メイカースペースは、スマートシティを真にスマートにする鍵となるのか

Once the domain of DIY tinkerers, these hubs of urban experimentation are driving the circular economy.Image: Reuters/Michael Dalder
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気候変動に関するパリ協定を受け、都市は、世界の排出量を大幅に削減する賢明な解決策が生み出される実験室と、ますます見なされるようになった。

一般に規模が大きく扱いにくいため、実験対象として適さない国とは異なり、都市は、規模とガバナンスの両面から、レジリエンスとサーキュラリティを通じて持続可能性を実現する設計を理解するうえで理想的な環境だ。この2つは、将来にわたって持続する社会を形づくる最も重要な要素だと言ってもよい。

提案がうまくいかないことも当然あるが、都市なら大きな混乱なく、計画を練り直せる。また、解決困難な問題に対する拡張可能な解決策を見いだせば、都市は革新的な公共調達モデルを通じてその創意工夫の恩恵を得ながら、解決策の普及を後押しできる。

機動力のある公共サービス

低コストの高度なセンサーからビッグデータ、機械学習まで、実用化が進む一連の新技術には、モノやサービスの流入・流出を可視化する力がある。これにより都市は、消費や廃棄物の発生パターンを精密に追跡できる。こうしたデータセットは、サプライチェーンを短縮し、地域経済の循環性をさらに高めるための設計の基盤となる。

大規模な官僚組織は変化への対応が極めて遅いことで知られる一方、メイカーたちはすでに、モノの生産やサービスの提供に向けた、より優れた、よりスマートで効率的な解決策を生み出している。いまこの瞬間も、世界各地のメイカーコミュニティが、地域の事情に合わせ、より低コストで高い価値を提供する、機動力のある新世代の公共サービスの設計図づくりに取り組んでいる。

共通の未来への道筋を切り開くうえで都市が果たす重要な役割について、新たな理解が広がり、スマートシティ構想への関心が再び高まっている。スマートシティ事業は、使命を果たせなかったり、維持費が高くなりすぎたりする例もあり、成果はまちまちだ。しかし、新たな要素であるメイカームーブメントが加わることで、スマートシティを真にスマートにする鍵となる可能性がある。

メイカースペース、ハッカースペース、FabLabの検索数の推移(Google検索)

メイカーはいかに地域に根ざしているか

2000年代初頭にメイカームーブメントが登場した当初、広くDIY現象と見なされていた。ブリコラージュをデジタル時代へと持ち込み、愛好家が、いわゆるメイカースペースやハッカースペース、またはFabLabsと呼ばれる場所で、3Dプリンター、レーザー・カッター、ビニール・カッター、CNCフライス盤などのツールを利用できるようにした。

しかし過去10年で、このムーブメントはソフトウェアとハードウェアの統合を試作する、グローバルなエコシステムへと変化した。先端的な生産手法を試す非公式な場だった場所は、プログラミングと高度な電子機器の製作の両方ができる次世代の技術者が、急速に技能を磨く場となりつつある。

メイカースペースは、IoT機器から再生可能エネルギー発電所まで、あらゆるものの構想、改良、実現を進める場へと急速になりつつある。こうしたスペースは、都市規模の大規模な実験のための研究室となり、新たな公共調達モデルの形成を後押しする可能性もある。

このムーブメントは、首都以外の都市で進む衰退を食い止める取り組みにもなっている。メイカースペースは地域住民の技能基盤を育て、最先端の製造業を都心に呼び戻し、人々が消費する品をその場で作るという新たな機会を提供する。現地生産は製品のカーボンフットプリントを削減する効果的な方法であるだけでなく、長期的な雇用機会を生み出し、第4次産業革命で成功するための技能を住民に身につけてもらう方法でもある。

始まりはどこだったのか

メイカームーブメントの起源は、マサチューセッツ工科大学(MIT)のビッツ・アンド・アトムズ・センターにある。同センターはMITのニール・ガーシェンフェルド教授の発案によるものだ。2001年、ガーシェンフェルドは、FabLabとして知られる同様のスペースを各地で再現するためのガイドラインを策定し、構想の世界的な普及を後押しした。現在、世界には1,244のFabLabがある。

プロジェクトが急速に拡大するなか、ガーシェンフェルドと、カタルーニャ先端建築研究所の協力者ビセンテ・ガジャルテは、ひとつの都市に複数のメイカースペースを集積することで生まれる相乗効果に気づいた。都市に広がるFabLabの相互接続ネットワークは、地域住民にサービスを提供すると同時に、新世代の専門家を育むデジタル化推進チームを生み出せると、彼らは考えた。

こうして2014年7月、Fab City Global Initiativeがバルセロナで開催された年次会議Fab10で正式に発足した。同会議で、当時のバルセロナ市長シャビエル・トリアスは、2054年までに市内で消費されるものの半分をバルセロナ市内で生産するという目標を掲げた。

