第四次産業革命の技術は社会を変革し、私たちの未来を形作っています。
こうした技術は並外れた機会をもたらす一方で、人工知能の進歩による労働力への影響、プライバシーや表現の自由への圧力、遺伝子技術にどのような制限を設けるべきか(あるいは制限を設けるべきでないのか)、そして資本の所有者とそれ以外の人々との経済的・社会的格差の拡大など、さまざまな課題も生み出します。
そのため、倫理的枠組み、規範的基準、価値観に基づくガバナンスモデルをより明確に示すことが求められています。これらは、社会における強力なツールの開発と利用を組織が導く助けとなり、地理的・政治的な境界を越えた、人間を中心とする開発アプローチを可能にします。
人間の尊厳、共通善、そして責任ある管理
世界経済フォーラムの「価値観に関するグローバル・アジェンダ評議会」が2016年に発表した報告書『価値観と第四次産業革命:価値、利益、目的を結びつける』は、人間の尊厳、共通善、責任ある管理という3つの普遍的価値を示しています。同評議会は、社会契約の創設に関する2014年の取り組みにおいて、「基本的な普遍的価値と倫理に関する合意、ならびに各国の法令や規制、国際経済協定にこれらの価値を反映させる必要性についての合意」を求めました。
人権は価値観の「実効性を担保する核心」であり、国際的な人権枠組みは、こうした課題に取り組むための実質的な基盤となります。

世界人権宣言(UDHR)は1948年に採択され、前例のない192カ国が署名しました。多様な文化にまたがって適用できる、普遍的な原則を掲げています。
世界人権宣言は、ホロコーストの全貌とその恐怖が明らかになり、世界が衝撃に揺れるなか、国際連合によって採択されました。当時、人類にとってより希望に満ちた新たな未来を築こうという世界的な願いがありました。起草小委員会の委員を務めたチリのエルナン・サンタ・クルスが述べたように、この宣言は何よりもまず、世界共通の価値観を表すものとして構想されました。
「私は、真に重要な歴史的出来事に参加しているのだとはっきり感じていました。そこでは、人間という存在の至高の価値について合意が成立していました。その価値は、世俗的な権力者の決定に由来するのではなく、人間が存在するという事実そのものに由来するのです。」
平等、公正、正義
世界人権宣言は普遍的な基準を定め、これまで各国などが、刑事司法から環境、世界的な開発から貿易、安全保障から移住に至る幅広い課題について、法律や政策を策定する取り組みを支えてきました。
世界人権宣言と、その規定を詳述する一連の法的拘束力を持つ条約は、新たな、そして高度化する技術に支えられた、人々と地球を中心に据えるイノベーションの議題において、平等、公正、正義を推進するための不可欠な基盤を、民間組織、国際機関、各国に提供します。
こうした世界的な権利基準は、各国が公的な行為を規律するために採択したものですが、民間部門にも適用されるようになっています。例えば、グローバルなサプライチェーンにおける労働者の権利の問題に取り組もうとするグローバル企業や、プライバシーと表現の自由をめぐる問題に直面する情報通信企業は、権利の枠組みを用いてこれらの懸念に対処するよう求められています。同様に、遺伝子編集技術は驚くほど新しく、期待に満ちたものですが、人権基準は、人間の苦しみを和らげる取り組みと、新たな科学的ツールの適用に伴うリスクや不確実性との均衡を図るなかで直面する、ガバナンス上の選択に対処する助けとなります。
第四次産業革命は、私たちがどのような社会で暮らしたいのかという、より広い問いをめぐる議論に根ざす必要があります。今日、テクノロジーが人々の力を高める可能性は計り知れませんが、技術が人々や日々の暮らし、人権の享受に及ぼす影響に、引き続き注目しなければなりません。
もはや、これは各国や国際機関だけの領域ではありません。民間部門が主導的な役割を果たす必要があります。まず民間組織とそのステークホルダーは、自らの価値観を世界人権宣言および関連する人権基準に照らして見直し、自らの行動を測定・評価できる仕組みを構築すべきです。
著者:ヒラリー・サトクリフは、フォーラムの「価値、イノベーション、政策に関するグローバル・フューチャー評議会」の共同議長です。アンヌ=マリー・オールグローブは、2016~2018年に「人権に関するグローバル・フューチャー評議会」の委員を務めました。
本稿は当初、クラウス・シュワブ(世界経済フォーラム創設者兼会長)の著書『第四次産業革命を形作る』に掲載されました。


