専門家によると、近年の暴風雨や熱波が英国の電力網の機能に影響を及ぼしています。
最も一般的な被害は送電線の損傷ですが、大雨や高潮の後には変電所も浸水することがあります。
英国は、架空ケーブルではなく地中配電線を用いるなど、異常気象に耐えられるインフラを整備しなければなりません。
配電網事業者には、異常気象の事前警報と、エネルギーシステムへの潜在的な影響に関する情報も提供する必要があります。
アーウェン暴風雨英国気象庁が「過去10年で最も勢力が強く、被害の大きい冬の嵐の一つ」と評したこの暴風雨は、2021年11月下旬にスコットランド東岸とイングランド北部を襲いました。最大時速90マイルを超える突風と倒木により、エネルギーインフラは広範囲にわたって被害を受けました。100万戸を超える住宅が停電し、1週間以上たっても電力が復旧しない住宅もありました。
2022年2月には、アーウェンに続いてダドリー、ユーニス、フランクリンの各暴風雨が発生しました。これらの嵐は同様に壊滅的な影響をもたらし、英国の電力供給を脅かしました。ユーニス暴風雨の際、イングランド南東部の一部地域では、5日間にわたって断水しました。水処理施設が停電したためです。
同年後半、英国は観測史上最も激しい熱波に見舞われました。気温は最高40℃に達し、電力網は機能停止寸前まで追い込まれました。
気象学者や気候科学者は、こうした現象を異常気象と呼びます。その地域と現象の種類について、気象が過去の記録の極端な範囲に達する、あるいはそれを超えることを意味します。
英国にとって異常気象は珍しいものではありません。しかし、証拠は、気候変動によってこうした現象の頻度と強度が増している可能性を示しています。これは、英国のエネルギーシステムが将来の異常気象に備え、耐えられるようにする必要性を浮き彫りにしています。
電力供給の問題
最も一般的な被害は、発電所から家庭や事業所へ電気を送る送電線の損傷です。暑い天候で架空線が過熱したり、暴風雨の際に強風で倒れたり、木が倒れて接触したりすることがよくあります。
送電線からの電圧を安全に使えるよう下げる電力変電所も、大雨や高潮の後に浸水することがあります。浸水によって変電所の容量が低下し、完全に機能を停止することさえあります。たとえば、2015年には洪水でランカスター市の主要変電所が損傷し、住民10万人が電力供給を断たれました。
送電線や変電所の多くが機能停止すると、地域的な停電が起こることがあります。復旧まで数日、場合によっては数週間かかることもあります。送配電事業者は通常、深刻な悪天候が過ぎるまで修理に着手しないためです。
極端な気温は、人々が自宅や職場を冷やしたり暖めたりするのに苦労するため、エネルギー需要の急増も引き起こします。2022年の記録的な高温を受け、英国の電力網の予測担当者は、エネルギー需要が供給を上回る可能性を70%と予測しました。そうなれば停電が発生します。
電力供給への脅威
証拠によれば、英国では将来、より破壊的な気象現象が、より頻繁に発生すると見込まれています。科学者は、これを地球温暖化の進行によるものとしています。たとえば、極端な降雨は地球温暖化が1℃進むごとに、強度が約7%増すと予測されています。
こうした気象現象が増えるにつれ、複数の異常気象が同時に発生する可能性も高まります。研究では、暴風と洪水が同時に発生すると、それぞれが単独で起きた場合に比べて被害が3倍になる可能性があるとされています。
気候変動は、英国のエネルギーシステムに新たな脅威ももたらしています。たとえば、これまで問題にならなかった地域でも、熱波や山火事が増えています。2022年、英国では記録上、最大級の山火事シーズンの一つを経験し、サッカー場約3万面分に相当する面積(2万ヘクタール)が焼失しました。
2017年にブラジルとチリを襲った一連の大規模な山火事に関する研究では、火災によって架空送電線の送電能力が70%低下したことが分かりました。
山火事の脅威は、将来さらに深刻化する可能性があります。地球温暖化が2℃に達した場合、英国の山火事のリスクは2倍になると予測されています。
気候変動対策において重要な役割を果たすネットゼロ政策も、英国の電力システムにさらなる負荷をかける可能性があります。電気自動車を運転する人やヒートポンプを設置する人が増えるにつれ、電力需要は増加します。英国の電力使用量は増加すると予測されており、2050年までに最大60%増える見込みです。
しかし、電力需要の増加は電力システムへの負荷を高めます。また、電力への依存が進むと、地域的な停電の影響が悪化するおそれもあります。停電した人々は、自宅を暖めたり、車両を充電したりできなくなるためです。
脅威を軽減する
英国のエネルギーシステムを異常気象に備えさせる方法はいくつかあります。
異常気象に耐えられるインフラを整備する必要があります。ある研究では、風害を受けやすいイングランドとウェールズの沿岸地域で、架空ケーブルの代わりに地中配電線を設置すると、暴風による停電をほぼゼロにできることが分かりました。また、英国の多くの地域では、脆弱な変電所を守るための洪水防御設備がすでに整備されています。
配電網事業者と一般市民には、異常気象の事前警報と、エネルギーシステムへの潜在的な影響に関する情報を提供する必要があります。これにより、移動式発電機を待機させるなど、停電の影響を軽減する対策を準備できます。
これを実現するには、気象・気候モデリングをエネルギー計画のプロセスに組み込む必要があります。重点を置くべきなのは、異常気象がいつ、どこで最も深刻な被害をもたらすかについて、地域に即した情報を提供できる高解像度モデルです。
異常気象は、その性質上、まれな現象です。しかし、気候変動によって発生頻度と被害が増しているからこそ、無視してはなりません。英国と世界各国は、異常気象を予測して備え、それに耐えられるインフラを整備することで、エネルギーシステムの耐性を確保しなければなりません。