気候災害から逃れて都市のスラムに移るバングラデシュの子どもたちが増え、教育を受ける機会を永久に失いつつある。
同国の中退率は2021年に17%を超え、200万人以上の子どもが学校を去った。
ユニセフによると、現在バングラデシュの子どものうち約170万人が労働者となっている。
世界では33カ国の子ども約10億人が、気候変動の影響による「極めて高い」リスクに直面している。
12歳のアラミンの家は、昨年までバングラデシュ南部のイルシャ川のほとりにあった。だが昨年、増水した川が家と家族の農地を浸食し、一家は首都ダッカ近郊のケラニガンジにあるスラムへ逃れることを余儀なくされた。
今、アラミンは――父親を数年前にがんで亡くしている――船舶解体作業員として働き、母親は作業員たちのために料理を作っている。二人の稼ぎは、家族の食費と住居費、そして現在3歳と5歳のアラミンの弟妹を養うのにぎりぎり足りる程度だ。
「かつては暮らしに困っていませんでした。夫は耕作できる土地から収入を得て、息子は地元の小学校に通っていました」と、アラミンの母親アミナ・ベグムは語った。
しかし、川に土地を奪われ、がん治療が実らず貯金も使い果たした今、アラミンに望めるのは働くことだけだと、母親は嘆いた。
異常気象が激化し、低地のバングラデシュでは洪水や浸食、暴風雨が悪化するなか、彼女の家族のように何千もの家族がダッカのスラムへ移り住んでいる。
親とともに気候変動の影響と闘う子どもたちの多くにとって、この移住は教育の終わりと、長い労働生活の始まりを意味する。
ユニセフ(国連児童基金)は8月の報告書で、南アジアのバングラデシュ、アフガニスタン、インドの子どもたちが、気候変動の影響による「極めて高い」リスクに直面していると述べた。
世界では33カ国の子ども約10億人が、同じレベルの脅威にさらされていると報告書は付け加えた。
「南アジアの何百万人もの子どもたちに対する気候変動の影響について、明確な証拠が得られたのは初めてです」と、ユニセフ南アジア地域事務所のジョージ・ラレヤ・アジェイ所長は報告書で述べた。
ユニセフ当局者によると、この地域では干ばつや洪水、河川の浸食により、何百万人もの子どもたちが住居や食料を失い、医療や安全な水を得られず、多くの場合、学校にも通えなくなっている。
「気候変動は南アジアの子どもたちに深刻な危機をもたらしています」とラレヤ・アジェイ氏は指摘した。
働く子ども170万人
700近い川が流れる肥沃なデルタ地帯の国、バングラデシュでは、洪水による浸食の拡大と、移住先となる土地の不足が重なり、かつて農村に暮らしていた多くの家族が都市のスラムへ移り住んでいる。
人口1億6000万人超の同国で、人口の約40%を占める子どもたちは、移住によってとりわけ大きな代償を払っていると研究者らは述べる。
ユニセフによると、初等教育を受けていないバングラデシュの子どもの大半は、都市のスラムや、アクセスが困難な地域、災害が起きやすい地域に住んでいる。
同機関の調査によると、国内では約170万人の子どもが労働者で、その4人に1人は11歳以下だ。家事労働に従事することが多い女の子は、統計にすらほとんど表れないとユニセフは指摘した。
ダッカ周辺のスラムでは、子どもたちが皮なめし工場や造船所、仕立ての仕事、自動車修理などで働く姿が見られる。野菜市場で働いたり、バス、列車、船のターミナルで荷物を運んだりする子どももいる。
多くの子どもたちは、街へ来ることを余儀なくされる前は農村に住んでいたと話す。
汗だくのアラウディンさん(10)は、ここ数カ月、ダッカの野菜市場で働いている。掃除をしたり、ほとんど動かせない金属製のボウルに入ったジャガイモを運んだりしている。
昨年の大洪水で学校と家、土地が壊されるまで、ジャマルプル北東部の町の近くにあるデブラパッチ小学校に通っていたと、彼は語った。