この決定の背景には、スペインを特に深刻に襲った2008年の壊滅的な金融危機後に、新たな経済機会を生み出す重要性を市長が明確に理解していたことがある。トリアス市長はFabLabに、地域の解決策が芽吹き、地域のサービスやノウハウ、雇用を提供する地元企業へと成長するための枠組みを整える、三方よしの機会を見いだした。

現在、Fab City Initiativeには、ボストン、アムステルダム、コペンハーゲン、ケララ、深圳など18の都市・地域が参加しており、新たな加盟都市が数週間ごとに加わっている。都市が地域生産を拡大し、自給自足型で循環型になることを支援するため、現在ブロックチェーンを基盤とした情報共有プラットフォームを開発している。

アムステルダムのFab City

Fab City Global Initiativeの次回の大規模な集会は、2018年7月にパリで開催される予定だ。気候変動に取り組む巨大都市ネットワークC40を率いるアンヌ・イダルゴ市長は、明確な支持の意思を示してこの構想を強く後押ししており、世界の主要な大都市がFab Cityに加わるきっかけとなりそうだ。

すでに多くのプロジェクトが進行中

ロンドンのMaker Mileは、ロンドン東部にある製造業者、テック系スタートアップ、スタジオ、工房の創造的な集積地であり、メイカーコミュニティが結集したときに生まれる力を示す興味深い事例だ。

この地域から生まれた特に興味深いプロジェクトのひとつがPrecious Plasticだ。デイブ・ハッケンスが2013年に始めたPrecious Plasticは、プラスチックごみを再加工し、ボウルやカップなどの日用品からテーブルのような大型品まで作るオープンソースのプロジェクトだ。Precious Plasticはごみに新たな命を与えるだけでなく、地域でのアップサイクル解決策をめぐる重要な議論にも火をつけている。

Precious Plasticはプラスチックを再加工し、ボウルやカップ、テーブルを作る。

Opendeskは、オープンソースの設計・製造を活用して従来のグローバルな家具サプライチェーンを回避するオンライン家具店で、Maker Mile発のもうひとつのスタートアップだ。

Opendeskでは、顧客がオンラインで家具を選ぶと、最寄りの製造ラボとマッチングされ、商品が現地で作られる。これにより、サプライチェーンで最もコストがかかり、環境負荷も大きい物流工程を省ける。マス・カスタマイゼーションの人気が高まるなか、OpendeskはIkeaのような大手企業に変革を迫り、少なくとも刺激を与える存在となり得る。

バルセロナはロンドンのMaker Mileに着想を得て、海沿いのエル・ポブレノウ地区にある1平方キロメートルの一角で、同様のメイカースペース集積地の形成を進めている。

都市設計とサプライチェーンを再考する

Fab City Global Initiativeは、多様なグループの力を結集し、大規模な初期投資を行わずに都市開発目標の達成を目指せるよう都市を支援する。このモデルは、技術教育、スタートアップの育成、企業の関心喚起、都市と市民双方に向けた直接的なサービス設計など、重要分野に費用対効果の高い形で影響をもたらす方法だ。

その他の主な利点は次のとおり。

• 近隣地域や都市レベルで循環型の解決策を試作し、市民の支持を得る。

• トップダウンの手順より安価で機動力があり、レジリエンスと適応力に優れた次世代の公共調達モデルを築く。

• イノベーションを支え、熟練した労働力を育成し、第4次産業革命への移行を促す。

• 段階的な再工業化を通じて、周縁化された地域を戦略的に再生する。

• 排出量削減への道筋を加速し、パリ協定の目標達成を目指す。

• 都市のブランド構築に優れた機会をもたらし、多くの雇用を生み出す可能性を高める。

メイカームーブメントは成長過程の課題を乗り越え、市民中心の解決策や社会イノベーションを可能にする存在へと成熟した。シェアリングエコノミーと暗号経済のツールを取り入れることで、サーキュラーエコノミーに対する一般的な理解を超えるものとなっている。

地方自治体、学術機関、大手企業はこのムーブメントの可能性に気づき始めている。今後数十年にわたる都市の変革において、重要な役割を担う存在になりつつある。

Fab City Global Initiativeは、都市が地域コミュニティや世界のビジネスパートナーと協力することで、機動力と対応力を備えた次世代の公共サービスの解決策を設計し、住民が第4次産業革命で成功するための技能を身につける支援をし、競争力を高め都市のレジリエンスを築く企業集積を呼び込み、やがて環境負荷を低減できることを示している。要するに、サーキュラーエコノミーへの移行を先導するムーブメントに、立ち上げ段階から加わる機会を提供する。

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都市のサーキュラーエコノミー:持続可能な都市の未来に向けたモデルの進化

トーマス・エルマコラは、受賞歴のある都市計画家・建築家、技術者、著述家、都市再生事業家で、現在はXprize Foundationのレジデント・フューチャリストを務める。ロンドンのMaker Mileと社会的インパクトを目指すMachines Room FabLabの創設者であり、MIT FabCity Initiativeの創設パートナー、第4次産業革命関連の複数のアーリーステージ・スタートアップの投資家でもある。また、世界経済フォーラムの「都市開発とサービスの未来を形づくる」イニシアチブに助言している。

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