気候・自然資金におけるクレジット市場の進化

A glacier in the middle of water: Credit markets have expanded to help finance climate and nature goals
Credit markets have expanded to help finance climate and nature goalsImage: Shutterstock
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  • カーボンクレジットと同様に、「クレジット化」は水、生物多様性、土壌の健全性、さらにはプラスチックなど、ほかの環境分野にも広がっている。

  • 国際合意は、とりわけ開発途上国の資金調達目標の達成に苦慮してきたが、民間資金がその不足を補っている。

  • 新たな金融手段は、生態系全体や景観レベルのアプローチに重点を置き、例えば炭素、生物多様性、水を含む複数の指標を統合している。

炭素市場は、気候・自然関連プロジェクト向けの資金を動員する有用な手段となってきた。

近年、「クレジット化」の概念は水、生物多様性、土壌の健全性、さらに最近ではプラスチックなど、ほかの分野にも広がっている。この傾向は、大きく分けて二つの主な動きにさかのぼることができる。

第一は、環境関連条約の目標達成に必要な資金が大幅に不足するなか、バリューチェーンの内外でサステナビリティに対する民間投資が増えているとの認識である。

第二は、世界のサステナビリティ・アジェンダと、生態系サービスへの支払いに関する理解が深まるにつれて両者の結び付きが強まっていることであり、これにより、こうした市場の環境面・社会面の成果が向上する可能性がある。

資金不足の解消に失敗

2015年に採択されたパリ協定と、2022年に採択された昆明・モントリオール生物多様性枠組は、気候と自然に関するアジェンダについて、明確な目標と意欲的な方針を定めた。

それ以降、関心は主に実施へと移り、二つの計画に掲げられた目標にどう資金を充てるかに焦点が当てられている。

アゼルバイジャンのバクーで開催された国連気候変動枠組条約第29回締約国会議(UNFCC COP29)と、コロンビアのカリで開催された生物多様性条約第16回締約国会議(COP16)は、いずれも資金調達と実施を主題とするCOPと位置付けられた。

政府が資金を動員するとの約束には大きな期待が寄せられていた。とりわけ、気候変動の影響を最も受け、一般に生物多様性が最も豊かな開発途上国や後発開発途上国への期待が高かった。

しかし、いずれも重要な成果を上げられなかった。COP29では資金動員に関する控えめな約束にとどまり、COP16は協議をまとめるため2025年初頭に第2回会合を再開せざるを得なかったものの、合意には至らなかった。

サステナビリティに関する世界的な約束が目標に届かなかったのは、今回が初めてではない。2009年、コペンハーゲン合意の下で各国は、2020年までに開発途上国向けの気候資金として年間1,000億ドルを動員することを約束した。この目標が達成されたのは2年後だった。

同様に、2010年の生物多様性条約締約国会議で定められた愛知目標も、大部分が未達に終わり、開発途上国や新興国に流れた資金は、必要額のわずか7分の1だった。

自然と気候に取り組むことは、変化する地球環境に直面する企業とそのバリューチェーンを強化する方法として、今や認識されている。

—アカンクシャ・カトリ、自然・生物多様性部門長、世界経済フォーラム|アレッサンドロ・ヴァレンティーニ、自然のための革新的金融リード、世界経済フォーラム

アカンクシャ・カトリ、自然・生物多様性部門長、世界経済フォーラム|アレッサンドロ・ヴァレンティーニ、自然のための革新的金融リード、世界経済フォーラム

気候と自然の連携に向けて

公的資金の動員が期待を下回ったにもかかわらず、気候・自然資金をめぐる世界的な機運は衰えていない。それどころか、民間部門により焦点を当てながら高まり続けている。これにより、炭素、水、自然のクレジット市場をめぐる自主的・規制的な取り組みやイニシアチブが急増している。

この動きは、より広い潮流の一部でもある。それは、自然の真の価値を認識する方向への転換だ。環境資産は、経済と社会の基盤である。水循環、気候調節、食料システムへの供給など、環境資産とそこから得られるサービスや恩恵がなければ、私たちの存在は成り立たない。

人間の活動は、過去数十年にわたってこうした資産やサービスを大きく損なってきた。しかし経済は、こうした地球規模の共有財をより適切に評価するビジネスモデルへと移行し始めている。

自然と気候に取り組むことは、変化する地球環境に直面する企業とそのバリューチェーンを強化する方法として、今や認識されている。不作為のリスクとコストは、行動に伴うものをはるかに上回る。環境関連リスクは長年にわたり、グローバルリスク報告書で最も重大な長期リスクとして指摘されてきた。

その結果、新世代の金融手段が登場しつつある。炭素市場では、取引されるクレジットの量や、さまざまな制度が対象とする排出量が過去20年間にわたって増加し続けており、制度の対象範囲は世界の排出量の7%から24%へと拡大した。

水市場は何十年も前から存在し、水質や水量を扱ってきた。生物多様性クレジットは企業や投資家の関心をますます集めており、自然とそれを守る地域社会に投資する手段となることが期待されている。

サステナビリティ・クレジットの今後を考える

この進展は環境にとって明るい材料だ。現在のサステナビリティ資金の不足を補ううえで、民間資金が極めて重要になるからだ。しかし、自主的な取り組みだけでは不十分である。世界の炭素市場は1兆ドルを超えると推定される一方、自主的市場の規模は10億ドル未満にとどまる。

同様に、水取引市場や生物多様性オフセットなど、コンプライアンスに基づく規制対象の自然資金投資は数十億ドル規模に達する一方、自然クレジットなどの自主的な手段への投資は、わずか数百万ドルにとどまっている。

したがって、自主的な取り組みを発展させるには、政策、規制、インセンティブによる後押しが必要となる。どのような規制が市場とその関係者にとって有益かを定めるうえで、官民連携が鍵を握る。関係者には、プロジェクト開発者や先住民族・地域コミュニティから、購入者や投資家までが含まれる。

こうした取り組みは、すでに先行国の一部で進んでいる。例えば、オーストラリアはネイチャー・リペア・マーケットの設立を進めている。インドはグリーン・クレジット・プログラムを実施しており、欧州連合では、新たな欧州委員会が、自然再生法に向けた投資を動員するうえで自然市場が果たす役割を積極的に検討する予定だ。

こうした経験から得られる教訓は、これらの市場が良好な成果をもたらすようにするうえで、計り知れない価値を持つ。

さらに、クレジットの基盤となるプロジェクトでは、景観、生態系、生息地の各レベルに着目するアプローチが増えており、成果に基づくこれらの手段の成功指標を組み合わせている。

例えば、自然を活用したカーボンクレジット・プロジェクトでは炭素と生物多様性の指標を取り入れている。一方、ほかの自然クレジットでは、生態系の健全性を示すさまざまな指標を用いる。例えば、クスコ国立公園でrePLANETが実施するプロジェクトでは、炭素と生物多様性を組み合わせている。

この包括的なアプローチは、例えば炭素市場で一般的な単一樹種の植林プロジェクトが広がるのを防ぎ、プロジェクトの健全性を高める。また、調達、開示、報告の要件がますます複雑化する買い手側にも利点がある。

さらに包括的なアプローチは、水、炭素、生物多様性が各業界や企業にとって持つ重要性の種類や程度を統合することで、こうしたプロジェクトに投資する事業上の根拠を強化できる。

したがって、縦割りを解消すれば、あらゆる領域で良い効果が得られる。人と自然にとって望ましい成果を確実にする環境を整えるには、多様な関係者による対話と官民パートナーシップが必要だ。

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