一家はダッカのスラムに移り、父親は人力車を引き、母親は私立学校で清掃員としてパートタイムで働いている。
父親によると、アラウディンの仕事は家計に1日100タカ(1.15ドル)を加えており、一家にとって欠かせない収入だ。
「子どもたちはもう学校には戻れません」と父親は認めた。「家賃と日々の暮らしに苦労しています。息子の教育費をどうやって払えるでしょうか」
バングラデシュの教育担当副国務大臣モヒブル・ハサン・チョウドリー氏は、トムソン・ロイター財団との電話インタビューで、昨年の洪水により国内10地区で500を超える教育機関が浸水したと述べた。
完全に流された施設もいくつかあったが、大半はその後水が引いた。ただ、授業を再開できるほど修復された施設はごくわずかだと同氏は述べた。
新たな洪水による休校は、長期にわたったパンデミックによる休校に続いて起きており、働く必要のない子どもたちでさえ、多くの場所で依然として教室に戻れていない。
バングラデシュの2021年年次初等学校調査によると、6万5000校の公立小学校に1024万人の児童が在籍していた。一方、2021年の中退率は17%を超え、200万人以上の子どもが学校を去ったと報告された。
教育当局者によると、地球温暖化の影響は子どもたちが学校を離れる主な要因だった。
初等教育局のアラムギル・モハマド・マンスルル・アラム局長は、中退率を「憂慮すべき」とし、「大きな理由の一つは気候変動です」と指摘した。
「昨年、洪水で500校以上が被害を受けたことを確認しました。生徒たちは長い間、学校へ行けませんでした」と、同氏はインタビューで述べた。
同氏によると、明らかになったのは「多くの子どもが学校に戻らず、家族を支えるためにさまざまな仕事に従事している」ことだ。
バングラデシュ私立初等学校協会のイqバル・バハル・チョウドリー会長によると、国内の私立小学校も1万4000校以上が、新型コロナウイルスのパンデミックにより少なくとも一時的に閉鎖された。
ユニセフと国連教育科学文化機関(ユネスコ)の10月の報告書によると、2020年にパンデミックが始まって以来、バングラデシュでは計3700万人の子どもが休校によって教育を中断されている。
重い負担を背負う小さな肩
9歳のルパさんは、学校ではなく働いている子どもたちの一人だ。
昨年、クルナ県シャムナガルにあった家がサイクロンで破壊された後、一家はダッカ近郊のスラムに住む叔母のもとへ移り、合流した。
やがてルパの母親は、働くことのできない盲目の夫を見捨て、娘を夫のもとに残した。少女は今、波止場でスイカの荷下ろしを手伝い、1日100タカ(1.15ドル)を稼いでいる。
「小さな女の子が大人の作業員と働くのは本当に大変だと分かっていますが、どうしようもありません。1歳の子どももいて、家族を養わなければならないのです」と、料理人として働く叔母は語った。
国際労働機関(ILO)バングラデシュ事務所の国家プロジェクト調整官、シェダ・ムニラ・スルタナ氏は、異常気象やその他の気候変動の影響で働くことを余儀なくされた、ルパのような女の子たちに大勢会ったと述べた。
「ケラニガンジ近郊の、女性用のドレスを生産する工場で、10歳未満の女の子が大勢働いているのを見て驚きました」と同氏は語った。
「彼女たちに話を聞くと、大半はバリサル、クルナ、サトキラのような気候変動の影響を受けやすい地域の出身で、全員が学校を中退していたと言いました」と同氏は付け加えた。
働くことを強いられた子どもたちは、身体的、精神的な被害を受ける可能性があるうえ、教育を受ける機会も失う。これにより将来の選択肢が狭まり、世代をまたぐ貧困や児童労働の連鎖につながりかねないと、ILOバングラデシュ事務所長のトゥオモ・プーティアイネン氏は述べた。
「子どもたちは気候変動の大きな代償を払っています」と、ユニセフのバングラデシュ代表シェルドン・イェット氏は付け加えた。







