経営幹部の約33%は、製品や素材をサプライチェーンに戻すサーキュラーエコノミー関連のスタートアップによって、自社の業界が破壊的な変化を受けると予想しています。
企業と経営幹部は、サーキュラーエコノミーを大規模に導入する際の課題を理解し、独自のモデルを考案する必要があります。
このサーキュラーエコノミー戦略を成功させるには、商品や素材のトレーサビリティが不可欠です。
サーキュラーエコノミー、つまり製品、部品、素材を初回使用後に埋め立て処分するのではなく、サプライチェーンに戻す方法を見つけることは、戦略上不可欠な経営課題となっています。経営幹部にとってますます重要な戦略的差別化要因となり、顧客、消費者、規制当局からも強く求められています。サーキュラーエコノミーに取り組まない選択は、長期的な戦略上の不利益につながります。しかし、循環型への移行を進め、大規模に機能するモデルを見つけることは容易ではありません。
Bain & Companyが2021年に実施した調査によると、経営幹部の約33%は新興のサーキュラーエコノミー関連スタートアップによって自社の業界が破壊的な変化を受けると予想し、50%は今後10年でサーキュラーエコノミーがすべての企業にとって「新たな標準」になると見ています。サーキュラービジネスモデルは一過性の流行ではなく、戦略上不可欠なものです。その実現には、新たな発想、バリューチェーン全体や競合企業との新たなパートナーシップを築く力、既存の事業運営を適応・拡大し、サーキュラービジネスモデルを可能にする新たなサプライチェーンを構築する姿勢が求められます。
企業は幅広い方法でサーキュラーエコノミーに取り組んでいます。再生素材の調達を増やす、廃棄物を減らして製造する、すでに生産した製品に「セカンドライフ」の考え方を取り入れるといった、さまざまなプログラムを試験的に導入しています。多くの企業は、新たなビジネスモデルの構築よりも、既存のサプライチェーンを段階的に改善することに注力しています。達成目標への期待は高く、環境の持続可能性、短期的な財務リターン、業務パフォーマンスの向上が取り組みの動機となっています。取り組みは始まっているものの、調査対象となった施策の46%はまだ初期段階にあり、成功は容易ではありません。調査回答者の半数は、開始した施策から得られた財務的価値は低いと報告しています。
なぜ成功はこれほど難しいのでしょうか。サーキュラービジネスモデルには、企業の事業運営の根本的な転換が必要です。経済モデルの変更や新たな収益源への移行に加え、新しい事業運営やサプライチェーンによって、プロセスに新たな工程が生まれます(商品の回収は、管理すべき新たな工程として一貫して挙げられています)。また、この転換による持続可能性と財務面の効果を立証するには、高い水準が求められます。サーキュラーエコノミーという考え方はほぼ誰からも支持されていますが、実際に導入する際の業務上の現実は乗り越えるべきハードルであり、経営幹部が成功を阻む最大の要因として繰り返し挙げています。
事業運営を適切に整えるには、企業は「どの商品を回収する必要があるのか」「それらはどこにあるのか」「どう回収するのか」という重要な問いに答えなければなりません。そのためには、対象とする製品と、そこから得られる利益を把握する必要があります。それを決めた後、製品を物理的に追跡する方法と、回収する最善の方法を理解する必要があります。トレーサビリティの障壁を克服したと回答した調査対象企業は、トレーサビリティ能力を整備していない企業に比べ、施策から中程度または高い財務リターンを得たと回答する可能性が30%高くなっていました。
サーキュラーエコノミーは、製品を認証して二次流通市場で再販売するなど、新たなビジネスモデルの機会を生み出します。こうしたモデルの一例が、ラルフ・ローレン、EVRYTHNG、Vestiaire Collectiveが世界経済フォーラムを通じて開始するパイロット事業です。ブランドが適切なテクノロジーとプラットフォームを持つパートナーと協業した場合に得られる価値を検証します。

サーキュラーエコノミーを可能にするトレーサビリティ戦略を構築するには、企業は主に5つの要素を検討する必要があります。市場の動向を理解すること、事業目標を定めること、データを優先しテクノロジーを選定すること、パートナーを選び関係を築くこと、そして試行・学習・拡大を進めることです。
成功例の一つがCaaStleです。同社は、小売業者が衣料品を購入する代わりに「衣料品のサービス化」(CaaS)を提供できるようにしています。Expressなどの企業と提携し、衣料品を所有する代わりにレンタルできるサービスを提供しています。CaaStleのトレーサビリティサービスには、商品追跡や、レンタル後に衣料品を回収するためのリバース・ロジスティクスが含まれます。CaaStleは当初、生地用のシールとマーカーを使い、その後バーコードに移行し、現在は衣料品の追跡に洗濯可能なRFID(無線周波数識別)シールを使用しています。このRFID技術により、トレーサビリティで特に重要な要素である耐久性、読み取りやすさ、速度が実現し、CaaStleは各商品の流通経路を追跡できます。CaaStleは小売業者に強力な価値提案を提供し、新たな顧客の獲得と収益性の向上を可能にしています。
サーキュラービジネスモデルの導入には多くの利点があります。調査によると、サーキュラーエコノミー関連の施策を試験的に導入、または拡大した企業の80%超が、再び取り組むと回答しています。業務上のハードルを軽視すべきではありませんが、トレーサビリティはサーキュラーエコノミー関連の施策を成功させるうえで重要な要素となり得ます。
サーキュラーエコノミーを推進する需要は今後も高まり続けます。企業は、実現したいサーキュラービジネスモデルを特定し(将来から現在を見据えるアプローチを採用)、短期的に具体的な成果につながる小さな一歩を今踏み出すことで、サーキュラーエコノミーとトレーサビリティの能力を築き、最適な立場を確保できます。将来のサプライチェーンに向けて弾みをつけるため、企業は速やかに試行・学習・拡大を進める必要があります。
世界経済フォーラムのイニシアチブ「デジタルトレーサビリティによる持続可能な生産の加速」では、企業が目標達成に最適なサーキュラービジネスモデルを選び、組織内で変革を始める方法を探ります。この取り組みにぜひご参加ください。
注:数値は、Bain & Companyが2021年に実施したサーキュラーエコノミー調査のデータに基づいています。回答者総数は191人です。一部の質問は、該当する回答者サブグループの回答に基づいています。



