カナダの村リットンを襲った壊滅的な山火事の後、自治体の指導者とブリティッシュコロンビア州政府は、気候変動に備えて地域社会を将来にわたって守るという現実に苦慮している。
この町には、省エネで耐火性の高い資材を使って地域社会全体を再建するまたとない機会があるが、その過程には費用も時間もかかる。
2021年6月、リットンの建造物の90%が焼失し、その13カ月後も、灰や瓦礫が撤去された敷地はわずか4分の1にとどまっている。
多くの住民が今も仮住まいを続ける一方、長期的な災害軽減計画やネットゼロの目標は、保険の補償限度や費用の問題に直面している。
山火事がカナダ西部の村リットンを壊滅させてから1年、住民、自治体の指導者、ブリティッシュコロンビア州政府は、気候変動に備えて地域社会を将来にわたって守る取り組みの、時間と費用がかかる現実に直面している。
人里離れたこの村は、ブリティッシュコロンビア州内陸部の高く乾燥した山々にあるフレーザー川とトンプソン川の合流点に位置し、山火事や地滑りの格好の標的となっている。2021年6月、村でカナダ史上最高気温が記録された翌日、リットンの建造物の90%が焼失した。続きを読む
今、当局者には、耐火性の高い資材と省エネ建築基準を用いて、地域社会全体を一から再建するまたとない機会がある。
しかし、長期的な災害軽減計画やネットゼロの目標は、人々の待ちきれない思いと保険会社の補償限度という現実に阻まれている。火災で家を失った住民の多くは今も仮住まいを続けており、家を再建して生活を立て直したいと考えている。
「理想的なことと現実的なことには、はっきりとした違いがあります」と、火災で自宅を失ったトリシア・ソープさん(61)は語った。
「耐火性を高めた建築に反対する人はいないと思います。でも、彼らは模範的な村をつくろうとしている。太陽光パネルの歩道の話までしています」
気候変動によって破壊的な気象現象のリスクが高まるにつれ、地域社会のつくり方に注目が集まっている。
カナダ保険局(IBC)によると、カナダ全土で深刻な気象現象による保険対象損害額は昨年21億カナダドル(16億3,000万ドル)に達し、そのうちリットンの火災による損害は1億200万カナダドルだった。1983年以降、カナダの保険会社が支払った深刻な気象関連損失額は、年間平均約9億3,400万カナダドルに上る。
リットンの復興をめぐる議論は、気候変動への適応がいかに複雑な現実であるか、また、炭素排出量の削減と火災リスクの軽減のために、人々がどれほどの費用や遅れを受け入れるかを浮き彫りにしている。
人口300人の村では、より早い再建を優先し、すでに一部の高い目標が棚上げされている。
リットンの町議会は、ネットゼロ排出住宅を義務付ける建築条例の導入を目指していたが、住民の反発を受け、エネルギー効率基準を引き下げた。
村は火災リスクを下げるため、すべての電線を地中化することも検討した。3年かかる計画だったが、今は9カ月で工事を終えるため、代わりに仮設の架空線を設置している。
「知識が不足していることや、住民が私たちは再建を不可能にしようとしていると思っていることに、いら立つことがあります」と、リットンのジャニ・ポルダーマン町長は語った。
「私たちはネットゼロの第一世代の模範になれるでしょう」
ポルダーマン町長によると、歩道の舗装材の代わりに補強した太陽光パネルを敷く「太陽光パネルの歩道」と風力エネルギーで、街灯や自治体の建物に電力を供給できるという。
新たな道を切り開く
火災から13カ月が経過したが、復旧はほとんど進んでおらず、灰や瓦礫が撤去された敷地はわずか4分の1にとどまっている。
地元の町議会は、カナダでこれまでに策定された中で最も包括的なものとなり、リットンを国内で最も保護された地域社会にするとする、火災安全に関する建築条例の最終調整を続けている。
新条例は、山火事が起きやすい地域での地域社会づくりに関するカナダ国立研究評議会の専門知識に基づき、建築資材から造園や維持管理、敷地内に保管できる物までを網羅している。
条例の最終決定と住民協議には数カ月を要した。
「『とにかく一刻も早く住民を家に戻そう』と言っていれば、もっと早く進んだでしょう。でも、そうすれば数年後に同じ状況に陥っていたかもしれません」と、リットンで住民参加を主導する州組織、B.C. FireSmart委員会の委員長ケルシー・ウィンター氏は語った。
「多くの人が望んだより時間はかかっていますが、リットンは新たな道を切り開いています」
復興には他にも困難がつきまとった。11月には記録的な洪水で地元の幹線道路が流され、冬の間も雪崩対策のため断続的に通行止めとなった。
さらに、村はNlaka'pamuxファースト・ネーションの領域内にあり、住民は再建前に先住民の遺物がないかを確認する考古学調査を受ける必要がある。Nlaka'pamuxの一部であるリットン・ファースト・ネーションも、2021年の火災で数十軒の住宅を失った。
保険の限界
リットン住民のおよそ60%は無保険または保険不足で、誰が費用を負担するかを住民と保険会社が協議する間、瓦礫の撤去が遅れた。州政府は3月、瓦礫撤去、考古学調査、土壌浄化の費用として1,840万カナダドルを提供すると発表した。
一方、住民には時間がなくなりつつある。災害後、通常18~24カ月間支給される保険会社の仮住まい手当がまもなく終了するためだ。さらに、新しい建築条例に盛り込まれる住宅の改良費用を、保険会社は支払いたがらない。
「保険で元に戻せるのは、以前あった建物です。あなたが望む建物ではありません」と、カナダ保険局太平洋地域担当副会長のアーロン・サザーランド氏は語った。
リットンの火災安全条例の策定に協力したカナダ災害損失削減研究所(ICLR)は、条例の導入によって再建費用が約5,000カナダドル増えると見積もっている。
サザーランド氏によると、保険会社は耐火性を高める利点を認めている一方、エネルギー効率を高め、炭素排出量を削減する改良には、住宅1軒当たり「数万」ドルが上乗せされる。
「人々が保険契約を結んだとき、その内容は当時の条例と、保険会社が支払うと見込んでいた金額に基づいていました」と同氏は付け加えた。
建築物からの排出は、カナダの温室効果ガス総排出量の13%を占めており、その大幅削減はカナダ政府の気候目標の重要な要素だ。
オタワは不足分の一部を補うため、基本的な再建保険に加入し、ネットゼロまたは耐火性の高い住宅を再建したい住宅所有者に600万カナダドルを提供する。
一方、リットンはまたしても山火事の季節を迎えている。7月14日、リットンの対岸で山火事が発生し、少なくとも6軒の建物が焼失した。
昨年、ブリティッシュコロンビア州では1,642件の山火事が発生し、869,279ヘクタール(210万エーカー)が焼失した。これは、2010~2020年の平均である火災1,352件、焼失面積348,917ヘクタールを上回る。
再建の遅れに耐えかねている住宅所有者もいる。村の境界のすぐ外に住むトリシア・ソープさんは建築許可を得ずに再建を進めており、他の人々は別の場所へ移っている。
「再建するつもりでしたが、もう再建できるとは思っていません」と、築100年の鮮やかな黄色い自宅が焼失した退職看護師のミケーレ・ファイストさん(59)は語った。「あらゆる段階で対応が不十分でした。私は恨みがましい人間ではありませんし、物事を現実的に見ようとしています。でも、故郷が恋しいです」






