湿地は地球表面の6%を覆い、強力な温室効果ガスであるメタンの最大の自然発生源となっている。
新たな研究によると、世界の気温上昇と降雨パターンの乱れにより、排出ガスの放出が加速している。
ここでは、Carbon Briefが、この現象「湿地メタン・フィードバック」とその影響について、現時点で分かっていることを解説する。
新たな研究によると、今世紀の湿地からのメタン排出量の増加ペースは、最も悲観的な気候シナリオをも上回っている。
北極圏から熱帯地域まで、湿地は地球表面の約6%を占める。こうした水浸しの土壌は、地球上最大のメタンの自然発生源だ。メタンは、地球の気温上昇に重要な役割を果たす強力な温室効果ガスである。
気候変動によって世界の気温が上昇し、降雨パターンが乱れるにつれ、湿地から大気中へのメタン放出が加速している。この現象は「湿地メタン・フィードバック」と呼ばれる。
「ブリーフ・コミュニケーション」として発表された新たな研究が掲載されたのは、Nature Climate Change。この研究によると、2020~21年には湿地からのメタン排出量が「異例の」増加を記録した。
論文は特に、熱帯湿地がメタン排出の「ホットスポット」であり、21世紀に熱帯湿地からの排出量が増加する最大の要因は南米だと指摘している。
一方、Nature Climate Changeに掲載された別の研究によると、地球温暖化は湿地からの二酸化炭素と亜酸化窒素の排出にも影響している。
論文は、「わずか1.5~2℃の気温上昇であっても、温暖化は手つかずの湿地が持つ緩和の可能性を損なう」と結論づけている。
湿地メタン・フィードバック
メタンは、強力な温室効果ガスであり、産業革命以降、人為的な地球温暖化全体の約30%を引き起こしてきた。メタン排出の大半は、人間の活動に由来し、化石燃料産業、埋立地、農業などが含まれる。
2021年、米国、EU、インドネシア、カナダ、ブラジル、英国などは、「世界メタン誓約」に署名し、2020~30年にメタン排出量を30%削減することを約束した。
一方、昨年発表された報告書で、国際エネルギー機関の世界メタン追跡調査は、「メタン削減の最も費用対効果の高い機会はエネルギー部門、特に石油・ガス事業にある」と結論づけた。
しかし、メタン排出量の40%は自然由来だ。湿地と呼ばれる水浸しの土壌は、少なくとも年間の一時期は水に覆われており、世界で最大のメタン自然排出源である。
湿地にはさまざまな形態があり、北極圏の永久凍土湿原から熱帯のマングローブ植林地、塩性湿地まで広がる。約全生物種の40%が湿地に生息または繁殖する。湿地は水の浄化など、重要な生態系サービスも提供し、重要な炭素吸収源でもある。そのため、湿地の再生は、重要な気候変動緩和策としてしばしば取り上げられる。しかし、湿地も温室効果ガスを大気中に放出する。新たな研究では、永久凍土湿地と熱帯湿地という、主要な2種類の湿地におけるメタン排出に気候変動がどう影響するかを調べている。高緯度の寒冷地にある永久凍土湿地は、一部が凍結した水浸しの土壌からなる。気候が温暖化して永久凍土が融解すると、長く休眠していた微生物が「
目を覚まし
」、大気中にメタンを放出し始める。一方、熱帯湿地は通常、高温多湿の気候に見られる。気候変動によって降雨パターンが変化
すると、新たな土壌が水浸しになり、湿地が拡大していると論文は述べている。全体として、これは地球温暖化によって湿地からのメタン排出が増加していることを意味する。この過程は「湿地メタン・フィードバック」と呼ばれる。排出量の過小評価
論文は、数十年にわたる現地調査で収集したサンプルと、複数の情報源からの観測とモデルシミュレーションを組み合わせた「
再解析
」データという、2種類のデータを使って湿地メタン・フィードバックを評価している。著者らはこの2種類のデータを用いて湿地メタンモデルのシミュレーションを行い、さまざまな温暖化シナリオのもとで、熱帯湿地と永久凍土湿地の双方から将来排出されるメタン量を予測している。下のグラフは、現地調査データ(黒の点線)と再解析データ(黒の実線)による、2000~06年の水準を基準とした2000~22年の湿地メタン排出量を示す。また、第5次結合モデル相互比較プロジェクト(CMIP5)に基づく2100年までの排出量予測も示している。CMIPは、科学者がさまざまな気候モデルの出力を調べ、比較できるようにする、
気候モデル実験の枠組み
である。濃青、淡青、黄、赤の線は、それぞれ低位(RCP2.6




