災害リスクを軽減した成果を認めることが、メンタルヘルスを守る方法

A climate protest sign.
Climate change threats negatively affect mental health.Image: UNSPLASH/Markus Spiske
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  • 早期警報システムなど、人々を守る災害発生前の対策は、十分に評価されていない。

  • こうした「目に見えない」成果をより高く評価すれば、政策立案者が予防策への投資を増やすきっかけになる可能性がある。

  • 気候変動の影響についてバランスよく議論することは、環境不安やその他のメンタルヘルス上の懸念への対処に役立つ。

2013年、台風ハイエンがフィリピンを直撃し、6,000人以上が死亡したとき、小さなトゥラン・ディヨット島では500棟の家屋がすべて破壊され、島のすべてが失われた。

しかし、暴風雨の襲来直前に発令された早期警報と迅速な避難により、アジアの同国に甚大な被害をもたらした、史上最強級の熱帯低気圧から、島民1,000人全員が救われた。

現在、一部の専門家はこうした取り組みをより高く評価するよう求めている。災害、あるいは少なくともその最悪の影響を未然に防ぐ取り組みを認めることは、加速する気候変動の影響に世界がよりよく備え、深刻化する環境不安を和らげる助けになるという。

「『何も起きなかった』とき、人々はそれを取り上げません。しかし、何も起きなかったとしても、それ自体が並外れたことです」と、シンガポールの南洋理工大学(NTU)で災害リスクを専門とするデビッド・ラレマン氏は語った。

「こうした成果は目に見えません。それを変えたいのです。可視化したいのです」と、同氏はトムソン・ロイター財団に語った。

学校を耐震補強することから、干ばつから作物を守る灌漑設備の設置まで、称賛されるべき効果的な早期介入策は数多く実施されてきたが、世間にはほとんど知られていないとラレマン氏は述べた。

同氏は、こうした成果を認めることが、政策立案者に同様の対策への投資を促すうえで極めて重要だと付け加えた。主要な科学者らは先週、新たな国連報告書で、気候変動による損失は回避が難しくなりつつあり、今後さらに悪化する可能性が高いと警告した。

悪いニュースばかり?

気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の主要報告書によると、灼熱から洪水、干ばつに至るまで、地球温暖化は予想を上回る速さで、より深刻な規模で世界に影響を及ぼしている。

195か国の政府が承認したこの報告書は、より極端な気象や海面上昇に適応する取り組みを強化し、人々の脆弱性を抑えるよう政策立案者に促した。

IPCCによると、気候変動はメンタルヘルスにも「悪影響」を及ぼしている。気温上昇によるストレスや気象災害のトラウマから、生計や文化の喪失まで、その影響は多岐にわたる。同パネルがこの深刻化する問題を正式に認めたのは初めてだ。

厳しい見通しが示されるなか、国連の世界気象機関(WMO)のトップは、とりわけ若い世代の間に、さらなる「終末論的な恐怖」をあおらないよう警告した。

「科学の成果やティッピングポイントについて、また生物圏の崩壊や人類の消滅について語る際には、伝え方に注意しなければなりません」と、WMO事務局長のペッテリ・ターラス氏は述べた。

「若者に過度な恐怖を与えないよう気をつける必要があります。恐怖を向けるべき相手は意思決定者です」と、同氏はIPCC報告書の承認会合で語った。

気候変動をめぐる全般的に否定的な論調は、「未然に防がれた災害」をより多く紹介することで、ある程度バランスを取れる可能性がある。災害報道が大惨事に偏りがちなことを踏まえれば、なおさらだと、NTUのラレマン氏は述べた。

同氏と研究チームは、先を見越した対策がなければ災害による死者や被害がどれほど増えていたかを調べ、その恩恵を定量化しようとしている。

研究チームによると、2019年にインド東岸のオディシャ州をサイクロン・ファニが襲った際、沿岸地域の住民が速やかに避難し、過去20年間に約9,000か所の避難所が建設されていたおかげで、1万人以上の死亡が防がれた。

ネパールでは、1997年に始まった学校の耐震補強により、2015年に大地震が発生して約9,000人が亡くなった際、数百人の命が救われたと考えられている。

研究者らによると、計画の対象となった耐震補強済みの学校300校は、いずれも倒壊せず、大規模な修繕も必要としなかった。

「私たちは災害のことばかり考えていて、かなり気が滅入ります」と語ったラレマン氏は、自然災害を専門とする研究機関、シンガポール地球観測所の主任研究員も務める。

「しかし、災害や気候のリスクに対処するため、世界中ですでに多くの取り組みが行われています。問題は、そのことがまったく伝わっていないことです」と同氏は付け加えた。

「複数の真実」

気候変動に関連するメンタルヘルス危機が深刻化しており、しばしば「環境不安」と呼ばれるこの問題は、近年注目を集めている。メキシコや米国で気温上昇に関連した自殺が起きているほか、将来があまりに不確実で子どもを持つことをためらう人もいる。

この問題への対処に向けて、気候問題をめぐる議論では「複数の真実を同時に捉える」べきだと、英国のインペリアル・カレッジ・ロンドンでこの現象を研究するメンタルヘルス専門家、エマ・ローレンス氏は述べた。

行動と楽観を促すメッセージのなかで、より良い未来とより悪い未来の両方の道筋を示すことも、その一つだ。

「気候不安に絶望感や無力感が伴うと、メンタルヘルスとウェルビーイングが悪化し、行動する力が損なわれる可能性があります」とローレンス氏は付け加えた。

災害を未然に防いだ成果をより高く評価することで、先進国と開発途上国の双方で、政策立案者が災害予防策への投資を増やし、できるだけ早く実行するよう後押しできると主張する人々もいる。

IPCCの報告書は、アフリカ、南アジア、小島嶼国など、気候変動に対して非常に脆弱な地域に33億人から36億人が暮らしていると推計している。

しかし、多くの開発途上国は温暖化する世界の圧力に適応するための資金繰りに苦しんでいる。一方、過去の二酸化炭素排出の大半に責任を負う富裕国は、貧困層や脆弱な人々を支援する資金を提供する約束を十分に果たせていない。

同じくシンガポールのNTUに所属する災害リスク研究者、マリカー・ラボンザ氏は、選挙で選ばれた政治家は大胆な措置に消極的になりがちだと指摘する。効果が表れるまで何年もかかることがあり、その頃には多くの政治家がすでに職を離れているためだ。

「では、どうすればそうした行動を促せるでしょうか。対策の恩恵は、できるだけ早く定量化すべきです」とラボンザ氏は語った。

「視点を少し変えるだけで、前向きな取り組みから得られる教訓を生かし、災害時の失敗だけでなく……」と同氏は述べた。

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