世界人口のうち、自宅の蛇口をひねればきれいな飲料水が出てくると期待できる人はわずか43%なのに、携帯電話の通信回線を利用できる人は96%にのぼるという事実を、どう説明すればよいのでしょうか。単に貧困の問題というわけではなさそうです。携帯電話のほうが、蛇口よりも維持費がかかるのです。
人々がきれいな飲料水を必要としていない、あるいは望んでいない一方で、携帯電話をより強く望んでいるということでもなさそうです。水系感染症が今も毎年340万人の死因となっていることから、きれいな飲料水が必要であるのは明らかです。法外な価格のボトル入り飲料水市場も急速に拡大しています。投資不足が原因というわけでもなさそうです。機会さえあれば、資金は集まるでしょう。
水の問題は、そのビジネスモデルが機能していないことです。水には、この失敗を招く独自の性質が3つあります。水は基本的人権であり、資本集約型のサービスであり、自然独占です。資本集約型のサービスに費用を払えなければ、基本的人権として水を提供することはできません。また、自然独占であるため、この問題に対する起業家的な解決策を認めることに消極的になりがちです。
水へのアクセスをめぐる新たな経済モデルの開発は、今週の グローバル・アジェンダ・サミットで議論される重要課題の一つです。簡単な課題ではありませんが、この会合が転換点となると期待できる強い理由が3つあります。
第一に、成果に対する姿勢が大きく変化しました。急速な都市化と地球温暖化により、都市の水道サービスの不備に、かつてないほど注目が集まっています。その結果、過去に解決策を妨げていたイデオロギー上の問題がいくつか影を潜めました。1990年代から2000年代前半に水分野を支配していた官民論争は、システムが実際に機能しているかどうかという、より実務的な関心に取って代わられています。
第二の大きな変化は、人道支援と資本主義の境界が曖昧になったことです。援助分野で民間慈善家の重要性が高まるにつれ、社会問題に対するビジネス主導の解決策が、従来の援助モデルに代わって広がっています。これは重要なことです。水分野は従来型の援助を大きく受けてきたうえ、国家独占のもとで起業家精神を発揮する余地がほとんどありませんでした。創造性とインセンティブを重視すれば、アクセス格差の解消に大きな違いをもたらせるでしょう。
水の新たなモデルを生み出せると期待する第三の理由は、インパクト投資の拡大です。これは投資市場で最も急速に成長している分野の一つです(JPモルガンによると、年率19%で成長しています)。ファミリーオフィスや富裕層は、より大きな社会的インパクトをもたらすことと引き換えに、資本収益率を低く抑えることをますます受け入れるようになっています。水インフラは、過剰投資にならずに5兆ドルを十分に吸収できる可能性があることから、インパクト投資家にとって最大の潜在市場です。
さらに重要なのは、インパクト投資家が水分野の姿勢を変え、民間資本をより受け入れやすくする助けとなることです。(民間企業が水の自然独占性を利用するのではないかという懸念から、水への民間投資には強い反対があります。)そうした姿勢は、インパクト投資家にとって自らの目的を損なうことになります。「友好的な」インパクト投資ファンドの存在は、水分野への民間資本誘致を妨げている政治的障壁の一部を取り除く助けとなるでしょう。
さまざまな意味で、こうした姿勢の変化――成果への関心の高まり、国際開発の領域への起業家精神の広がり、投資の社会的リターンと財務的リターンの両立への関心――は、公共、民間、NGO各部門の間でアイデアが相互に影響し合うことの表れです。これは、1971年の創設以来、世界経済フォーラムの活動の中核をなしてきました。こうした潮流を踏まえれば、ドバイでのサミットで水問題の解決に向けた動きが始まると期待しても、決して野心的すぎることはありません。
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著者:クリストファー・ガソンは、世界経済フォーラムの 水に関するグローバル・アジェンダ評議会のメンバーです。
画像:アルゼンチン、パタゴニア地方サンタクルス州の都市エル・カラファテ近郊にあるペリト・モレノ氷河で、溶けた氷の塊から水滴が落ちる。REUTERS/Marcos Brindicci



