地球観測技術は、気候変動の緩和と適応に役立つデータを提供できます。
2030年までに世界経済を3.8兆ドル押し上げる可能性があります。
地球観測技術の供給見通しは明るいものの、需要側には課題が残っています。
世界気象機関(WMO)により、2023年は観測史上最も暑い年として正式に記録され、世界各地で異常気象がますます頻繁に発生しています。気候変動の差し迫った脅威は否定できません。同時に、多くの地域が先進国並みの生活水準を目指しており、これは今世紀における最も喫緊の課題の一つとなる、二つの要請を突きつけています。世界中の人々の生活環境を改善するという当面のニーズに応えながら、人類の長期的な存続を確かなものにしなければなりません。
リモートセンシングと現地センサーの双方によって実現する地球観測(EO)は、気候変動の緩和と適応を支えるデータを取得し、新たな経済機会も生み出すことで、この重大なジレンマへの対応に役立ちます。最近の報告書では、EOが2023年から2030年の間に世界経済を3.8兆ドル押し上げる可能性があると、世界経済フォーラムが指摘しています。さらに、企業や政府が年間20億トンを超える二酸化炭素換算排出量を削減するのを支援できる可能性があります。これは世界の全自動車からの排出量の3分の1以上に相当します。
以前のブログ記事では、この報告書に関連して、EOから最も大きな恩恵を受ける可能性がある6つの産業を特定し、それぞれの機会の規模を示しました。数百もの用途が考えられるEOの世界的な可能性は非常に大きいものの、まだ実現には至っていません。本稿では、EO市場の成長とエンドユーザーの導入に影響を与える9つの市場動向を明らかにし、こうした機会を実現して大きな価値を引き出す道筋を示します。
地球観測市場を形作る9つの動向
供給側の見通しはおおむね明るく、AIなどの支援技術を活用するEO事業者は、技術の可能性を広げる革新を進めています。しかし、EOが持つ世界的な価値を引き出すには、需要側に残る主な障壁に対処しなければなりません。
供給側
1. 商業分野での競争。 EO市場は歴史的に政府が支配してきました。しかし、商業用EO衛星の増加に伴い、過去10年間で大きな変化が起きています。2022年には、EO衛星の推定71%が商業所有となり、2014年のわずか10%から増加しました。
2. 統合と集約。 EO市場で商業分野の飽和が進むにつれ、資金調達もより選別的になっています。商業EO企業は、新たな画像取得能力の構築から収益性の向上へと取り組みの重点を移すことが多くなり、買収を通じた集約や、バリューチェーン下流に向けた垂直統合が進んでいます。
3. EOデータ品質の向上。 過去10年間で、EO事業者は入手可能な地球データの観測方式、感度、精度、頻度を目覚ましく向上させてきました。商業センサーの革新により、画素当たり15cmという高い空間分解能が実現しています。同時に、部品の小型化と打ち上げ費用の急落により、EO衛星の配備はかつてないほど低コストになりました。その結果、地球上の同じ地点をより頻繁に観測でき、より新しい情報が得られるようになっています。
4. コンピューティングの進歩。 EOデータの質と量が飛躍的に伸びたのと同様に、その処理と分析に用いる補完技術も進歩しています。主な例として、高性能コンピューティング、クラウド、エッジ処理、AIが挙げられます。簡単に言えば、コンピューティングの進歩は高度な分析の効果を大きく高め、多様で大規模なデータソースを融合して、地球システムと、関心対象となる他のシステムとの相互作用を包括的に把握できるようにします。
5. 付加価値サービス。 EO業界の多くの企業が、特定の産業やユースケースにエンドツーエンドのソリューションを提供できる、EOデータ・分析プラットフォームのより直感的なUI/UXの開発に取り組んでいます。また、EOデータとその派生データを利用しやすくするため、新たな「サービスとしての」ビジネスモデルや、消費者向けアプリケーションも登場しています。
需要側
6. 利用者の認知度。 EO企業によると、市場での認知度は成長を妨げる最も大きな障壁の一つです。この障壁への対処には、主にエンドユーザーへの啓発が必要ですが、それは商業EO事業者だけの役割ではありません。エンドユーザーの認知度を高めるため、EOエコシステム全体が成功事例を共有し、社会や経済に恩恵をもたらす用途でのEO活用を引き続き推進すべきです。
7. 政府主導の市場。 商業市場向けの下流EOサービスには可能性があるにもかかわらず、現在もEO収益の大半は政府の購入によるものです。政府予算は商業市場の需要より安定している傾向があるため、EO事業者は産業界の利用者より政府市場を優先することが多く、その結果、商業EOの利用を規模拡大させるために必要な進展が妨げられる場合があります。
8. データから洞察へ。 従来、EOデータを利用する組織は、実行可能な洞察を得るためにデータを処理する専門知識を必要としていました。しかし、商業的に入手できるEOデータが急増し、この状況は変わり始めています。データと技術の継続的な改善に加え、エンドユーザーが利用できるEOシステムを設計するには、ビジネスモデルの革新が不可欠です。
9. 環境保全の要請。 環境劣化への認識が高まるにつれ、監視と説明責任を求める動きが強まっています。任意のものから義務的なものまで、多くの新たな環境基準が施行されつつあります。企業には、環境への影響、持続可能性への取り組み、気候関連リスクの報告がますます求められています。そのためには、信頼でき透明性の高いデータにすぐアクセスできることが鍵となり、EOはその有力な情報源となる可能性があります。
2030年への道筋
こうした動向はEOの明るい未来を示していますが、期待される効果を実現するには、その勢いをさらに強め、加速させる必要があります。多様な専門知識、資源、視点を結集し、体系的な変化を促すマルチステークホルダーの協働が、その推進に欠かせません。
世界経済フォーラムの地球観測コミュニティには、前向きな変化の推進に取り組むEO事業者、利用者、専門家が40人以上参加しています。同コミュニティの最新報告書である「地球観測の世界的価値を高める」は、EOが切り開く経済、気候、自然分野の機会を包括的に捉えています。また、上述の動向を踏まえ、EOの利用を加速するための5つの主要戦略も示しています。
世界経済フォーラムは気候危機にどう取り組んでいるのか?
今後、このコミュニティはこうした知見を主要な意思決定者に届け、EO技術の可能性を最大限に引き出すために必要な政策や企業の取り組みを促すことを目指しています。EOに詳しい方も、これから学びたい方も、ビジネス、気候、テクノロジーのリーダーにこのグループへの参加を呼びかけます。より豊かで持続可能かつ強靱な未来に向けて、ともに貢献しましょう。
本記事は、デロイト組織内の事業体であるDeloitte Consulting LLPとの協力により作成されました。本記事に記載された調査結果、解釈、結論は、必ずしもデロイトのいずれかの事業体またはその従業員の見解を示すものではありません。また、デロイトのいかなる事業体または従業員も、本記事に関連して生じた損失について責任を負いません。




