2070年、南極大陸はどのような姿になっているのか?

A view of icebergs remaining after a break-up of Wilkins ice shelf on the Antarctic Peninsula, January 19, 2009. Picture taken January 19, 2009. REUTERS/Alister Doyle
Melting Antarctic ice could lead to catastrophic sea level rise.Image: REUTERS/Alister Doyle
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衛星観測の新たな分析によると、南極大陸では1992年から2017年の間に3兆トンの氷が失われた。この期間に、脆弱な西南極では氷の年間損失量が3倍に増え、年間1,590億トンに達した。過去四半世紀に南極大陸から失われた氷の総量は、世界の海面を8ミリメートル上昇させるのに十分な量だった。

2070年、南極大陸はどのような姿になり、南極大陸の変化は地球の他の地域にどのような影響を及ぼすのだろうか。これらの問いへの答えは、付随する論文で示したとおり、今後10年間に私たちが下す選択にかかっている。その論文は、本日、Nature誌にも掲載された。

私たちの研究では、今後半世紀にわたる南極大陸の2つの未来像を対比している。それは、今日の子どもや若者が生きている間に現実となる物語だ。

2つのシナリオには必然的に推測が含まれるが、確かなことが2つある。第一に、南極大陸で大きな変化がいったん起きれば、地球規模でさらに何世紀にもわたる不可逆的な変化が避けられなくなる。第二に、残された時間はあまりない。最終的に現実となる未来像は、今後10年間に下される選択によって決まる。

南極大陸の変化は世界に影響を及ぼす

地球上で最も遠隔にある地域でありながら、南極大陸と南極海の変化は、地球と人類に世界規模の影響をもたらす。

たとえば、海面上昇の速度は、大気と海洋の温暖化に対する南極氷床の反応に左右される。一方、気候変動の進行速度は、熱と二酸化炭素が南極海にどれだけ吸収されるかに左右される。さらに、世界各地の海洋生態系は、南極海から低緯度地域へ運ばれる栄養素によって支えられている。

政治的な観点から見ると、南極大陸と南極海は地球上で最大級の共有空間であり、南極条約体制として知られる独自のガバナンス体制によって管理されている。これまでのところ、この体制は環境を管理し、対立を避けるうえで成果を上げてきた。

しかし、人間活動が引き起こす急速な環境変化が南極大陸の物理的・生物学的システムに課題をもたらしているのと同様に、大陸の管理もまた課題に直面している。

2070年の南極大陸

私たちは、最新の科学に基づいて実現可能な未来を描いた、南極大陸の今後50年間に関する2つのシナリオを検討した。

最初のシナリオでは、世界の温室効果ガス排出が抑制されず、気候の温暖化が続く。そして、南極に影響を及ぼす環境要因や人間活動に対応する政策措置はほとんど取られない。

このシナリオでは、南極大陸と南極海で広範かつ急速な変化が起き、世界規模の影響が及ぶ。海洋と大気の温暖化によって、主要な棚氷が大幅に失われる。その結果、南極氷床からの氷の流出が増え、海面上昇の速度は、1万年以上前の最終氷期の終わり以降、見られなかった水準に加速する。

温暖化、海氷の後退、海洋酸性化によって、海洋生態系は大きく変化する。また、南極の人間による利用が無制限に拡大すれば、環境が損なわれ、外来種の定着を招く。

高排出シナリオでは、2070年までに南極大陸と南極海で広範な変化が起こり、世界に影響が及ぶ。Image: Rintoulほか、2018年

2つ目のシナリオでは、温室効果ガス排出を抑え、南極の環境に対する人間の圧力を軽減する政策を定めるため、野心的な行動が取られる。

このシナリオでは、2070年の南極大陸は現在とほぼ変わらない姿を保つ。棚氷の大部分が維持されることで、南極氷床から失われる氷が減り、海面上昇も抑えられる。

連携を強め、より効果的になったガバナンス体制が、南極大陸と南極海に対する人間の圧力を和らげる。温暖化と酸性化が抑えられ、海洋生態系の大部分は維持される。陸上では、生物の侵入はまれなままだ。南極特有の無脊椎動物や微生物は、繁栄を続ける。

低排出シナリオ(左)と高排出シナリオ(右)における、2070年の南極大陸と南極海。これらのシステムは2070年以降も変化し続ける。私たちが避けられない変化の規模は、一般に、2070年までに実際に生じる変化よりもはるかに大きい。Image: Rintoulほか、2018年。

選択するのは私たちだ

今後半世紀にどちらの道を進むかは、私たちが選べる。しかし、その機会が開かれている時間は急速に失われつつある。

地球温暖化の進行は、世界の温室効果ガス排出量によって決まり、その排出量は増加を続けている。このため、さらなる気候影響が避けられなくなり、その一部が現れるまでには数十年、あるいは数世紀かかる。2つ目のシナリオが現実となる可能性を残すには、温室効果ガス排出量が今後10年以内にピークを迎え、減少に転じなければならない。

南極大陸について、より楽観的なシナリオが現実となれば、大陸を支える棚氷が存続し、南極大陸による海面上昇への寄与が1メートル未満にとどまる可能性は十分にある。1メートル以上の海面上昇は、何百万人もの人々を移住させ、深刻な経済的困難を引き起こす。

想定されるシナリオのうち、より被害が大きいものでは、多くの南極の棚氷が失われ、南極氷床によって海面が最大で2300年までに3メートル上昇する可能性が高い。さらに、今後数千年にわたり5~15メートル上昇することが避けられなくなる。

困難は伴うものの、南極大陸と世界が制御不能な気候影響に苦しむのを防ぐため、今すぐ行動を起こすことができる。成功すれば、平和的な国際協力の力を示し、重大な局面に直面したとき、科学的根拠に基づき、長期的な最善の利益にかなう決定を下せることを示せる。

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