑さへの耐性を高める適応策を担当しています。水へのアクセスは、水分補給や気化冷却を通じて暑さへの対策となります。

「Treetown」プロジェクトでは、ソーシャルメディア、モバイル決済、機械学習を活用し、地域主導の再植林を推進しています。これにより、特に社会的に疎外されたグループを中心に、涼しさと雇用をもたらしています。また、日よけにより市場の過熱を抑制し、日差しから守っています。フリータウンの取り組みは、暑さへの対策と社会経済の発展の両方を目指しています。

スペインでは猛暑時の一部の屋外作業が禁止されている。
スペインでは猛暑時の一部の屋外作業が禁止されている。
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英国、ロンドン

ロンドンは、頻繁な極端な暑さに慣れていないため、暑さへの意識向上策を講じてきました。しかし、極端な暑さによる事象が増加する中、建物やインフラへの継続的な投資が必要となっています。

2020年の損失額は7億3,000万ドルで、生産量の0.9%を占めています。排出削減や適応策が講じられない場合、この数値は2050年までに8億4,000万ドルに達すると予想されています。

2015年の報告書では、住宅の過熱を抑制するための政策が示されました。職場の気温に関する法律による保護は最低限にとどまっており、高温時の具体的な指針は不足しています。

英国気象庁は、2日連続で日中30℃、夜間15℃を超える気温が予想される場合、暑さによる健康被害の警報を発令しています。「クール・スペース」は暑さを避けられる場所を提供し、一方、ロンドン交通局の「ビート・ザ・ヒート」キャンペーンは、高温時の安全を啓発しています。

屋内の冷房効率を高めることや、建築設計にパッシブ冷却を取り入れることで、過熱の抑制につなげています。植樹の取り組みは暑さ対策となっており、2016年以降、28万本を超える木が植えられました。交通機関の暑さ対策も進行中ですが、ロンドンの交通路線の近代化に伴い、迅速な拡大が必要とされています。

米国、ロサンゼルス

ロサンゼルスは、温暖な気温に慣れており、特に脆弱なグループに焦点を当てながら、経済と住民への影響を和らげるための適応策を継続的に進めています。暑さと湿度により、LAでは年間約50億ドルの損失が生じており、2050年までに110億ドルに増加すると予測されています。

カリフォルニア州の「極端な暑さに関する行動計画」とロサンゼルス市の「グリーン・ニューディール」は、既存の計画を強化するものです。グリーン・ニューディールの取り組みには、冷却効果のある舗装、交通機関の日よけ、高齢者や障がいのある住民のための「涼しい地域」の整備が含まれ、野心的な気温低下の目標が設定されています。

同市は2021年11月に初のチーフ・ヒート・オフィサーを任命し、郡の気候脆弱性評価に基づいて、公衆の意識向上と適応目標の強化を図っています。

ロサンゼルスの「クール・ルーフ条例」では、2014年以降、太陽光を反射し、エネルギー効率の高い屋根の設置が義務付けられています。さらに、2028年までに重要な樹木の樹冠を50%増やす計画があり、暑さの軽減とエネルギー節約に貢献します。

米国、マイアミ

マイアミは、年間で最も暑い10日間の平均最高気温が28℃を超えており、効果的な暑さ対策のためには大規模な拡張が必要です。マイアミでは、暑さにより年間100億ドルの生産性損失が生じており、これは郡の年間予算を上回っています。対策を講じなければ、損失は2050年までに200億ドルへと2倍に増加する可能性があります。2021年5月に任命された世界初のチーフ・ヒート・オフィサーが、地域の取り組みを統括しています。

チーフ・ヒート・オフィサーが支持する、フロリダ州の法案が提案されており、32℃を超える屋外作業者に対して10分間の休憩を義務付けることが提唱されています。暑さに強いインフラや公共空間に関する法的基準は、民間部門の適応を促進する見込みです。

「ミリオン・トゥリーズ・マイアミ」は、樹冠率30%を目指し、都市の暑さの軽減を図っています。冷却ステーションの設置、道路・住宅・公園の暑さ対策に加え、冷却効果のある舗装や太陽光パネルによる日よけなどの革新的な素材の導入も計画されています。

メキシコ、モンテレイ

モンテレイは、メキシコで最も暑い都市の一つです。暑さと湿度により、モンテレイでは年間18億ドルの労働生産性損失が生じており、2050年までに2倍に増加すると予測されています。同市は、暑さに対するレジリエンスを高めるため、民間部門からの投資やパイロット事業を積極的に推進しています。

新たに任命されたチーフ・ヒート・オフィサーのもと、同市は都市の暑さ管理に関する既存の取り組みを拡大することを目指しています。取り組みには、啓発キャンペーン、パッシブ冷却を取り入れた建築設計、再植林などの自然に基づく解決策が含まれます。

メリダの市民参加型の再植林プロジェクトなど、メキシコ全土の取り組みから得られた教訓は、モンテレイが経済的損失を抑制し、深刻化する暑さの課題から住民を守るための知見を提供しています。

インド、ニューデリー

ニューデリーでは、極端な暑さに直面しており、最も暑い10日間の平均最高気温は36.2℃を超えています。2020年の労働生産性の損失は39億ドルに上り、2050年までに61億ドルに増加し、潜在的な生産量の5%に達する見込みです。適応策には、労働時間と授業時間の調整(一部の授業を午前11時で終了)、屋外作業を正午以降停止することなどが含まれます。

「2041年に向けたデリー・マスタープラン(草案)」では、透水性舗装、地域冷房、緑化対策、20%の樹木被覆の増加、生物回廊など、暑さに強い都市づくりが優先されています。冷房需要の増加に対応しつつ、エネルギー負荷と汚染を抑えるため、「冷却効果のある屋根」や持続可能な冷房技術の導入も進められています。

チリ、サンティアゴ

サンティアゴの気候は概して温暖ですが乾燥しており、住民は突然の熱波に脆弱です。暑さと湿度に関連した労働者の生産性損失は、年間1億ドルを超えており、この数値は2050年までに2倍になる見込みです。

サンティアゴでは、段階的な警報システムを導入しており、必要に応じて水の配給制限が可能になっています。同市初の地域気候行動計画は、極端な暑さに関する章を含んでおり、現在策定中です。

Hospital Dr Exequiel Fernandez Cortes での緑の屋根のパイロット事業が進行中です。樹冠の拡大、日よけによる都市の暑さの軽減、暑さに起因する水不足の緩和も計画されています。

オーストラリア、シドニー

シドニーでは、極端な暑さに直面しており、最悪の熱波の際には45℃を超えています。発生頻度の増加も予測されています。気候変動を抑制しない場合、2050年までに猛暑日が60%増加し、大幅な生産性損失を招く可能性があります。現在の暑さによる影響だけで年間3億1,000万ドルの損失が生じており、適応策がなければ、2050年までに7億ドル超に増加すると予測されています。

西シドニー地域自治体連合は、暑さに強い都市計画のためのガイドラインを提供しています。「レジリエント・シドニー2018」戦略は、冷却効果のある屋根、透水性インフラ、グリーンデザインを推進しています。「グリーニング・シドニー2030」では、暑さへのレジリエンスを高めるため、屋根や壁の緑化、樹木被覆への投資が提案されています。

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