今では、プラスチックの使用が環境にとって大きな問題だということを、ほとんどの人が耳にしている。BBCのシリーズ『ブルー・プラネットII』の成功も一因となって、人々はかつてないほど、プラスチック汚染が野生生物にもたらす危険、さらには人の健康への影響を認識するようになった。業界各社は問題への対策として、資金を投じると約束している。
使い捨てプラスチックは今や重要課題として取り上げられ、多くの人が使用量を減らすためにできることをしている。しかし、こうした動きが、より深刻な環境問題から都合よく目をそらすことにつながっているとしたらどうだろうか。私たちは、学術誌『Marine Policy』に掲載された新しい論文で、プラスチック汚染、より正確には、プラスチック汚染に対処する政府や産業界の対応が、気候変動などの真の環境脅威への対策から目をそらさせる「都合のよい真実」を提供していると論じている。
確かに、プラスチックが鳥や魚、海洋哺乳類に絡みつくことは知られている。こうした動物は、胃の中がプラスチックでいっぱいになって餓死することもある。それでも、プラスチック汚染が個体群レベルに及ぼす影響について、決定的な研究はない。毒性の影響、とりわけ人間への影響は、しばしば誇張されている。研究によると、例えばプラスチックは、気候変動や乱獲ほど海洋への大きな脅威ではない。
プラスチック汚染は簡単に解決できるのか?
再利用できるコーヒーカップを持ち歩いたり、紙ストローだけを提供するレストランチェーンで食事をしたりして、プラスチックに反対の意思を示すのは、典型的な新自由主義的対応だ。市場を動かすのは消費者であり、消費者の選択が業界に変化をもたらすという考え方である。
代替製品には、異なるものの、同じように深刻な環境問題が伴うことも多い。また、消費者主導のこうした小規模な変化がもたらす利点は、しばしばわずかだ。例えば、省エネ電球を使っても、実際には個人の総カーボンフットプリントへの影響はごく小さいことが示されている。
しかし、こうした小さな変化によって、プラスチック問題はなお、私たちが対処できる問題として映る。オーシャン・クリーンアップは、プラスチック汚染を解決するため、海からプラスチックをすくい取ることを目指す典型例だ。このプロジェクトに対する多くの科学者の懸念や、最近プラスチックの回収を試みて失敗したにもかかわらず、多くの人にとってこのプロジェクトは魅力的なままだ。大きなライフスタイルの変化をしなくても、問題に取り組めるからだ。
プラスチック汚染の本当の問題
これはプラスチック汚染が問題ではないということではない。むしろ、私たちが暮らす世界は、気候変動をはじめ、はるかに大きな問題に直面している。
昨年10月、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化を1.5˚Cに抑えるために必要な抜本的対策を詳述した報告書を発表した。報道の多くは、個人が何をしてカーボンフットプリントを減らせるかに焦点を当てたが、集団的な行動の必要性を示した記事もあった。
このメッセージが重要であるにもかかわらず、環境報道ではプラスチック汚染の問題が大きく取り上げられてきた。そのため、多くの人が海洋プラスチックを地球にとって最も深刻な環境脅威だと考えるのも不思議ではない。しかし、実際はそうではない。2009年、さまざまな環境脅威に対する地球の安全な活動限界を示す概念として、プラネタリー・バウンダリーが提唱された。
生物多様性の損失、窒素の流れ、気候変動の3つの境界を超過していることが示された。気候変動と生物多様性の損失は、中核的なプラネタリー・バウンダリーとも考えられており、長期にわたってこれらの境界を超えると、地球はより住みにくい新たな安定状態へ移行する可能性がある。
気候変動と生物多様性の損失という「差し迫った明白な危険」は、70億人を超える人々を支える地球の能力を損ない、住まいや食料源、生計手段の喪失を招くおそれがある。気温上昇や海面上昇によって多くの地域が居住不能となり、私たちの暮らしに大きな混乱をもたらす可能性もある。こうした変化は、今世紀中に始まる可能性がある。
ライフスタイルの抜本的な見直し
プラスチック汚染を減らすことで環境を守るため、すでに重要な措置がいくつか講じられている事実を軽視するものではない。しかし、あらゆる環境問題に取り組むには、国際的に大規模なシステム変革が必要だということを忘れてはならない。これには、プラスチック問題に対する、より長期的で効果的な解決策に加え、消費を減らし、経済を脱炭素化し、物質主義を幸福の基盤とする考え方から脱却するための、より抜本的で大規模な取り組みも含まれる。
気候変動などの大きな課題の根底にある、過度に消費主義的なライフスタイルを問い直し、持続可能な消費者の選択、例えばテイクアウトコーヒーを再利用可能なカップで買うことだけに焦点を絞るのではなく、暮らし方そのものをより持続可能にする必要がある。私たちは選択を少し変えるのではなく、暮らし方を改めなければならない。
とりわけ気候変動という重大な課題に対処する機会は、限られた期間しか残されていない。対処に失敗すれば、地球が生命、とりわけ人類を支える能力に、システム全体に及ぶ甚大な影響が生じる可能性がある。今は、プラスチック汚染という都合のよい真実に気を取られている場合ではない。プラスチックがもたらす比較的小さな脅威は、気候変動がもたらす地球規模のシステム的脅威によってかすんでしまうからだ。





