規制と消費者の需要を背景に、サーキュラーエコノミーは戦略上不可欠なものとなりつつあります。
包括的なサーキュラー事業戦略では、ビジネスモデル、サービス、製品設計に並行して取り組む必要があります。
テクノロジーからアパレルまで、実例が示すように、サーキュラリティはイノベーションを促し、実際の効果をもたらします。
サーキュラーエコノミーが将来に向けた最も実現可能なモデルであることは、広く認められるようになりました。事業の観点からは、時代遅れのリニアエコノミー型モデルに固執するより、今すぐ戦略と業務を再設計するのが理にかなっています。
移行は加速している
欧州連合(EU)は、サーキュラーエコノミーの市場としての地位を確立しつつあります。最近採択された作業計画は、デジタル製品パスポートを導入する持続可能な製品のためのエコデザイン規則およびエネルギーラベル規則に関するもので、サーキュラーな製品設計、透明性、トレーサビリティの基盤を築いています。
たとえば、修理する権利などの規制は、修理のしやすさを高め、交換部品を提供することで、メーカーに製品の寿命を延ばすよう求めています。一方、重要原材料法は、重要原材料の輸入に対するEUの依存を減らすことを目指しています。
世界各国も同じ方向に進んでいます。たとえば、オーストラリアのサーキュラリティ・フレームワークや、チリとメキシコのサーキュラーエコノミー関連法は、生産と消費に対する新たなアプローチを反映しています。
この変化を促しているのは規制だけではありません。世界の消費者の76%が環境に配慮した製品を好んでいます。中古衣料品市場だけでも、2030年までに市場シェア23%を占めると予測されています。
サーキュラーデザインの枠組みから始める
サーキュラーエコノミーの基本原則は、よく知られています。
廃棄物と汚染を出さない設計にする。
素材の高い価値を維持できるよう、循環させる。
生態系を再生する。
持続可能な消費を通じて、意義ある暮らしを再定義する。
これらの原則は経営チームで議論を始める際の有用な出発点になりますが、事業を発展させるには不十分です。
そこで登場するのが「サーキュラーデザインの枠組み」です。2016年以降、約150社との顧客プロジェクトを通じて私が開発したこのアプローチは、3つの重点領域に沿って業務を体系的に再設計するのに役立ちます。

事業— 企業がサーキュラーな形で成功し成長するための戦略的な選択を行うこと。サーキュラーなビジネスモデルを開発し、社内の能力を高めること。サプライチェーンをサーキュラーなバリューチェーンへと発展させること。
サービス — 行動に影響を及ぼす力を理解する行動デザインを取り入れること、顧客の役割を購入者から利用者や管理者へと捉え直すこと、魅力的で使いやすい顧客体験を生み出すために顧客が達成したい事柄を理解すること。
製品 — 製品の歩みと複数のライフサイクルを当初から設計すること、人と環境に配慮した素材や化学物質を選ぶこと、価値の維持を可能にする製品機能を開発すること。
重要なのは、開発する要素を一つだけ選ぶことではありません。むしろその逆です。この3つの側面すべてを反復的に検討することが鍵であり、事業、サービス、製品を並行して開発することがサーキュラー戦略の基盤です。
理論を実践に移す
いくつかの事例が、企業のサーキュラリティへの移行を示しています。
ヘルステックにおけるサーキュラーイノベーション
持続可能な医療への高まる需要に応えるため、オランダのヘルステクノロジー企業フィリップスは、費用対効果の高いケアを提供しながら環境負荷を低減するサーキュラーソリューションを先駆けて展開しています。
事業面では、2025年末までにサーキュラーソリューションからの収益を全体の25%にする目標を掲げました。
サービス面では、再生医療機器をそろえた「Circular Edition」ポートフォリオを25%低い価格で提供しています。保守と引き取りの仕組みによって、製品の完全な循環を支えています。
一方、同社の モジュール式製品設計により、回収部品の80%を再利用でき、新規原材料の必要性を大幅に減らしています。
システム設計について、同社のサステナビリティ担当ディレクター、ハラルド・テッパー氏は次のように述べています。「医療分野自体が、かなりの汚染をもたらす分野であると認識されています。世界のCO2排出量の4.5%超、世界の資材使用量の10%を占めているからです。病院からは、当社製品の環境影響について、詳細な質問がますます寄せられています。」
サーキュラーなアパレルへの道
スウェーデンのスポーツウェア企業フーディーニも、その一例です。
同社は次の事業目標を掲げています。バリューチェーンからユーザーの利用段階までを含むフーディーニのエコシステム全体をサーキュラーに設計し、2030年までに素材、製品、知識の循環を可能にすることです。
フーディーニの再生担当リード、マルヴァ・カールソン氏は サービス設計のアプローチを次のようにまとめています。「取引ではなく、ユーザーとの関係を築きたいと考えています。どうすれば 取引中心の事業から関係性を重視する事業へと移行できるでしょうか。そして、どうすれば 製品の新しい使い方を提案できるでしょうか。」
取り組みの一つが、ストックホルムにある「フーディーニ・サークル」です。ここでは中古品、修理サービス、レンタル、サブスクリプションが、新品の購入と同等に扱われています。
製品設計のプロセスを導くため、同社は次のデザイナー向けチェックリストを作成しました。
この製品は存在する価値があるか?
十分に長く使えるか?
十分に多用途か?
美しく経年変化するか?
必要のないものを加えていないか?
修理しやすいか?
レンタルプログラムで使えるだけの耐久性があるか?
製品寿命を終えた後の解決策はあるか?
システム設計のアプローチでは、次のように問いかけています。「私たちは地球というシステムの一部として、どのような存在でしょうか。地球の限界の範囲内で、どうすれば事業を行えるでしょうか。」
同社は「プラネタリー・バウンダリー評価」を開発し、研究開発の指針として活用しています。
たとえば、新品の繊維の代わりにリサイクル繊維を使うことで、水、土地、生物多様性、土地利用に非常に大きな好影響が確認されており、生物地球化学的な排出にも良い影響が見られます。また、気候、大気、海洋、オゾン層、有害な化学物質の排出など、ほかの側面にも好影響をもたらしています。
長く着られる衣服を設計し、修理やレンタルのサービスを提供することは、プラネタリー・バウンダリーのすべてに非常に大きな好影響をもたらしました。
要するに、成功するサーキュラー戦略は付け足しではありません。サーキュラーデザインの枠組みを成す3つの柱に基づき、慎重かつ包括的に構築されます。
インタビューの抜粋は、書籍『成功のためのサーキュラー戦略』からの引用です。



