より良い判断をするために問うべきこと

より良い判断をするために問うべきこと
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2013年6月24日、ニック・ワレンダは非常に危険な決断を下した。グランドキャニオンの岩だらけの谷底から450メートル上に張られた、長さ426メートルのワイヤーへと踏み出したのだ。安全ハーネスも安全ネットもなかった。強い突風にさらされながら渡りきるまで22分54秒を要し、彼はワイヤーの終点、そして対岸の安全な場所にたどり着いた。

ニックがワイヤーに踏み出した決断は、良いものだったのだろうか。そして、彼はどのようにその決断をしたのだろうか。

最初の問いに答えるなら、意思決定の分析的アプローチでは、成功の可能性と価値(渡りきることで得られる「幸福」)を、失敗の可能性とその(最終的な)代償と照らし合わせて評価するプロセスが処方されるだろう。

この代償は抽象的なものではなかった。ニックは綱渡り師ワレンダ一族の7代目である。親族の多くが 演技中に命を落としている。

2つ目の「どのように」という問いには、ある意味では簡単に答えられる。片足をもう片方の前に出したのだ。だが、別の意味ではずっと難しくなる。どのような情報が、私たちを特定の選択へと導くのだろうか。

経験と説明

意思決定に関する最も成功した理論の多くは、結果とその確率が既知で、明確に定義されている状況を想定して発展してきた。意思決定科学者が使う最も基本的な道具は、単純な賭けである。

確実に30ドルを受け取る選択肢と、80%の確率で40ドル、20%の確率で何も得られない賭けのどちらを選ぶだろうか。多くの人は 「確実なほう」を好む。

これは、2つの選択肢の「期待値」を計算すると、賭けのほうが「価値」が高い(32ドル)にもかかわらずである。計算では金額(40ドル)に、それが起こる確率(80%)を掛ける。

しかし、こうした単純な賭けは、ニックが直面した選択とはかなり異なるように思われる。私たちが日常的に直面するありふれた決断の多くと同じく、ニックには、関連する確率や曖昧さのない結果が載った便利な早見表はなかった。こうした結果や、それが起こる確率については、経験を通じて学ばなければならない。

ここで、コンピューター画面に表示されたラベルのない2つのボタン(簡素化した小型のポーカーマシンのようなもの)から選ぶ場面を想像してほしい。何度かクリックすると、一方のボタンを押せば必ず30ドルが支払われ、もう一方を押せば10回中8回は40ドル、10回中2回は0ドルが支払われると分かる。

好きなだけクリックし続けられるとしたら、最終的にどちらのボタンを好むようになると思うだろうか。

「クリック課題」と、説明された賭けが、まったく同じ選択肢を提示していることに気づいただろう。それでも、結果とその確率を学びながら選ぶ「経験に基づく」選択では、好みが しばしば逆転することが分かっている。

つまり、時間がたつにつれて、人々は確実な選択肢より賭けを好むようになる。10回中2回は何も得られないとしても、30ドルではなく40ドルをかなり頻繁に受け取れることのほうが大きい、と考えるのかもしれない。

言い換えれば、経験から学ぶとき、人々はまれな結果(何も得られない確率が20%)を実際より軽く見るようだが、同じ結果が 説明されると、その重みを実際より大きく見積もる。

直感はどれほど頼りになるのか?

これで、ニックがワイヤーへ踏み出した理由を説明できるのだろうか。もちろん、完全には説明できないが、いくらか手がかりにはなるかもしれない。ニックが直面した「賭け」は説明できるものではなかった。グランドキャニオンを綱渡りで渡った人はそれまで誰もいなかったため、成功する確率を計算できなかったのだ。

そのためニックは、似た状況での経験に頼らざるを得なかった。これまで何度も別の綱渡りを成功させた経験から、(深刻な)悪い結果のリスクを軽く見積もった(過小評価した?)のかもしれない。

後から振り返れば、ニックが峡谷を渡る決断は「良いもの」だったと言えそうだ。彼は生きて、この話を語ることができた。この場合、過去の経験は良い情報源だったが、いつもそうなのだろうか。

難しい決断に直面したとき、「直感に従う」あるいは「勘を頼りにする」よう勧められることは多い。もし 直感 が、似た状況に何時間、何日、何週間、あるいは何年もさらされて積み重ねた経験を意味するなら、その助言は有効だろう。あるいは「クリック課題」の実験を数回試した経験だけでもよい。

しかし、経験から学ぶ機会がなかった場合、つまり、その状況に初めて直面したため経験がない場合や、環境があまりに予測不可能な場合(たとえば株式市場)には、意思決定がうまくいかないことがある。

こうした状況では、ヒューリスティックな思考過程がしばしば前面に出て、 私たちの判断や決断に特有のバイアスをもたらすことがある。

賭けを使った単純な実験は、情報の獲得方法によって、私たちが何を選ぶか、そして 周囲の世界をどう解釈するかに大きな違いが生じ得るという考えを裏づけている。

次に決断を下し、それが良い決断かどうか考えるときは、いったん立ち止まり、その決断を下す資格が自分にどれほどあるか考えてみよう。十分な経験があるだろうか。それとも、誰かが選択肢をあなたに どう説明したかといった、関係がないかもしれない要素に左右されていないだろうか。

確信が持てないなら、研究に よれば 、最初の答えや選択が間違っているかもしれない理由を考え、次に別の案を出すといった単純な方法で、望ましくないバイアスの影響を減らせる。

グランドキャニオンを綱渡りで渡るのと同じように、良い意思決定への道も、一歩一歩慎重に進まなければならない。

以下との協力により公開: The Conversation

著者:ベン・ニューウェルは、UNSW Australiaの認知心理学准教授です。

画像:HowDoのスタートアップ企業のニルス・ヴェステルンド(スウェーデン)、ソフィア・ブレーンストローム(スウェーデン)、アレッサンドロ・コンティーニ(イタリア)、エマ・ローズ(英国)(右から左)が、2013年3月18日、ベルリンのコワーキングスペースWostelにあるオフィスで制作会議に出席している。REUTERS/Thomas Peter

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