「10年後、私たちはどうなっているのだろうか?」これは、あらゆる組織が自らに問いかける、最も難しい質問の一つです。そして、答えを出すのも最も難しい質問の一つです。
その場しのぎで意味のない決まり文句を、これまで何度も耳にしてきたでしょう。「私たちは先見性があります」あるいは「業界最大のプレーヤーになります」といった言葉です。しかし、組織や企業がこれから先の時代に本当に成功したいなら、経営幹部や取締役会はこの問いに答えるため、真剣に取り組む必要があります。
もちろん、言うは易く行うは難しです。四半期報告の絶え間ない重圧、日々の火消し、短期目標の達成に追われていると、経営幹部が目の前のことを超えて考えるのは困難です。そのような状況で5年先を考えるのは大きな課題であり、10年先は永遠のように感じられます。
未来について話し合うのに適した場所の一つは、取締役会です。 「星を見上げること」 は取締役会の基本的な役割です。戦略を練り、自由な発想で考える時間を取ることは、取締役会ができる最も価値ある取り組みの一つです。
そこにいて、これからもそこにいる
取締役会がこの役割に適している理由はいくつもあります。まず、取締役の多くは少なくとも9年間その職にとどまり、さらに長く務める人も少なくありません。一方、経営幹部層ははるかに高い頻度で入れ替わります。したがって、取締役会が長期的な戦略立案に積極的に関与するのは賢明です。星を見上げることから生まれたアイデアが実を結ぶ頃にも、取締役はその場にいる可能性がはるかに高いのです。
さらに、独立社外取締役の役割には、組織から一定の距離を保つことが本質的に含まれています。取締役は日々の細部に追われているわけではありません。外側から内側を見ることが期待されています。目の前の状況と未来について難しい問いを投げかけることは、取締役の最も重要な仕事の一つです。
また、私たちには、偏見を持たず、個人的な感情によって判断を曇らされることなく、事業について考える役割もあります。この客観性は、事業がどこに到達できるのか、また到達する必要があるのかを考えるうえで役立ちます。なぜなら、方向転換には、事業に携わる人々を変えることや、事業運営の方法を大きく転換することが必要になる場合があるからです。
取締役会が星を見上げることに深く関与すべき、もう一つの重要な理由があります。取締役はより長い期間にわたって事業に関わるため、経営幹部ほど短期目標に駆り立てられたり、報奨によって動機づけられたりしません。そのため、事業に不可欠な長期的思考に取り組むための安心できる場が取締役に与えられます。
始めるには
取締役会は星を見上げるとき、具体的に何をすべきでしょうか。10年先が本当に何を意味するのかを測る一つの方法は、10年前に何が存在していたか、あるいは、より有用には、何が存在していなかったかを考えることです。たとえばテクノロジーを見てみましょう。2004年に創設されたFacebookは、マーク・ザッカーバーグの目にはまだひらめきにすぎませんでした。2002年に創設されたLinkedInは、まだ始まったばかりでした。ソーシャルメディアは、どの企業の視野にも入っていませんでした。そして私たちは、ドットコム・バブルとその崩壊から回復し始めたばかりでした。
では、あなたの事業にとって10年前はどのような時代だったでしょうか。この問いは、事業や事業に影響を及ぼす要因における変化の速度とあり方を、改めて捉える視点を与えてくれます。このように振り返ることで、10年という期間をより具体的に感じられます。
また、目標ではなく、いくつかの重要な問いを軸に考える助けにもなります。私たちの業界は成長しているのか、縮小しているのか。現在の戦略路線を維持した場合、成長分野が尽きてしまわないか。まったく新しい分野や業界への進出を考える必要があるのか。どのような政治的、経済的、社会的要因が、私たちの事業、業界、そして世界に影響を及ぼし得るのか。考え始めれば、問いは次々に浮かんできます。
それはどこにつながるのでしょうか。事業の長期的な方向性について下す決定は、選択に影響を及ぼし、現在地から目指す場所に至るために、適切な人材、プロセス、インフラがそろっているかどうかを話し合う必要を生じさせます。変革を推進する適切な人材が組織にいますか。必要な変化を促すように、文化やパートナーシップ、関係性のエコシステムをどのように形づくれますか。最も重要なのは、10年後に確かな成果を得るため、今日、適切な場所に投資(資金と労力の両方)しているかどうかです。
戦略について考え、それに基づく具体的な計画を策定することの大きな利点は、経営陣が責任を持って実行できる、測定可能な段階も明らかになることです。これにより、概念的だったものを具体的で測定可能なものに変えられます。
もちろん、取締役会が自らに問いかけるべきもう一つの問いがあります。この集団にとって最も難しい問いです。私たちが進むべき場所に到達するために、取締役会の席にいる人々は適任でしょうか。それとも、自分たちを変える必要があるでしょうか。
人生と同じように、事業の本質は変化と継続性の適切なバランスにあります。立ち止まっている業界はなく、どの企業も現状に安住し、必要なことはすべてやり終えたと考えることはできません。
長く続く企業とそうでない企業を分けるのは、変化という課題を受け入れる力です。
本記事は LinkedInとの協力により公開されました。また、この記事はBBC Capital Columnの 「Above Board with Lucy Marcus」にも掲載されました。
著者:Marcus Venture Consulting, Ltd.の創設者兼CEOであるLucy P. Marcusは、IE Business Schoolのリーダーシップおよびガバナンス教授、Atlantia SpAの社外取締役、Mobius Life Sciences Fundの社外会長、BioCityの社外取締役を務めています。
画像:2012年11月20日、パリ西部の金融地区にあるラ・デファンスのアーチの下に立つ実業家のシルエット。REUTERS/Christian Hartmann。



