気候変動により、水循環は予測よりも速いペースで変化している。
水循環の大きな変化により、乾燥地域はさらに乾燥し、湿潤地域は一層湿潤になっている。
その結果、干ばつや極端な洪水が増えると科学者たちは述べている。
科学者たちは、これもネットゼロ排出へ迅速に移行しなければならない理由の一つだと指摘する。
淡水は海から大気へ、雲へ、川へと循環し、再び海に戻る。この絶え間ない循環は、いつも確実に水が得られるという錯覚をもたらす。淡水はいつでも蛇口から出てくる。そうだろうか?
残念ながら、それは保証されていない。気候変動によって、水循環が陸地に水をもたらす場所が変わり、乾燥地域はさらに乾燥し、湿潤地域は一層湿潤になっている。
私たちの研究は2月23日にNatureに掲載され、海洋の変化に基づき、水循環が私たちの考えていた以上に速く変化していることを明らかにした。
この憂慮すべき発見は、水循環が見分けのつかないほど変化してしまう前に、大気を温めるガスの排出を止める必要性が、ますます差し迫っていることを示している。
深刻に聞こえるかもしれないが、実際に深刻だ。淡水を利用できることが、現代社会を成り立たせている。
水循環はすでに変化している
地球が温暖化するにつれ、水循環は「湿潤地域はさらに湿潤に、乾燥地域はさらに乾燥する」というパターンで強まり始めている。
その結果、地球の乾燥地域から淡水がますます流出し、湿潤地域へ移動している。
具体的にはどのような変化だろうか?激しさを増す気象現象だ。比較的乾燥した地域では、より激しい干ばつがより頻繁に起きる。比較的湿潤な地域では、さらに激しい嵐や洪水が増える。
米国西部を襲う大規模な干ばつや、ドイツで起きた前例のない洪水、あるいはムンバイのような都市で激しい降雨が増えていることを考えてほしい。
この変化はすでに起きている。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、画期的な2021年の報告書で、増え続ける研究成果を踏まえ、気候変動がすでに水循環に長期的な変化をもたらしていると結論づけた。
現在見られる変化は始まりにすぎない。今後数十年で水循環の強まりが進めば、地球の広い範囲で、人々が安定して淡水を得ることがはるかに難しくなる可能性がある。
懸念されるのは、水循環が強まっていることは分かっていても、その程度や速さを十分に把握できていない点だ。そこで海洋が鍵となる。
海洋を雨量計として利用する方法
水循環の変化を直接測定するのが難しい主な理由は、地球上の降雨量と蒸発量に関する測定データが十分にないことだ。
現実的に考えて、地表の70%を占める水域に恒久的な雨量計や蒸発皿を設置するのは非常に難しい。さらに、長期的な変化を評価するには、数十年前の測定値が必要となる。
科学者たちがたどり着いた解決策は、海洋を利用することだ。海の塩分濃度は地域によって異なることを知らない人も多いかもしれない。例えば、平均すると大西洋は太平洋より塩分濃度が高い。
なぜだろうか。雨だ。海に淡水が雨として降ると、海水が薄まり、塩分濃度が下がる。海面から水が蒸発すると塩分は残り、塩分濃度が上がる。つまり、記録がより豊富な海洋の塩分濃度の変化を、雨量計のように利用して水循環の変化を検出できる。
これまでの研究では、この方法を用いて海面の塩分濃度の変化を追跡してきた。その研究は、水循環が劇的に強まっていることを示唆していた。
残念ながら、海洋は一般的な雨量計のように静止してはいない。海流や波、円形の渦流によって、海水は絶えず動いている。この不確実性のため、塩分濃度と水循環の変化との関係が実際にどれほど正確なのかは疑問のままだった。
そこで私たちは、海洋の塩分濃度の変化を、水循環のうち淡水を暖かい地域から寒冷な地域へ移動させる部分の変化と正確に結びつける新たな手法を開発した。私たちの推定から、大気中、陸上、そして海洋を通じて水循環全体がどのように変化しているかが分かる。
私たちの新たな研究で何が分かったのだろうか。シドニー湾の水量の12万3,000倍に相当する淡水が、1970年以降、熱帯からより寒冷な地域へ移動した。水量にして推定4万6,000~7万7,000立方キロメートルに当たる。
これは、水循環が最大7%強まったという推定と一致する。つまり、湿潤地域では雨が最大7%増え、乾燥地域では雨が7%減る(または蒸発量が増える)ことを意味する。
これは、複数の過去の研究による推定値の上限に近い。それらの研究では、強まりは2~4%程度とされていた。
残念ながら、これらの発見は、水循環に壊滅的な変化が起きる時期が、従来の想定より早まっている可能性を示唆している。
水循環が変化した未来はどのようなものになるだろうか?
水循環がより速いペースで強まれば、極端な干ばつや降雨現象はさらに激しく、頻繁になる。
世界各国の政府が目標を達成し、地球温暖化を2℃に抑えたとしても、IPCCは、極端な現象の強さは基準期間である1850~1900年と比べて平均14%増すと予測している。
昨年のIPCC報告書が明らかにしたように、影響の大きさは人々や生態系によって異なる。例えば、地中海沿岸諸国、オーストラリア南西部と南東部、中米は乾燥化する一方、モンスーン地域や極地はより湿潤になる(または雪が増える)。
こうした水循環の変化に見舞われる乾燥地域では、海水淡水化などの代替策を導入しない限り、都市の存続が現実に脅かされると予想される。
私たちは何をすべきだろうか。答えはもう分かっているはずだ。
数十年にわたる科学研究により、温室効果ガスの排出と地球温度の上昇との間には極めて明確な関係があり、それがひいては水循環を強めることが示されている。
気候変動による被害を減らすため、可能な限り速やかにネットゼロ排出へ移行しなければならない理由が、また一つ加わった。
私たちが観測した水循環の変化は、主に20世紀半ば以前の過去の排出によるものだった。それ以降、私たちは排出量を大幅に増やしてきた。
これからどうなるかは、すべて私たち次第だ。







