世界の経営幹部は、企業が気候変動対策に取り組む必要性を認識している。
その一方で、自社を実質的に変革することには苦慮している。
実際にサステナビリティに向けて断固たる措置を講じている企業は、わずか5分の1だ。
11月に開催された約200カ国が参加する国連気候変動サミットでは、炭素取引のルールが議論され、メタンガスによる汚染、森林破壊、石炭への資金提供について新たな公約が示され、気候変動との集団的な闘いを加速することで合意した。多くの成果があった一方、進展は十分だったのかと疑問を抱きながらグラスゴーを後にした人も多かった。
気候変動対策の歩みは、真の変化には大胆な集団行動が必要だと理解できる段階にまで来ている。そして、緊急に行動して初めて変化が実現する。COP26が過去のものとなった今、企業はここからどこへ向かうのだろうか。
デロイトは2021年9月から10月にかけて、21カ国の経営幹部2,000人超を対象に調査を実施し、気候変動への対応と環境サステナビリティの推進に関するビジネスリーダーの懸念や戦略を調べた。リーダーたちが、求められる期待に応えるために自社をどのように変革しているのかを明らかにすることが目的だった。
同様のデロイト・グローバル調査が8カ月前に実施された時と比べ、地球の気候に対する経営幹部の懸念が高まっていることが分かった。同時に、楽観的な見方も強まっている。回答者の約90%が、直ちに行動すれば気候変動の最悪の影響をなお抑えられると答えた。前回の調査では、この割合はわずか63%だった。
しかし、デロイトの 『2022年CxOサステナビリティ報告書:意欲と影響の隔たり』 は、気候変動関連の活動が相次いでいるにもかかわらず、CxO(経営幹部)は気候への配慮を企業文化や戦略に根付かせること、そして実質的な変革を実現するために幅広い上級幹部の賛同を得ることに苦慮していると明らかにしている。
危機感が行動を促す
気候変動がもたらす惨状を目の当たりにしてきた世界の経営幹部にとって、気候変動は大きな懸念事項だ。調査対象者の97%は、自社がすでに気候変動による悪影響を受けていると答え、63%は今後も被る恐れのある被害について、自社が懸念している、または非常に懸念していると回答した。10人中8人は、過去1年間に気候変動関連の事象から個人的な影響も受けたと答えている。
規制当局や政府をはじめとするステークホルダーからの圧力も感じている。投資家や株主からの圧力が、ある程度または大いに気候問題への注力を促していると答えた人は、10人中7人を超えた。一方、CxOの4分の1は、同じ投資家や株主から短期的な事業課題に注力するよう求められることが、サステナビリティの取り組みを進める妨げになっていると答えた。

多くのリーダーは、自社、ひいては人類そのものの未来が、企業による二酸化炭素排出量の大幅削減と、よりサステナブルな慣行の定着にかかっていると理解している。彼らはこの課題に、ふさわしい重みと緊急性をもって取り組んでいる。CxOの3分の2は、自社がよりサステナブルな素材を使用し、エネルギー利用の効率を高めていると答えた。半数を超える企業が、省エネ型または気候に配慮した機械、技術、設備を導入している。また、多くの企業が意図的に航空機の利用を減らしている。
気候変動の進行を遅らせるという企業の決意は明らかであり、取り組みも勢いを増している。CxOは自社の活動に大きな手応えを感じており、63%が、自社は全業界を通じて、あるいは少なくとも同業他社の中で、取り組みを主導していると考えている。
真のリーダーシップとは
この数字に疑問を感じるのは、あなただけではない。あらゆる事業分野で、企業のほぼ3分の2が先駆者になれるという考えは、受け入れ難い。気候変動との闘いのように複雑で、始まってから比較的日が浅い課題では、なおさら疑問が残る。
調査結果を詳しく見ると、異なる実態が浮かび上がる。ある特定のグループのCxOは、気候変動への懸念がより強く、今後数年間に気候変動が自社の事業戦略に影響するという現実をより直視している。また、2030年までに自社がネットゼロ排出を達成できるとの見方がより楽観的で、コストをサステナビリティ推進の障害とみなす傾向が弱い。さらに、サステナビリティが収益、ステークホルダーの満足度、より広範な業績にもたらす利点を理解している。
回答者の19%を占めるこの企業グループに共通する点は何だろうか。これらの企業は、他社を大幅に上回る割合で、効果を大きく左右する5つのサステナビリティ施策のうち少なくとも4つを実施している。次のような取り組みを行う可能性が、はるかに高い。
気候に配慮した新たな製品やサービスを開発する
サプライヤーやビジネスパートナーに、具体的なサステナビリティ基準の遵守を求める
気候変動の影響に対する施設の耐性を高めるため、改修または移転する
ロビー活動や政治献金に気候への配慮を取り入れる
上級幹部の報酬をサステナビリティの実績に連動させる
調査対象者の3分の1超は、これらの施策のうち2つ以上をまだ実施しておらず、14%はどれにも着手していない。
意欲と影響の隔たり
多くのビジネスリーダーの見解や動機、自社が講じている行動、そしてその影響の間には、明らかな隔たりがある。データが異なる実態を示唆しているのに、なぜ多くのリーダーは自社を気候変動対策のリーダーとみなすのだろうか。また、実質的な変化を生み出す効果の大きい施策に取り組む企業が、なぜもっと増えないのだろうか。
その理由の一端は、進展を妨げると認識されている障壁にあるのかもしれない。短期的な事業業績に注力するよう求める圧力に加え、多くのCxOは、環境への影響の測定の難しさ、サステナブルな、または低排出の投入資材の供給不足、コスト、そして必要な取り組みの規模の大きさを挙げた。
低炭素の未来への移行に伴う短期的なコストに苦慮し、より大胆な気候変動対策を避けている人もいるかもしれない。自社の現在の環境サステナビリティ施策から期待する13の潜在的な利点を尋ねたところ、評価が最も低かった5項目は、既存事業と新規事業の双方からの収益、資産価値、投資コスト、営業利益率だった。
最後に、気候変動への個人的な懸念があっても、企業のリーダーシップが気候を優先課題としていないために、危機感が薄れているCxOもいるのかもしれない。調査対象者の4分の1は、現状を変えるよう取締役会や経営陣からほとんど、あるいはまったく圧力を受けていないと答えた。
どんな選択も小さくない
環境への懸念と変化への楽観的な見方はどちらも依然として強いが、気候変動の最悪の影響を抑えるため、企業はより断固たる行動を検討する必要性が高まっている。
直ちに行動すれば、最悪の影響をなお抑えられると考える調査回答者に、私は同意する。しかし、行動を影響と、決意を進展と取り違えてはならない。
企業の二酸化炭素排出量削減に向け、世界経済フォーラムはどのような支援を行っているのか?
気候変動との闘いは選択肢の問題ではなく、何十億もの選択の積み重ねだ。どんな行動も小さくない。ただし、他より大きな影響をもたらす活動や判断があり、今こそビジネスリーダーによる大胆な行動が必要だ。まだ良い影響を生み出せるうちに、課題に立ち向かう力があることを証明する時だ。




