企業は、炭素排出量を大幅に削減する取り組みを加速させる必要があります。
自社のカーボンフットプリントに対処し、持続可能性への取り組みを示すことは、今やビジネスの観点からも理にかなっています。
排出削減の可能性が最も大きい分野を理解するには、あらゆる企業にとってカーボン会計ソリューションが不可欠です。
温室効果ガス(GHG)の排出により、世界の地表温度は産業革命前から1.1°C上昇しています。気候変動はすでに、水不足、食料不足、価格の急騰、農業や漁業への深刻な影響、そして大規模な種の絶滅を引き起こしています。
国連環境計画(UNEP)の排出ギャップ 報告書2022は、「1.5°C目標を達成する信頼できる道筋は現時点で存在しない」とし、「2030年までの現在の行動公約がすべて実行されたとしても、地球温暖化は約2.5°C進み、世界各地で壊滅的な異常気象が発生する」と述べています。つまり、企業はGHG排出量、とりわけ炭素(CO2)排出量を大幅に削減する取り組みを加速させる必要があります。
地球の限界の範囲内で事業を営む
人間活動による温室効果ガスの排出が気候変動の明白な原因であることは、2021年のIPCC報告書で述べられています。地球システムのレジリエンスと安定性を確保するためには、地球の限界の範囲内で事業を営む必要があります。そうすることでのみ、取り返しのつかない損害を回避できます。今後数年間は極めて重要であり、2030年までに排出量を45~50%削減し、世界全体で2050年代前半にネットゼロを達成する必要があります。世界の気温を安定させるにはネットゼロの達成が不可欠であり、「従来どおり」の事業継続は選択肢になりません。
高まる規制圧力
炭素関連の規制が増加し、それに伴って排出量の報告を求める声も高まっています。EUは炭素排出削減に向けた目標と施策を定めており、なかでも最近採択された企業サステナビリティ報告指令(CSRD)が注目されています。CSRDにより、大企業にも炭素排出量の報告が求められる見込みで、中小企業も対象に含まれる可能性があります。
EUの計画はGHG報告にとどまらず、監査人による監査と結果の検証も求められます。米国では、GHG報告が大規模なGHG排出事業者に義務付けられており、カリフォルニア州やマサチューセッツ州の地球温暖化対策法のように、より厳しい独自の法令を設けている州も複数あります。世界各国で同様の動きが広がるなか、GHG報告、とりわけカーボン会計を先取りして進めることは、あらゆる企業にとって重要になっています。
世界経済フォーラムは、どのようにエネルギー転換を推進しているのでしょうか。
エネルギー・素材センターは、エネルギー、素材、産業システムを変革する複雑な移行について理解を深めるため、リーダーたちをつなぎます。エネルギー安全保障、手頃な価格、持続可能性がどのように交わるかを探る場を提供しています。
バリューチェーンや地域を越えた協働を通じて、同センターは、パートナーが安全で低炭素かつ公平な移行に向けた実践的な解決策で足並みをそろえられるよう、共通の道筋を示します。
長期的な事業の持続可能性
顧客は企業が環境に与える影響をますます意識し、変化を求めています。自社のカーボンフットプリントに対処し、持続可能性への取り組みを示すことは、ビジネスの観点から理にかなっています。たとえば、昨年実施された調査では、消費者の83%にとって、持続可能な事業運営を行う企業から購入することが非常に重要だとわかりました。
同様に、英国だけでも、倫理的な消費は10年間で550億ユーロから1,170億ユーロへと倍増しました。先駆者となることで、持続可能性を競争優位の一つにでき、人材としてZ世代やミレニアル世代の従業員を採用しやすくなります。また、資本や資産へのアクセスにおいて、ESG戦略や実績報告を重視することにもつながります。
どこから始めるべきか
多くの企業がすでにサステナビリティ報告を担う部門を設置していますが、取り組みを始めていない企業が大半です。DevelopMindedは、カーボン会計の始め方に関する知見と、企業のカーボンフットプリント削減に向けた17種類のカーボン会計ソリューションの比較をまとめた『カーボン会計を理解する:2022年報告書』を発表しました。
この報告書は、最も重要な機能、ソリューションの仕組み、最適な組織の種類など、自社固有のニーズに合ったソリューションを選ぶ際の時間と費用の節約に役立ちます。カーボン会計ソリューションは、排出削減の可能性が最も大きい分野を把握し、排出削減の取り組みを実施できる場所を特定し、その実績を追跡して得られた効果を定量化するうえで、あらゆる企業に不可欠です。
スコープ3排出量への課題
削減の最大の可能性は、組織の外部で発生し、直接測定できない排出量にあります。これらはスコープ3排出量と呼ばれ、企業にとって最も大きな課題となっています。カーボン会計の観点からこうした排出量に対処するソリューションは、まだ開発途上です。世界経済フォーラムは最近、この課題に取り組む「産業ネットゼロ・アクセラレーター」イニシアチブを立ち上げました。
カーボン会計とサステナビリティ変革
カーボン会計は目的を達成するための手段です。適切なデータの収集と分類、そして企業の現状や改善可能な点に関する有益な知見の提供を担います。データに基づくアプローチは、意思決定者がサステナビリティ変革の取り組みを加速させるうえで不可欠です。
また、カーボン会計だけが重要なサステナビリティ施策ではないことにも留意が必要です。残念ながら、気候危機はすでに超過した複数の地球の限界の一つにすぎず、GHG排出量とネットゼロはサステナビリティ変革の一部にとどまります。





